非構造化データ管理に「イノベーションが起きていない」ことに着目
――ご自身の経歴を教えて下さい。
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でフォールトトレランス(Fault Tolerance=システムや機器の一部が故障・停止しても、予備の系統に切り替えるなどして機能を保ち、正常に稼働させ続ける仕組み)と、分散コンピューティングを学び、博士号を取得しました。大学時代に、Kompriseの共同創業者であるKrishna Subramanian(現President & COO)と、Michael Peercy(現CTO)に出会いました。
その後はシリコンバレーに移り、KrishnaはSun Microsystemsに、MichaelはIBMに、私はHP(Hewlett-Packard)に入りました。HPでは、今でいうクラウド・コンピューティングに特化したLaboratoryでシニアディレクターなどを務めました。
実は私たち3人はこれまで、Kovair、Kavizaというスタートアップを立ち上げました。Kompriseは私たちにとって3社目の起業です。2014年に創業しました。
――非構造化データに注目し、Kompriseを立ち上げたきっかけを教えてください。
私たちが非構造化データ管理に着目したのは、市場において多くがストレージ管理を重視しているにもかかわらず、データレベルにフォーカスした製品はなく、非構造化データの世界では、あまりイノベーションが起きていないことを目の当たりにしたからです。現在、データの約85%は非構造化データです。しかし、そこには大きなギャップがあり、誰もそれを管理することに注力していませんでした。
私たちがシリコンバレーにいるたくさんのCIO(Chief Information Officer)やVP、ディレクターらとお話しをすると、彼らは自分たちの会社がどれだけのデータを持っているのか全く分からず、誰が使っているのか、実際にデータを使っているのかも把握できていなかったのです。そしてストレージに多額のお金を費やしているのです。
高価なストレージに眠っているデータに、明かりを照らすとどうなるでしょう。
統一、独立したデータ管理が強み
――御社の製品の特徴を教えて下さい。
通常、データの50~80%は、半年から1年以上触っていない、未使用の状態のままです。それなのに、高価なストレージに保存したり、バックアップを取ったり、バックアップのコピーを複数作ったりと、いろいろなことにお金をかけているのです。
データのサイズと配置を最適化し、適切なデータを適切な場所に、正しいタイミングで配置することにより、ストレージコストの70%削減を実現し、ユーザーがデータの価値を簡単に引き出すことができます。
私たちの製品は、コスト削減だけでなく、高価なストレージサイロに閉じ込められがちな非構造化データの価値を見出すことにも貢献しているのです。
私たちの特許取得済みである技術、Transparent Move Technology (TMT)により、ストレージの階層化を超えて、マルチベンダーのストレージとクラウド間でデータの分析、移行、階層化、複製を行い、各層でクラウド内のデータのネイティブ利用を可能にします。これは、ユーザーを中断させることなく、またベンダーロックインもなく実現できます。
――競合他社と比較して、御社のプロダクトの優位性は何でしょうか?
ポイントソリューションではなく、全体的なデータ管理プラットフォームを構築しているところです。オンプレミス、クラウド、エッジの各環境で動作し、データの移動を透過的に配信、分析、自動化するとともに、継続的なデータライフサイクル管理とスマートデータワークフローを提供できる点が特徴です。
また、クラウド上のオブジェクトストレージなど、より低コストのストレージにデータを移動させることができ、一定期間後にデータを削除するようにポリシーを設定することもできます。
市場拡大を目指し、日本進出も前向きに検討
――2023年1月には、シリーズDラウンドで、Canaan Partners、Celesta Capitalなどから3,700万ドルの資金調達に成功しています。その使途について教えて下さい。
Kompriseのチャネル・パートナーシップを拡大し、クラウドデータ移行、ライフサイクル管理、事業部門とユーザーのためのセルフサービスに重点を置いて、プラットフォームを成長させるなど、市場参入のための施策に投入します。
継続的な実行やその効率化、そしてより大きな市場へと成長・拡大するために資金を充てる予定です。
Image:Komprise
――御社は様々なテクノロジーパートナーシップを結んでいます。将来的に日本市場に参入する予定はありますか?
私たちは、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、IBM Cloud、HP、Nutanixなどと強固なパートナーシップを結んでいます。
日本の販売代理店とも連携しています。日本のお客様やディストリビューターの方々が、シリコンバレーに私たちを訪ねてきてくれることもあります。日本の企業もたくさんのデータを抱えているはずですので、本格的な日本進出にはとても興味があります。
現在の私たちの主力は北米市場ですが、今後販売代理店やパートナーを通して、ぜひ日本には進出したいと思っています。
――日本におけるパートナーシップにはどのようなことを期待されますか?
将来、日本でパートナーを見つけた場合、私たちのソリューションを理解してもらうために、当社のトレーニングプログラムを受けていただきたいと考えています。
私たちは、販売代理店や再販業者と多くの時間を過ごし、トレーニングや販売、共同販売を行い、やがて私たち抜きで販売できるようになっていただきたいのです。
――長期的なビジョンを教えて下さい。
AIは日常生活の中でますます大きな存在になってきています。そして、企業は競争優位を得るためにAIを必要としていますが、AIは大量の非構造化データも必要とします。
私たちは、いかに製品をシンプルにするか、そして、データサイエンティストがいかに簡単に使えるようにするかということに、ますます重点を置くことになるでしょう。
もう一つ、重点を置いていることは、エッジコンピューティング(コンピュータネットワークのエッジ部分でデータを処理するネットワーク技術)です。
全てのデータを集中処理するクラウドコンピューティングに対し、エッジコンピューティングは特定のデータのみを集約するため、ネットワークの負荷を軽減したり、データ漏えいのリスクを低減したりするメリットがあります。このようにエッジコンピューティングの概念はとても重要になってくることから、私たちは今後力をいれていく予定です。