建設業界の非効率・高コスト体質を打ち破る
―御社は建設業界に垂直統合モデルを取り込んで、業界の変革に取り組んでいます。どんな経緯で創業したのですか。
私は14年間フレクストロニクスのCEOとして、アップルのスマートフォンやHPのインクジェットプリンターなどの設計・製造をしてきました。それと基本的に同じことを建設業界でもやっています。プロダクトをデザインし工場で組み立てているのですが、プロダクトは「建物」です。
建設業界は8兆ドル規模で、電子機器業界の6倍です。しかし大きなプレイヤーはいません。米国は建設業界が成熟しており、ノウハウが充実していますが、プロセスが極めて非効率で高コストな体質で、スケールメリットが働かないのです。そこでフレクストロニクスでやったことを建設業界でそのままやれば偉業となります。そういう会社を作りました。
最新技術を駆使した建設のプラットフォーム
―プロダクトの概要を教えてください。
当社はテクノロジーを使って、建設物の設計から調達、デザイン、施工まで一気通貫で手がけています。
現在は米国、インド、サウジアラビアで事業をしており、米国ではオフィスビルや10階建ての集合住宅を建てていますが、いずれもクロスラミネート木材による建築物です。インドやサウジではコンクリートによる建築物です。
Image: Katerra
―どんな技術を駆使しているのでしょうか。
当社工場では、ロボティクス、AI(人工知能)、センサー、エンドツーエンドソフトウェアなどの最新技術を駆使して、建設作業の効率化、コスト削減、高品質を実現しています。
例えば、建築物にはAIが搭載されており、部屋にかかる重量に反応してエアコンや照明などがついたり消えたりします。
建材のセメントにはCO2排出の観点から難しい問題がありますが、当社はセメント使用量の少ない独自の低炭素型コンクリートを使用しています。
当社のビジネスモデルには、全てのデザインを担当する「プロダクト」と、クライアントの要望に応える「プロジェクト」があります。当社は建材購入のためのグローバル・サプライ・チェーンも持ち、プロダクト・プロジェクト両方で活用しています。また建材の販売を第3のビジネスモデルとしています。
―日本への進出は考えていますか。
私は100回以上、主に出張で訪日しており、いずれは進出を考えています。日本の建設業界も米国同様に成熟しています。ただ具体的な予定は決まっていません。
当社には途上国での事業の方が合っていると気付きました。競争が少ないが、大きな成長が見込める市場です。インドがその1つで、人口10億人ですが巨大モールはまだありません。当社は今、インドで巨大モールを建設中です。アジアで次に進出を考えているのは、中国、インドネシア、ベトナムです。
責任ある良き企業市民となりたい
―当面の目標と、長期的なビジョンについて教えてもらえますか。
短期の目標は黒字化です。2020年末までに実現したいと思います。当社は急成長しており、今年の売上は20億ドルを達成しそうで、来年には40億ドルになると見込んでいます。長期的なビジョンは、良き企業市民となることです。従業員に良い処遇をし、エネルギーや建材の消費量を節約したいのです。
当社にはソフトバンクなど本当に良い出資者がいます。おかげで、私のこれまでのキャリアで最も良い事業チームを持て、技術力も持てました。クライアントにも恵まれました。それらに感謝し、長く続く責任ある企業にしていきます。