Kahunaはモバイルに特化したマーケティングオートメーションプラットフォームを提供するスタートアップ。同プラットフォームによりマーケターはユーザーに合わせた個別のマーケティング施策を打つことができる。2011年に創業し、Sequoia Capitalなどから5800万ドルを資金調達している。今回は創業者でChairmanであるAdam Marchick氏に、起業の経緯やモバイルマーケティング業界などについて聞いた。

Adam Marchick
Kahuna
Co-Founder & Chairman of the Board
2009年にスタンフォード大学ビジネススクールにてMBAを取得後、Facebookのプロダクトマーケティング部門で勤務。その後はVCやファイナンス系の教育機関の設立を経て、2012年にKahunaを設立し、CEO / Co-founderに就任。2016年にCEOを退任、現在は同社の取締役会のChairmanを務めつつ、新たに設立した企業のCEOを務めている。

20兆ものデータを収集したマーケティングオートメーション

―まず事業内容を教えてください。

 Kahunaはモバイルマーケティングプラットフォームを提供しています。主な顧客は消費者向けアプリを提供する事業会社です。Kahunaを利用することで、顧客はユーザーに不快感を与えることなく、適切なタイミングでプッシュ通知やEメールを送ることできます。

マーケティングで得たユーザーからの情報をAIが自動で集め・分析してくれる。(Image: Kahuna)

―他社との違いや強みは何でしょうか。

 私たちはおそらくこのようなマーケティングに特化した最初のスタートアップだと思います。これまでマーケティング企業は告知のEメールを大量のユーザーへ無差別に送るといった、ユーザーとの関係性を無視したマーケテイング施策を行ってきました。しかし、私たちの場合はユーザーとの関係性を重視し、データ分析に基づいた各ユーザーのニーズに合った通知やEメール告知を送れるようにしています。

ユーザーのニーズに合わせて通知の仕方を変え、効果的なマーケティングを行う。(Image: Kahuna)

―どのような収益構造になっているのでしょうか。

 従来のマーケティングサービスの料金体系は、送ったメッセージ数に応じて設定されていることが多いのですが、我々は「ユーザーと顧客の関係性」を重視して料金設定をしています。なぜかというと、弊社のサービスは良好な関係性をもつユーザーを増やすことを目的として設計されているためです。弊社のサービスを通して顧客はいくらメッセージを送っても料金はかかりません。その代わり、コンバージョンレートや実際にユーザーによって行われたインストール数など、ユーザーと顧客の関係性を示す数値の推移にしたがって、利用料金を頂いています。

「サイト閲覧」から「購入」までの一連のカスタマージャーニーを数値化。どの時点でユーザー離脱が起きてるかを元に対策を講じることができる。(Image: Kahuna)

―御社のサービスの利用事例を教えてもらえますか。

 私たちの顧客の中にOverstockという大型のオンライン小売店があります。彼らはEコマースをグローバル展開していく中で、我々のサービスを効果的に利用しています。例えば、彼らのユーザーが新しい食器洗浄機の購入を検討しているとしましょう。ユーザーはインターネットで「食器洗浄機」を検索し始めますよね? それらの検索データは我々のサービスを通して顧客へ伝えられます。つまり、ユーザーが個別でもつ具体的なニーズを顧客は知ることができるわけです。あとは、顧客の運営するモバイルアプリを通して、実際に商品を欲しがっているユーザーに適切なマーケティングを行い、購入を促すだけです。このように我々のサービスはOverstockのようなEコマース事業者に対して、「詳細なユーザーの個別分析」と「適切なタイミングでのマーケティング施策」を提供できるのです。

Oracle、Facebookで学んだこと

―Kahunaを設立する前は、FacebookやOracleなどの大手企業で勤務されていたそうですね。それらの経験を今どのように活かしていますか?

 シリコンバレーの中でも最高峰のレベルの幹部や起業家から、とても多くのことを学ぶことができました。まず、Oracleでは、いかに24時間体制でのカスタマーサポートが大切かを学びました。この仕組みにより、多くの信頼をサービスユーザーから得ることができ、さらに毎日有益な情報をユーザーへ送ることができました。Facebookでは、幸運なことにMark ZuckerbergやSheryl Sandbergのような常識にとらわれない考え方を持った起業家と一緒に仕事ができたことが一番の経験でしたね。Markが社内の透明性を重視してFacebookを経営していたように、私もKahunaを社内の透明性をとても大事にしています。

―日本展開についてどのような構想を持っていますか。

 私は、日本市場がとても素晴らしい市場だということを十分に理解していますし、我々のサービスを本格展開し、顧客として日系企業の方々にサービスを提供できることをとても楽しみにしています。しかしながら、現在10ヵ国にサービスを展開しているなかで、弊社のみでの日本市場への展開は現実的に厳しいと思います。なので、今後1年から2年かけて日本展開を手助けしてくれるようなパートナーを見つけ、共にどのような形が一番望ましいのか考えていくつもりです。

―日本の読者へメッセージをお願いします。

 シリコンバレーは、我々がビジネスをはじめる以前より、多くのスタートアップがお互いを高めあってきたところです。ぜひ日本のみなさんにもっともっとシリコンバレーに来ていただきたいと思います。

 日本展開については、まずモバイル市場の大きさやユーザーの傾向を含め、日本のトレンドを学びたいと考えています。ぜひ日本の起業家、事業会社のみなさんのことを知っていきたいと思います。



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