グローバルスタートアップが直面する経費問題をワンストップサービスで解消
Jeevesのプラットフォームのターゲットユーザーは、グローバル展開をするスモールビジネスのスタートアップ。同社ではさまざまな国の現地通貨で支払いが可能なコーポレートカードも提供し、請求書の電子的な支払い、支出の統合、手数料や金利なしの現地通貨での支払いなどもサポートしている。
Thazhmon氏の前職は、PowerInboxというEメールベースのデジタル広告企業の創業者兼COOで、ニューヨークとイスラエルにオフィスを構えていた。Thazhmon氏は「Jeevesを始める前にはいろいろなことを経験し、支払いの調整に苦労をしていました。複数の国にオフィスを持つと、月末に支出の調整をするのが難しく、すべての支出を一度に調整する仕組みが必要だと感じました。それがJeevesのアイデアを思いついたきっかけです」と語る。
国をまたぐ事業を展開する場合、国別に財務機能が必要となるが、Jeevesはこれを集約できる。Thazhmon氏は、「通常なら、クレジットカード、国境を超えた支払い用、ローカルの支払い用など、取引手段に応じて別々のベンダーとの契約が必要ですが、Jeevesはすべてをひとつのアプリにまとめることができます。競合には、1つまたは2つのサービスを提供しているところもあるかもしれませんが、私たちのようなオールインワンの体験を提供することはできません」と説明した。
JeevesはMastercardのプリンシパルメンバーで、メキシコで独自のクレジットBIN(銀行識別番号)によるカード発行の承認を得ており、自社でカードを直接発行できる。さらに、メキシコ銀行が開発・運営している、一般消費者が電子決済を行えるシステムSPEI決済にも対応している。
「SPEIの決済手段は、銀行送金、ローカルな電信送金に対応しており、Jeevesアプリから利用できます。海外で急成長している企業を見てみると、使用額の50%以上の支払いがコーポレートカード以外です。だからこそ、クレジットカード以外の支払いに対応できるような仕組みを構築しなければなりません」(Thazhmon氏)
すでに6000社以上が列をなす人気サービスに
現在の事業エリアはメキシコ、コロンビア、カナダ、ブラジルで、8月からヨーロッパへの展開する予定だ。現在の顧客数は数百社で、現在6000社以上の企業が待機リストに登録されているという。新型コロナウイルスによって、グローバル企業が拠点をより多くの国で持つようになったのもJeevesの需要が増えている一端だという。
Image: Jeeves HP
「(パンデミックによって)地域によっては企業のグローバル化が進んでいます、これまでに1ヶ国で活動していた企業の多くが複数の国に従業員を配置するようになったからです。従業員またはオフィスが異なる国にあると、複数の機能を持つカードが必要になります」(Thazhmon氏)
調達した資金は、新しい顧客企業の受け入れに活用される。なお、Jeeves自身もまた多国籍企業であり、本社はNYにあるものの、現地ごとにGMや法務、コンプライアンス、カスタマーサクセスなどのチームを置いている。現在の従業員は30名(シリーズA調達時は20名程度)ほどだが、2021年末には50名ほどに増やしたいとしている。
また、Jeevesの技術革新は、国境を超えて銀行をつなぐグローバルな接続レイヤーを構築したこと。現在は3〜4カ国をカバーしている状況だが、2021年内には10カ国にまで拡大する計画で開発をすすめていく。
アジア地域への進出についてThazhmon氏は、「すぐには展開しませんが、ロードマップには含まれています。最終的にはアジア地域もカバーする計画です。アジアには発展途上国や急成長している国があります。私たちのターゲットは、10万ドル〜20万ドル調達して、GoogleやFacebook、AWSなどに多くの資金を使って成長を加速させたい企業です」と回答した。
グローバル企業のための統一された会計システムのデファクトを目指す
Thazhmon氏は、5年後の未来では、あらゆる企業がよりグローバルになり、財務面でより複雑になっていくことを予想している。その場合、各国の法令遵守と経費削減の両面から対応できるシステムが必要で、それが自分たちにできることだという。Jeevesのゴールは、グローバル企業が必要とするあらゆる支出のための、単一のプラットフォームとなることだとし、次のようにコメントした。
「私たちの目標は、お客様が必要とするあらゆる種類の金融スタックをワンストップで提供することです。Jeevesにサインアップすれば、財務ポリシー全体を一度に立ち上げることができ、異なるシステムを持つ必要はありません。もしあなたの会社が成長しているのであれば、私たちが資本、引受、決済レール、そしてインフラ、アプリを提供し、必要な支出に対応できるようにします。長期的には、急成長している企業のために、すべての支出のバケットを所有することに重点を置いています。また将来的に、世界中どこでも、スタックの変更を心配せずに利用できるプラットフォームを構築したいと考えています」