エンタープライズ向けの「App Store」
―まずはInstabase設立の経緯を教えてください。
Instabaseは、私が大学院博士課程で行ったプロジェクトの一つ、「DataHub」が基になっています。「DataHub」は、「データポイントをマウントし、アプリケーションを実行できるオペレーティングシステムを構築することで、アプリケーションをよりポータブルにできるのか?」というアイデアからスタートしました。あらゆる種類のデータでアプリケーションを実行するためのハブを構築することを目指したプロジェクトでした。私は、このアイデアに「トラクション」を感じましたし、実際、多くの人が使いたいと言っていました。そこで、このアイデアを事業にすることを決め、Instabaseを設立しました。
―Instabaseのサービスについてご紹介いただけますか。
例えば、食べ物の宅配サービスのアプリを、App Storeで探すと12種類くらいみつけることができます。しかし、企業が業務に使うアプリの「App Store」はありません。銀行が所得証明を取るために使うアプリや、保険の請求処理用のアプリなどは大企業ではゼロから構築しています。
銀行や保険会社だけでなく、病院や大学なども、それぞれの業界内で各社ほぼ同じ業務を行っており、どの大学のアプリにも、入学試験や授業カリキュラムの管理機能がありますが、どれも独自で構築しています。そこで、当社は業務用アプリを入手できる「Marketplace apps」を設けました。
しかし、アプリを入手できる場があっても、アプリ作成ツールがなければ誰もアプリを作りませんので、アプリ制作ツールキットを備えたプラットフォーム「Developer apps」も提供しています。そして、「Marketplace apps」のアプリや、「Developer apps」のツールを使い作成したアプリを実行するための、オペレーティングシステムも提供しています。
日本市場への参入を進めたい
―日本市場への参入にご興味はありますか。
当社の顧客は米国がメインで、次にヨーロッパ、そしてシンガポールと香港の企業です。日本企業にはまだご利用いただいていませんが、日本市場への参入に興味があります。当社のオペレーティングシステムは、全言語の処理が可能なので、日本語にも対応可能です。日本市場に参入するのであれば、専用のチームを作る必要がありますね。
―日本企業とのコラボレーションもありえますか。
はい、100%ありえます。当社の営業チームが日本の大手都市銀行に、当社のサービスを紹介したと聞いています。しかし、どの業種とコラボレーションしたいと言ったことを決められるほど、私たちは日本市場に詳しくありません。
世界トップ10金融企業60%以上、米国トップ10銀行の70%以上が使うシステム
―長期的な目標を教えていただけますか。
現在は、大手企業を対象にサービスを提供していますが、今後は中小企業などの小規模市場にも進出したいと考えています。そして、長期的には全てのビジネスアプリケーションの、デフォルトオペレーティングシステムになることを目指しています。
―最後に日本企業に向けたメッセージがあればお願いいたします。
当社のツールは、様々な業種の企業にとって非常に有益ですが、特に書類を多く取り扱う、政府機関、ヘルスケア、病院、銀行や保険業界で重宝されています。私達は、日本市場をまだ理解しきれていません。日本市場に適した戦略を一緒に立て、日本のエコシステムを紹介してくださり、日本市場において当社が成功できるようご協力いただける企業と、この機会を通じて出会えたら、非常にありがたいです。