AIで品質管理。工場のコンプライアンスにも配慮
―どんなサービスを提供していますか。
私たちはInspectorioのことを、AIに裏打ちされた品質管理・コンプライアンスプラットフォームと呼んでいます。たとえばあなたが小売業者で、世界中の様々なところから商品を購入するとします。中国かもしれない、ベトナムかもしれない、中央アメリカかもしれない、ヨーロッパからかもしれない。注文するたびにその品質が確かか確認することが必要です。
小売のブランド企業は、工場に対するコンプライアンス体制も追及しています。たとえば児童労働をしている工場はないかどうか。環境保護の観点からも基準を満たしている必要があります。こうした点検を担っている第三者もいるのですが、数日かけてPDFやエクセルでチェックリストが送られてくるだけという場合もあります。データそのものは保持できず、情報の真偽も不明です。手抜きや不正があることだってあります。
Inspectorioの創業メンバーはこうした品質管理の領域で責任者をした経験があり、20年あまりこの状況に苦しめられてきました。そこで、私たちのシステムでは、クライアントの品質管理のためのネットワークプラットフォームを作ります。
ベンダー、工場、点検業者などを1つのネットワークでつなぎ、管理できるようにします。モバイルデバイスを使えば、工場が自分たちで点検をしてそれが小売ブランド側にリアルタイムで可視化されることも可能になります。サンフランシスコにいて、中国の工場の現在の様子をチェックできるというわけです。
Image: Inspectorio
データの蓄積で改善。消費者の評価も生産ラインに即反映
―AIはどのように使っているのですか?
GPSデータと紐づけて、クラウド上に情報は蓄積されていきます。ある工場を、別々の小売業者が点検したいと考えたとき、これまでのデータが蓄積されているのでリスクが減ります。不正があった場合も、その傾向を見ることで次の不正を防ぐことにつながります。
消費者の声も反映できるようになっています。これまで、消費者が製品を手に取ったときの評価は生産ラインとはかけ離れたところで処理されていました。カスタマーセンターが声を拾っても、3カ月、半年くらいして、ようやく品質に問題があるということが認識されていました。私たちのシステムでは、「星1つ」のような低評価が付いたら即生産ラインを停止させることもできます。返品についても同じです。誰かが不満をもって返品したとしても、従来はそれでおしまいでした。Inspectorioでは返品のデータも集め、問題の改善につなげることができます。
―顧客企業は小売り中心ですか?
100%小売業向けです。扱う製品としては、アパレル、靴、家具などを対象に始めましたが、食品にも広げつつあります。日本市場にも進出していきたいと考えています。