Goldenは、自然言語処理により最新技術やスタートアップ企業に関する情報を収集した“リサーチエンジン”であり、人力により編集され精査された情報の “知識データベース”でもある。創業当初から高い注目を集め、米空軍が新型コロナウイルスに関する最新技術や関連企業情報の入手に活用するなど、実績をあげている。今回は、創業者でCEOのJude Gomila氏に話を聞いた。

ありそうでなかったAI×人間による情報収集と知識化

――まずはGolden設立の経緯を教えてもらえますか?

 私は2008年にY Combinatorのプログラムに参加し、2009年に最初のスタートアップを創業しました。そして2016年に4500万ドルで売却した後、「次に自分が作れる最もレバレッジの効いた会社は何だろう?」と考え始めたんです。

 1年かけて考えた結果、世界最大規模の “知識データベース”を構築することにしました。それがGoldenです。私たちの“知識データベース”は、情報を集めるAIと、情報を知識化する編集者の両方により構築されています。

 当社は、シードラウンドからFounders FundなどのVCから資金調達に成功し、今年9月に終えたシリーズAはAndreessen Horowitzがリードし1450万ドルを調達しました。

Jude Gomila
Golden
Founder & CEO
2006年ケンブリッジ大学にてエンジニアリングの修士号を取得。2008年にY Combinatorのプログラムに参加するために渡米。2009年にモバイル向け開発ツールプラットフォームを提供するHeyzapを設立、同社を2016年に4500万ドルで売却。2017年にGoldenを設立し、CEOに就任。

――なぜ“知識のデータベース”だったのですか。

 さまざまな分野のエソテリック(秘伝的)技術、あるいは企業や学術的なアイデアなどの情報は見つけることが本当に難しいです。私自身がここ10年ほどそう感じてきました。

 こうした情報を得ようとする時に、ウィキペディアを見たり、ブログやウェブページを探してネットサーフィンしたり、学術論文を読んでいました。しかし、情報に辿り着けそうなリンクを見つけてもリンク切れしていたり、自分が探している情報やその周辺情報をまとめて得ることができませんでした。

 私は、Goldenを設立する前は自分の会社を持っていましたが、同時に200社以上のアーリーステージにあるスタートアップに出資してきました。その当時から、“知識データベース”の必要性を感じていたので、私と同じアイデアを持った投資先を探していましたが、誰も取り組んでいませんでした。

 “知識データベース”が存在していない問題は、決して簡単に解決できるものではありません。ですが、自分が起業して週に80時間も何かに費やすならば、最も野心的なプロジェクトを選んだ方がいいんじゃないかと思ったわけです。

ウィキペディアにない最新技術情報とクランチベースにない情報集積

――企業向けに提供している有料サービスについて教えてもらえますか。

 Goldenには、個人が無料でトピックを見れるページと、企業が有料で閲覧できるページに分かれています。企業にはSaaSで提供しており、APIを介して情報にアクセス可能です。法人向けの有料プランには “リサーチエンジン”としての機能があり、主にVC、ヘッジファンド、世界的な大企業や政府などで特に有効活用していただけると思います。

 例えば、パナソニック、日立やトヨタなどの企業であれば、先進材料やグラフェンの応用、先進的な製造技術や、最先端技術など、研究開発に役立つ情報が必要でしょう。私たちのサービスでは、専用のクエリツールを使いこうした情報を収集することが可能です。また、特定分野に関する調査のリクエストサービスもご用意しており、個々に“知識”を提供しています。

Image: Golden

 Goldenのデータベースには企業情報もありますので、例えば、合成繊維に関わる全ての企業の情報をまとめて提供できます。そして、今後、顧客の社内で使っているCRMシステムなどの情報と併せて独自にデータベースを作れるツールを構築するつもりです。

 このツールを使えば、例えば、大企業のエコシステムにある何千という取引先企業の把握にもGoldenを活用できるようになります。他には、細胞農業分野など、興味深い分野のスタートアップや、ニッチな分野の小規模企業にとっては、Goldenのデータベースに載ることで、より大きなエコシステムに繋がる可能性がありますので、そうした意味でGoldenを活用していただきたいと思います。

 また、日本企業、特に日本のスタートアップ企業や学術研究機関の情報や、研究に関する情報も今後増やしていきたいと考えています。

パンデミックにおいて「知識」で人と社会を救う

――新型コロナウイルスに関して米空軍がGoldenを利用しているそうですね。

 そうですね。私は2019年11月から新型コロナウイルスではなく一般的なコロナウイルスの治療に着目し、データを集めていました。一般的なコロナウイルスの治療薬としてレムデシビルもあげられており、その情報も見ていました。

 そのタイミングで、武漢における感染症の情報が入ってきました。そして、ジョンズ・ホプキンス大学のダッシュボードをモニターしていたところ、最初は中国国内だけだった感染者が、国外で1人見つかった。その時点で既に中国ではこの感染症は深刻なものとして受け止められており、私も用心のため大きな画面で状況を常時モニターするようになりました。中国以外の国における感染者数が6人になり、すぐに感染者数が急激に増え、死亡率を見てもかなり危険なウイルスだと理解できました。

Image: Golden HP 新型コロナウイルスページ

 私たちはかなり初期からGoldenを使い新型コロナウイルスの調査を進め、情報をまとめていたのですが、これが注目されるようになり、米空軍との契約につながりました。ワクチンなどの情報から感染動態まで、そして、抗菌ソリューション、空調システムやデータマッピングの企業情報など、新型コロナウイルスとの戦いに必要なあらゆる情報を提供しています。

――今後、日本市場への参入は検討していますか。

 そうですね。私はエンターテインメント業界から自動車やバイクなどの製造業界まで、日本で生み出されているイノベーションに惹かれています。日本には素晴らしい大企業があり、海外で新興企業を買収する動きも始まっています。日本企業とぜひ一緒に仕事をしたいと思っています。



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