バイオテクノロジー企業として製薬業界の「ジーニー(ランプの魔人)」を目指す
―まずはCEOの経歴と、GEn1E Lifesciences設立の経緯を教えていただけますか。
私は、薬理学者で、製薬業界のバイオテクノロジー分野で20年以上の実績があります。インドの大学で薬学の学位を取得した後に渡米し、米国の大学で薬理学の修士号と博士号を取得しました。卒業後は、シカゴのアボット・ラボラトリーズや、エフ・ホフマン・ラ・ロシュなどの製薬会社で働きました。私が発見した分子がFDA承認を受けたことが3回あり、治療薬として承認を受けたプロジェクトにも複数携わってきました。
私は、博士号を取得した17年後に大学に戻り、今度はビジネスについて学び、起業しました。世の中には治療法がない病気が沢山あり、治療薬が患者へ届くまでには時間がかかりすぎていて、バイオテクノロジー分野におけるテクノロジーの活用がまだまだ足りません。
こうした問題を解決するためにGEn1E Lifesciences(以下GEn1E)を設立しました。
まずは急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、次に難聴、筋肉幹細胞の再生
―具体的にどういった病気を対象に治療薬に取り組んでいるのでしょう。
2018年に当社を設立してから、日本を含め世界中を対象に、有効な技術を探しました。そして、炎症や加齢性疾患の治療に有効性がある、メリーランド大学のp38 kinase inhibitors(p38阻害薬)を見つけ、同校とライセンス契約を結びました。当社では、メリーランド大学が過去5年以上研究開発してきたテクノロジーを土台に、過去2年間に渡りARDSの治療薬に取り組んでいます。
ARDSは、コロナウィルス、インフルエンザ、肺炎などによって肺が損傷を受け、血液から液体が肺に入り、重度の呼吸不全を引き起こす病気です。ARDSには標準治療がなく、唯一できることは人工呼吸器を装着することですが、どこの国でも人工呼吸器は患者数に対して足りていません。米国では、この病気になった40%の人が治療を受けないまま亡くなっています。日本や中国も米国と同じ状況ですし、インドではよりひどい状況にあります。この病気は、今までも世界的に大きな問題でしたが、コロナウィルス感染者の主な死因であるため、現在はより切実に治療薬の早期開発が求められています。
当社が取り組んでいる治療薬には、肺を保護し液体の侵入を止める効果があります。薬は肺に入り、肺に溜まった液体を減らし、浮腫を減少させます。今は、臨床研究まであと一歩という段階に近づいています。動物実験ではこの効果を確認していますし、COVID-19にも関係する治療薬なので、今までより迅速に承認プロセスが早く進むと考えています。
P38 kinase inhibitors(p38阻害薬)は、様々な炎症性疾患や加齢性疾患の治療薬になる可能性がありますので、ARDSで成功したら、次は難聴や筋肉幹細胞の再生に取り組む予定です。
―CEOご本人ともう1人の研究者、このお二人で開発を進めているのですか。
フルタイムは2人ですが、旧知の仲にある元同僚など14人の研究者に、コンサルタントとして関わっていただいています。人件費を抑えながら、非常に効率的で優秀なチームを編成しています。
GEn1Eとして、小規模な研究室を持っていますが、私が今まで関係を築いてきて、当社にも投資してくださっている企業の施設も使っています。
日本の製薬企業にもご参加いただきたい
―日本の企業とのパートナーシップもお考えですか。
私自身、過去に日本の製薬会社と共同研究したことがありますし、当社としても日本企業との共同研究またはパートナーも大歓迎です。COVID-19が世界的に大流行しています。この状況を改善するためにも、製薬会社の協力を得て、治療薬の開発スピードを上げたいと考えています。この記事を読んで、当社にご興味をお持ちになった製薬会社や医療機関の方がいらしたら、是非ご連絡ください。