Photo: Ascannio / Shutterstock
Amazon.comではAmazon自身が販売するだけでなく、サードパーティがFulfillment by Amazon(FBA)を使って販売する仕組みがあり、年々売上シェアを高めている。2021年4月〜6月期の決算データでのカテゴリ別売上では、自社が27%に対し、サードパーティは38%であった。Forum Brandsは、テクノロジーを使って有力なサードパーティブランドを買収・成長させるビジネスを展開する企業。社員の4分の3が元Amazon関係者だという同社の共同創業者兼Co-CEOのRuben Amar氏に、創業の経緯や事業戦略について聞いた。

M&A、消費財ビジネス、Eコマースのスペシャリストが集結

 Forum Brandsの共同創業者は、Amar氏のほか、Co-CEOのBrenton Howland氏、COOのAlex Kopco氏の3名。それぞれの得意分野を活かした経営体制を敷いている。まずはM&AのエキスパートであるAmar氏のキャリアを説明しよう。

 フランス出身のAmar氏は、大学卒業後にロンドンに渡り、クレディ・スイスのM&Aチームで勤務する。テレコムやテック系のチームに所属し、ドイツのeコマース企業Zalandoの上場を支援した。その後プライベートエクイティファームのTA Associatesへ移り、ヨーロッパの化粧品会社、ペット会社、スポーツ、アウトドアなどの消費者向け企業の国際展開を支援する。これらの企業がアメリカやラテンアメリカ、アジアに進出する際、ローカル企業の買収をサポートした。その後Amar氏は渡米し、MBAを取得するためStanfordに在学中に、消費者向けブランド作りに情熱を持つHowland氏、Kopco氏と出会う。

Ruben Amar
Forum Brands
Co-Founder & Co-CEO
フランス出身。大学で応用数学と工学を学び、卒業後はロンドンのクレディ・スイスにてテレコムやテック系企業を支援するM&Aチームに所属。その後プライベートエクイティファームのTA Associatesへ移り、ヨーロッパの消費財企業の国際展開を支援する際のローカル企業の買収などに携わった。そしてStanford大学でMBAを取得するため渡米したのち、共同創業者のBrenton Howland氏、Alex Kopco氏とともにForum Brandsを創業する。

 Howland氏は、シカゴのマッキンゼーでキャリアをスタートさせ、ベスト・バイやマクドナルドなど、消費財関連の大企業と仕事をしており、そこで世界各地でのサプライチェーン構築やテクノロジーを活用した事業の成長をサポートした経験を持つ。消費財ビジネスとテクノロジーのエキスパートだ。

 Kopco氏はディスカウントストアチェーンを展開するTargetでキャリアをスタートさせ、eコマースサイトtarget.comの構築に携わる。その後Amazon.comのサードパーティとしてTargetの在庫を販売しているうちに、Amazonにその能力を見出されて転職。プロダクトマネージャーとして右腕を振るい、Amazonメキシコの立ち上げや北米のフルフィルメントセンターの統合、Amazonのサードパーティが利用するツールも構築するなど大きく貢献した。

 Forum Brandsのプラットフォームは、テクノロジーとデータサイエンスを駆使し、買収ブランドの選定や、買収後の事業成長に役立てている。Amar氏は、「eコマース市場全体を調査し、世界中のすべての人々のための家庭用消費者ブランドになる可能性を秘めたブランドを見つけます。そして、そのようなブランドを買収し、テクノロジーや専門知識、社内で採用した人材を使って、成長させるのです」と説明した。

Image: Forum Brands HP

 同社のビジネスは大きく4つのユニット分けられる。1つはAmar氏が80%の時間を費やすM&Aユニット。世界中のブランドの担当者と話を、買収の可能性を探っている。2つめは法務、会計、財務などを担当するコーポレートユニット。これはHowland氏が受け持つ。3つ目は、在庫管理、マーケティング、デザインなどのテクノロジーツールの構築を受け持つエンジニアリングユニットで、Kopco氏が主に担当する。4つ目のユニットが、買収したブランドをグロースするユニットだ。これは、ペット、スポーツ、アウトドア、ガーデニングといった消費財カテゴリーのリーダーや各ブランドのCEOが担当する。

テクノロジーによって有望ブランドを発掘し、一気に世界展開をする

 事業の起点となるブランド買収の際に使われるテクノロジーについて、Amar氏は「私たちのツールは1億以上のデータポイントに接続しており、データサイエンスに基づく多くのアルゴリズムに基づいて、有望なブランドを予測します。ブランド自体の評価については、売り手のAmazonのアカウントを私たちのアプリに接続してもらって評価します。Amazonのビジネスは、たとえビジネスが異なっても、損益計算書などは標準化されているので評価しやすいのです」と語る。Amazonでの販売実績を見れば、そのブランドが成長する企業かどうかがわかるのだ。

Photo: dennizn / Shutterstock

 買収後の成長の一つの方針はマルチチャンネル化だ。アメリカのAmazonだけでなく、カナダやヨーロッパなどのほかの地域のAmazon、そしてAmazonだけでなくShopifyでも販売していく。世界中の製造業社や貨物業者、倉庫と契約し、テクノロジーによって効率化を図っている。同社の最近の大きな成果は、在庫管理のテクノロジーだという。

 「商品のトラッキングや需要予測は非常に難しく、最大のペインポイントでしたので、そこから開発しました。在庫管理が確立されたことにより、マーケティングやマーチャンダイジングの投資判断を正確にできるようなりました」(Amar氏)

 Forum Brandsと同じように、有力なブランドを買収してグロースさせる企業は多いが、それ以上に可能性のあるブランドは多く、Amar氏によると、Amazonで100万ドル以上稼いでいるブランドは5万もあるという。Forum Brandsではノウハウとテクノロジー、そして優秀な人材の採用によって大きく成長しようとしているのだ。現在、あらゆるポストでの採用をしているが、特にマーケティング担当者やデータサイエンス領域の人材採用に力を入れているという。

次世代のP&Gやユニリーバを作りたい

 2021年にシリーズAで2,700万ドルを調達したForum Brands。今後12ヶ月で達成したいマイルストーンは、世界的に成功する20のブランドポートフォリオの確立を達成すること。Forum Brandsではすでに収益の20%は海外から得ているが、この割合を高めていく。

 日本市場の参入は24ヶ月以内となる見通しだが、多くの消費者がeコマースサイトにてクレジットカードを使って大量に買い物をしているため、魅力的な市場だと考えている。まずは日本の法律やeコマースの専門家、成功しているブランドとの関係、そしてアジア地域のロジスティクスについての調査が重要だと考えている。

 最後に、同社のビジョンについてAmar氏は次のようにコメントした。

 「私たちは、3人の創業者のビジョンがあって、それに基づいてビジネスを始めました。5年後、10年後、15年後には、オンラインだけでなくオフラインでも、世界中のすべての消費者に向けて、高品質な製品と体験を提供できる、消費者向けのブランドグループを形成したいと考えています。世界中のあらゆるデジタルチャネルで販売され、あらゆるスーパーマーケット、専門店で販売され、人々が私たちのブランドを見て、サービスの質や耐久消費財の製品の質が非常に高いと感じるようなブランドを持つことです。私たちは、次世代のP&Gやユニリーバを作りたいと思っているのです」



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