Image: Fivetran
2012年に設立されたFivetranは、企業向けに自動化したデータパイプラインを構築、提供するスタートアップ。今回はCo-founder & CEOのGeorge Fraser氏にインタビューした。

George Fraser
Fivetran
Co-founder & CEO
カーネギー・メロン大学で認知科学、ピッツバーグ大学で神経科学を学んだのち、シリコンバレーのスタートアップアクセラレータ支援のもと、2012年にFivetranを共同設立。CEOに就任し、今に至る。

データウェアハウス管理を円滑にするデータパイプライン

―まずは、御社の事業内容を教えてください。

 当社は、自動データパイプラインを提供する企業です。この仕組みをご紹介する前に、まずはデータウェアハウスというものを説明しなければなりません。

 データウェアハウスは、企業でのあらゆる出来事に関するデータを保管する倉庫のようなものです。今、従業員100名以上の会社なら、たいていデータウェアハウスを所有しており、その多くは、早くて安く、効率性の高いクラウドサービスタイプです。

 しかし、ウェアハウスにデータを保管するためには、そこにデータを送るためのパイプラインが必要になります。そこで、我々のサービスが必要になるわけです。当社では、ウェアハウスにデータを送るための自動パイプラインを構築し、あらゆるシステムとのコネクタとして、さまざまなソースからデータをウェアハウスに送っています。

―従来、企業はどのようにしてデータをウェアハウスに入れていたのでしょうか?

 データパイプライン自体はずいぶん前から存在しており、2つの主流パターンが見られます。1つは、企業が自前のエンジニアチームを組織し、大量のコードを書いたうえで、自分たちで運用、管理する方法です。これは、開発自体にも経費がかかりますし、ソースが変化するたびにパイプラインの再設定を行うなど、メンテナンスが必要なので、継続的に手間や費用がかかります。

 そこで、次の選択として、自前のチームを持ちつつ、既存の製品を利用するパターンがあります。これが一番多いケースです。ただ、これもユーザがツールを理解しないと使えないため、結局自分のところで作るのとそれほど負担が変わらない、というデメリットがありました。もちろん、継続的なメンテナンスも必要です。

 当社の製品は、その概念を覆しました。これまで主流だった「コンフィギュアビリティ(設定可能であること)」から、「オートメーション(自動化)」に重きを置いたのです。パイプラインのメンテナンスは当社が実施しますので、お客様はデータソースの変化に振り回されずに済むわけです。

SquareやSalesforceなどで活用

―従来のやり方と大きく違う、ということですが、同業他社にはない独自の強みはありますか?

 この「自動化」というところがポイントです。我々は2つの次元で「自動化」を実現しています。まず、当社にはあらゆるソースに対応したコネクタを既製品として用意しているので、OracleでもSalesforceでも、開発段階を経ることなく、すぐに利用していただけます。

 メンテナンスについても、ソースに何らかの変化があった場合、我々が自動でお客様のデータウェアハウスを修正しますので、使い始めから常に「オートメーション」が機能するわけです。これは、これまでにない画期的なサービスです。

―実際の使用例などをご紹介いただけますか?

 実用例をあげますと、たとえばSquare社の場合。Squareでは大量のマーケティング関係の情報を扱っています。そこで、広告関連やメールキャンペーンなどにかかわる情報を、当社のパイプラインを経由したウェアハウスで一元管理します。そのため、マーケティングチームはいつでも包括的な情報を得ることができます。

 別の例ですと、WeWork社では、企業全体のデータ管理に利用していただいています。何か新しいことが起きるたびにデータをウェアハウスに送り、会社で起きた出来事をすべて包括的に見ることができるようになります。

Image: Fivetran

「データパイプライン自動化」に事業を絞って急成長

―どういった経緯でこのビジネスにたどりついたのでしょうか。

 この会社は、私と幼馴染のTaylor Brownと一緒に立ち上げました。起業は6年前で、当時はシリコンバレーのアクセラレータや投資家支援のもと、データ分析ツールの構築などを行っていました。その中に、データパイプラインも含まれていました。

 そして、これからはデータパイプラインが重要になると感じました。データパイプラインは真のイノベーションであり、チャンスであることに気づき、画期的なビジョンが見えたため、他の事業はやめてデータパイプラインに的を絞ることにしました。それが2015年初めのことです。そこからMel Wustayというエンジニアが加わり、しばらくは3人体制でやってきました。

 初めはなかなか新しいやり方が理解されず苦労しましたが、2017年から急速に成長し、2018年には従業員が100名、顧客数も500社にまで増えました。

―急成長の秘訣は何だったのでしょうか?

 データウェアハウスのニーズが大きい、ということだと思います。ただ、データウェアハウスは本当に質のいいものができましたが、パイプラインがそれに追いついていないのが現状です。

 我々はコンフィギュレーションではなく、カスタマイズでもなく、オートメーションを掲げています。これまでと劇的に違う手法であるため、出だしはスローでしたが、次第に人々の考え方が変化したことで、今こうして成長できているのだと思います。

―ターゲットはどんな業界ですか?

 特に特定のターゲットは決めていません。データウェアハウスはあらゆる業界で使われていますから。今は金融関連や販売関連、医療関係企業など、幅広いお客様がいます。

―海外進出も視野に入っていますか?

 そうですね。今はヨーロッパ市場を開拓していて、アイルランドに事務所があります。日本にはまだありませんね。日本は特殊なビジネス文化があると聞いていますので、慎重に進めなければいけないと思っています。

 ローカライズの問題もありますが、そもそもうちはインフラ製品を扱っているので、それほどむずかしいとは思いません。今すぐというわけではありませんが、日本市場にも進出したいと思います。

―最後に、将来的な展望を教えてください。

 いくつか、将来に向けてのプランは準備しています。まずはもっと多くのコネクタを構築し、ビジネスで利用されているすべてのデータソースに対応していきたいと考えています。

 この2年で我々は大きく成長しましたが、データウェアハウスを使う市場全体を考えれば、まだまだ小さい。ですので、声を大にして「データウェアハウス構築を考えているなら、時間と経費を最大限節約できる最新で最高のアプローチがここにありますよ」と伝えていきたいですね。



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