AI(人工知能)を使ったSNSのデータ分析およびマーケティングツールを提供するEncore Alert。シリコンバレーの著名アクセラレータプログラム「500 Startups」を卒業したばかりの彼らは、そこでいかに過ごし、何を学んだのか。24歳のCEO、James Li氏に彼の生い立ちや起業の経緯、500 Startups(以下、500)の裏側を聞いた。

James Li
Encore Alert
CEO & Co-founder
2013年、ジョージタウン大学卒業。同年、Encore Alertを設立し、CEOに就任。

Demo Day後、30社の投資家とのミーティング

―まずは「500 Startups」の卒業おめでとうございます。最後のDemo Day(ピッチイベント)はどうでしたか?

 とても素晴らしかったよ。ステージでのプレゼンは、この数ヶ月間共に過ごした同期のスタートアップのみんなが拍手や声援をくれて嬉しかったね。たくさんの新しい投資家にも会うことができたよ。

―イベント後は、Jamesさんのところにたくさんの投資家が質問に来てましたね。何か具体的な投資の話につながりそうですか?

 実は、来週からみっちり30件以上の投資家とのミーティングが入っているんだ。今回のDemo Dayでは、自分たちも含めてAI(人工知能)関連のスタートアップが多かったと思うんだけど、いま投資家たちはまさにAIの分野にとても関心があるんだ。日本のVCとも会うことになっているよ。

AI(人工知能)は投資家にモテる

―これから楽しみですね。あらためてですが、読者に向けて御社のサービスを説明してもらえますか?

 Encore Alertは、AI(人工知能)を使ったSNS上のデータ分析に特化したサービスなんだ。日々SNSに流れている膨大な情報の中から、大切な情報やトレンドを、AI(人工知能)を駆使して抽出し、クライアントのビジネスに繋げるプラットフォームを提供しているよ。

―どんな会社が御社のサービスを使っていますか?

 現在のクライアントは、中堅・大手のBtoCブランドが中心で、スポーツブランドやファッション関係、それからNASAなども利用しているよ。

 例えばNASAでは、月間500万人がNASAやスペースシャトルのことをSNS上で話題にしているんだけれど、その膨大な情報の中から大切なキーワードを抽出しているんだ。その分析をもとに、NASAのマーケティングチームはより効果的なマーケティング施策を打てるようになるよ。

―サービスの特徴は?

 2点あって、1点目は、UI(ユーザーインターフェース)の見やすさだね。一つのダッシュボードで大事な情報だけを見られるインターフェースにしているから、マーケターが膨大な情報を精査する時間を省いて、実際のマーケティング活動に費やす時間を増やせるようにしているよ。

 2点目は、AI(人工知能)の緻密さ。わたしたちのエンジニアとクライアントのマーケターとがコミュニケーションをとって、しっかりとマーケターの行動特性を掴んだ上で、AIのアルゴリズムを組んでいるよ。だから、マーケターが今までやっていた分析作業を、AIが正確かつ迅速に行ってくれるようになっているんだ。我が社のCTOは、元々DELLのデータサイエンティストで、彼が中心となってAIを作っているよ。

起業家の父、学生時代のホワイトハウスでのインターン

―そもそもなぜ起業しようと思ったのですか?

 父親の影響がすごく大きいね。僕の両親は中国出身なんだけど、僕が生まれる直前に渡米してきたんだ。父はアメリカでマーケティングの会社を起業していて、小さい時からいつも父の仕事を手伝っていたよ。アメリカ生まれの僕の方が英語は得意だったから、資料の翻訳は僕の仕事だったんだ。そういった影響もあって小さい頃から自分でビジネスをすることには興味があったね。

―どんな学生生活を?

 ワシントンDCでの大学時代は、ホワイトハウスでインターンをしていたんだ。ジョー・バイデン(第47代アメリカ副大統領)の下で「スピーチライター」という、彼の演説の原稿を書く手伝いをしていたよ。すごく良い経験だった。オバマ大統領にも会うことができたしね。それと、ジョージタウン大学では父の影響もあってマーケティングを専攻して、いつかは自分でビジネスをしたいと思っていたね。

徹底的に数字にこだわる500 Startups

―500 Startupsのプログラムはどうでしたか?

 素晴らしいプログラムだったよ。理由は、2点あって、1点目は、セールス・マーケティングにフォーカスしたプログラムであったこと。どうやって顧客とエンゲージするのか、そのために何をすべきかといったマーケティングのプロセスを基礎から徹底的に教えてくれるんだ。そして学んだことをすぐに実践して、その成果を数値で確かめる。プログラムに参加するスタートアップはそれぞれPV数や売上高など、自分たちで追いかける数値を決めて、その進捗を毎週木曜日に必ず確認するんだ。ちなみに僕たちは、クライアントからの月額の売上額だったんだけど、正直言って毎週木曜日は憂鬱だったね。(笑)

 2点目は、優れたメンターシップ制度があったこと。GoogleやBoxといったスタートアップの大先輩の社員たちが自分たちのメンターとなって、いつも相談に乗ってくれるんだ。また、普段だったら絶対会えないような大物起業家たちが毎週のようにゲストスピーカーとして来てくれたりね。本当に良い経験になったよ。

―どうしたら500に入れるんでしょうか?

 審査で見られるポイントは、3点あるんだ。1点目は、そのスタートアップがどんな面白い課題にチャレンジしているか。2点目は、その課題に対して今までどんな努力をしてきたか。そして、3点目は、あらゆるアドバイスを受け入れる柔軟な姿勢をチームが持ち合わせているかということだね。

―今後の展開を教えてください。

 まずは、クライアントを増やして売上をもっと増やしていくこと。そして今後は僕たちのサービスを日本、中国、韓国にも展開していきたい。ただ、SNSは国によって言語はもちろんのこと、プラットフォームも、使われ方も全く異なるからローカルのパートナーとなってくれるようなマーケティング会社やリサーチ会社、そしてメンターとなってくれるような現地の投資家を探しているよ。



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