「ゴミ」になるダイヤモンドの塵を使い、物理的にID付与、トラッキング、認証を可能に
―まずはCEOの経歴と、DUST Identity設立の経緯を教えていただけますか。
私はイスラエル出身です。2000年に渡米し、ニューヨークでセキュリティ系の企業や、テレビのアニメーション制作に携わった後に、電気工学を学ぶために大学に進みました。次にコロンビア大学で応用物理学を専攻し、博士号を取得しました。その後、MITで研究を続け、そこで当社の共同創設者2人と出会いました。
私たちは、量子アプリケーションにおけるダイアモンドの活用に関して、学術的な研究に取り組んでいました。実験室で炭素から成長させた高品質なダイアモンドを使い、ダイアモンドが様々なアプリケーションに有用だということを発見し、量子センサーとして活用できる技術を開発しました。DARPA(米国国防高等研究計画局)から出資を受け、DARPAとともにプロジェクトを始めました。その後、DARPAからサプライチェーンでのセキュリティ問題に取り組んでみないかと誘われ、サプライチェーンのセキュリティ問題を解決するソリューションの開発に取り組みました。
そして、ダイヤモンドの結晶を使い、複製不可能な「指紋」を形成し、ポリマーの中に埋め込み、対象物に直接スプレーできる技術を開発しました。ダイアモンドの結晶が入ったポリマーは、塗布すると物理的なIDとして機能し始めます。製品の個々の部品や、パッケージのライフサイクルにおいて、一貫したトラッキングおよび認証を行う、サプライチェーンの管理ソリューションを提供しています。
ハンバーガーパテ1枚に150以上のサプライヤーが関わる、グローバルサプライチェーン
―どういった分野で御社のソリューションが活用されているのでしょうか。
製品が様々な場所で製造されている、今日のサプライチェーンにおいて、物の出所を知ることが非常に重要です。そうした規制が強まっている分野は、ハイテク分野だけではありません。例えば、スイスの食品加工メーカーの情報では、ハンバーガーパテ1枚に、牛のDNAが150種類含まれていたそうです。こうした情報は、購入者は簡単に知ることができません。
現在、食品や医療器具、自動車、航空業界と幅広い、業界でのユースケースがあります。多くの業界で利用していただけますが、親和性が高いのは生活のいろいろな場面で使われているチップや電子機器を製造している、電子機器製造業だと思います。
既存のオペレーションを変えることなく導入可能
―日本企業にとっても、御社のソリューションは興味深いと思います。
数年前に東京に行った時に、お話をする機会があった複数の日本企業は、自社内で製造していたものを、外部委託することを真剣に検討していました。外部委託した場合、どうやって品質を守り、製品の製造過程をコントロールし、セキュリティ面を管理するのか、様々な問題を抱えていました。
当社の製品は、信頼関係を構築できていない委託業者を信頼できる「証拠」を掴むために使え、導入後のアップデート等も不要です。グローバルエコシステムに依存するのであれば、こうしたことは重要で、当社は強力にお手伝いできます。
日本の多国籍企業では、非常に複雑なオペレーションが行われています。当社は、既存のオペレーションを変えることなく、既に行われていることを強化し、より確実にできます。そして、その次のステップとして、プロセスの効率化を支援することも可能です。