コロナ禍、郊外の戸建てに引っ越す人々にアピール
――2020年の取材から一年が経ちました。前回の取材時からどのような進展がありましたか。
2020年は、誰にとっても本当に大変な一年となりました。私たちの本拠地である米国ニューヨークでは、新型コロナウイルスが猛威をふるいました。コロナ禍で一時はヒーティングシステムの設置ができず、オペレーションが完全にストップしてしまった時期もありました。
しかし、規制が緩和され始めると、以前よりも需要が増え勢いが増したように思います。その主な理由は、パンデミック中に都心部から郊外へ引っ越しをした人が急激に増加したことです。
戸建てに引っ越しをする人の大部分が、住み始める前に、「この家で変えたいものはないか?」と考えがちです。都心部に住み慣れている人は、オイルやプロパンガスといった燃料や、家を暖める仕組みについてあまり知識がありません。なので、地熱発電への切り替えを検討した人が増えたのです。
Dandelion Energyが提供する地熱利用の冷暖房システムの仕組み
最終的に2020年終盤は、年初と同規模で締めることができましたが、昨年春は8割の従業員を一時帰休せざるを得ませんでした。パンデミック前の状態まで取り戻せたのはよかったです。また、ビル・ゲイツらによる投資ファンドBreakthrough Energyより3000万ドルの資金調達もできました。
再生可能エネルギーを利用した新しい住宅を建設したい
――調達した資金の使い道はどのように考えていますか。
主な使い道は、ビジネスを他の地域にも拡大させることです。また、住宅メーカーとも新たなプロジェクトを開始しています。古い発電システムを取り除き、新しいシステムを設置するのはもちろんですが、私たちは既に新しい発電システムが備わっている家を建ててしまえばいいと考えたからです。
Image: Dandelion Energy
また、従来のヒーターを簡単に取り替えられるようにするヒートポンプも開発しています。一部の住宅では、ヒートポンプを設置できないようなヒーターやボイラーが使われている場合があります。
また、私たちが設置を行う住宅の一部は100年以上前や、18世紀に建てられたものもあります。改築業を営むビジネスにとっては、それは常に付きまとう問題です。そのような背景もあり、ヒートポンプの設置を見込んでいない古い建物に設置可能な新しい型の開発が重要なのです。今まであまり研究されてこなかった問題で、私たちはその過程をより簡単に、低コストで行えるようにしたいと思っています。
――現在どのようなパートナーを探していますか。
住宅メーカーです。戸建て住宅を建設する会社は潜在的なパートナーとして大変興味があります。また、住宅建設でドリル機器を使用する坑井・掘削会社で、グランドループの設置が必要な企業にも興味があります。
さらに、私たちは再生可能エネルギー関連のプロダクトを購入したい消費者向けにローンを提供している会社ともパートナーシップを組んでいます。例えば、ソーラーパネル設置ローンを提供している会社が、地熱発電機設置を検討している消費者向けのローンを新たに提供したいと考えるかもしれません。
現在は米国市場がターゲット。日本展開にも関心あり
――これからの展望について詳しく教えてください。
現在3つのゴールがあります。1つ目は、他の地域にも簡単に進出できるということをよりアピールしていくことです。それには例えば、顧客獲得費用の低さや、持続的な利益等が含まれます。また、既存の市場で私たちが成功していることも新しい市場に参入する際の良い目印になります。私たちのビジネスには拡大の余地があることを証明したいのです。
2つ目のゴールは、住宅の改築や建て替えにあたって、私たちの製品が高品質であると保証できるよう製品開発を行っていくことです。
そして3つ目のゴールは、現在の改築業に加えて、新規で住宅建設を行うサービスも軌道に乗せることです。新しいサービスが利益につながれば会社にとっても拡大の可能性が広がると思います。これら3つのゴールを次の2年間で達成したいと思っています。
――日本での展開の可能性はありますか。
現在は、他の地域へと参入する場合、ローカルで倉庫を抱え、在庫を置き、社員も現地に拠点を置きます。今は、ビジネスの活動範囲を広げている状況で、会社の本拠地がある米国の東海岸の州が主なターゲットです。
したがって、国際展開自体はまだ行っていませんが、もちろん日本市場への進出も興味はあります。まずは、日本の住宅のヒーティングの現状についてより詳しく知りたいと思います。きっとヒートポンプは、米国より日本の方が人気でしょう。また電気代も比較的高いと聞いています。ヒートポンプが既に使われているなら、地熱発電はよい代替品となり得ます。
日本は、島国なので再生可能エネルギー開発やヒートポンプの宝庫だと思います。私たちはまだまだ日本のマーケットから遠いところにいますが、私たちのプロダクトを導入するポテンシャルを秘めていると思います。エネルギーの効率化や、オール電化も可能だと思います。島国という特性上、それをどのように低コストで実現するのかという点が課題になると思います。