Crunchbase情報を含めた330万社超の企業情報・世界の資金調達情報がすべて日本語で検索&閲覧可能
投資家などから大きな反響
―事業内容を教えてください。
ベンチャー企業の情報データベース『CrunchBase』を提供しています。企業概要や経営メンバー、資金調達額、投資家、商品など、現在50万件以上の情報が登録されています。ベンチャーの企業情報検索におけるグローバルなプラットフォームだと評価されています。
おもなユーザーは、有望なスタートアップを探している投資家や企業のリサーチ部門、マーケッター、リクルーターなど。政府機関の関係者の利用も少なくありません。収益源は広告収入とデータライセンスの販売。掲載や検索の利用は無料で提供しています。1日あたり3000件から1万件の情報がアップデートされています。
―『CrunchBase』をつくったきっかけを聞かせてください。
もともと大手テック系ベンチャーメディア『TechCrunch』の社内プロジェクトとして始まりました。取材企業の概要や資金調達情報、起業家などの情報を社内向けデータベースとしてストックする必要があったんです。当初は記者がExcelに記入していましたが、情報量が膨大すぎたことと、社外から「閲覧したい」というリクエストが多かったため、2007年に正式にサービスとしてリリースしました。
リリース後、アメリカだけでなく、世界各国のベンチャーや投資家などから大きな反響があり、情報量は加速度的に増加しました。自分たちのデータベースが情報インフラとして活用されてうれしかった反面、苦労もありました。
まずグローバルな情報が増えれば増えるほど、情報を翻訳したり整理するコストがかかります。悪意のある情報をブロックするシステムも必要でした。しかし、多くの人々に支えられ、そうした課題を乗り越えることができ、世界最大級のベンチャーデータベースに育ちました。
体系化された情報を無料で検索
―どのような情報がデータベース化されているのですか。
実例をもとに説明しましょう。スマートフォンを活用したハイヤー・タクシーの即時手配サービスという新しい自動車交通システムを世界展開しているUBERを『CrunchBase』を使って調べてみます。同社は2014年夏から東京でもサービス提供を開始したので、利用した経験のある読者は多いかもしれませんね。『CrunchBase』でUBERを検索すると本社所在地、創業者や現在の役員の名前、事業内容などのほか、最近の資金調達額や主要な投資家リスト、以前働いていた人、現在働いている人なども調べられます。
投資家リストにはKleiner Perkins Caufield&Byersという有名ベンチャーキャピタル(以下、VC)が載っています。ここをクリックすると、同社のほかの投資先や投資時期、その金額、共同出資社・者などが表示され、月次の資金調達額や投資動向はレポートやインフォグラフィックスで一覧できます。掲載情報はすべて紐づいているので、多様な情報を簡単かつ体系的に入手できます。
―どのような方法で詳細な企業情報を収集しているのですか。
1000社・者以上の投資家やインキュベーターたちがデータを送ってくるほか、『CrunchBase』のコミュニティ参加者から情報提供してもらっています。コミュニティにはFacebookやLinkedInから参加でき、1ヵ月あたりのアクティブユーザーは200万人。参加者は自由に情報を追加、編集できます。
私とマネジャーがモニターし、悪意のある書きこみや不正確な情報を監視しているほか、独自のアルゴリズムでブロックしています。コミュニティ参加者によるチェックも活発です。
グローバル進出を実現する条件
―日本のベンチャー企業へのメッセージをお願いします。
つねに世界を意識してほしいですね。事例に挙げたUBERは2009年に誕生しました。シリコンバレーの小さな新興企業だった同社は世界の大手機関投資家、投資信託、VCなどから資金調達し、創業5年で40数ヵ国、150都市以上に進出するメガベンチャーに急成長しました。未上場ながら株式時価総額は400億ドルに達しています。UBERは創業時から『CrunchBase』などを通じて世界に向けて自社情報を公開してきました。ですから、日本のベンチャー企業も世界を意識して情報発信すべき。飛躍的な成長を可能にするチャンスを手中にできるかもしれないのですから。