Image: PureSolution / Shutterstock
営業や製品開発など、日々の事業活動で欠かせない顧客対応。満足度を上げるためにも、顧客の意見に耳を傾け、信頼を勝ち取るのはビジネスの基本とも言える。Common Roomは、企業と顧客を1つのコミュニティにまとめることで関係構築を図るプラットフォームを開発しているシアトル発スタートアップだ。同社は2020年に設立され、約5200万ドルを資金調達し、注目を集めている。今回は、Common Roomの共同創業者Linda Lian氏に、コミュニティマネジメントの重要性について話を聞いた。

企業内マーケティング活動をコミュニティ形式で

――サービスの概要を教えてください。

 Common Roomは、コミュニティ形成のための新しいカスタマージャーニープラットフォームです。多くのソフトウェア企業には、開発者と自社プロダクトを結びつけるマーケティング活動を行う部門があります。私たちは、そのマーケティング活動を行う開発者と、サービスを利用する顧客をチームとして1つのコミュニティにまとめる支援をしています。

 サービスを提供する側としては、製品を開発するにあたって周りからの意見を組み込みながら開発・改善を行います。その過程で、様々な人々が企業にとって重要な立ち位置を占めるようになります。

 企業内のエバンジェリストから顧客まで、企業の提供するものについて誰が知識を持っていて、誰が宣伝活動をしているのか、企業は知る術がありませんでした。Common Roomは、マーケティングを行う内部と外部の人々をコミュニティに集めることで、よりよい関係構築を達成できるようにしています。

Linda Lian
Common Room
Co-Founder & CEO
ハーバード大学卒業後、Morgan Stanely等金融機関で勤務。後にAmazon Web Serviceでプロダクトマーケティングマネージャーとしてサーバーレス関連事業の製品開発及びマーケティング活動に携わる。2020年1月にCommon Roomを起業。

――起業のきっかけは何でしたか?

 私はもともとAmazon Web Serviceで、サーバーレス・オープンソース関連の事業に携わっていました。私たちのサービスを使用するきっかけになるのは、多くの場合、大手企業の開発担当が、インターネット上で情報を得てそれを社内で広めていました。そこで私は、サービスの採用プロセスがコミュニティに依拠していることに気づきました。

 顧客に寄り添うことは、社内での開発業務にも大きく影響します。顧客のニーズを正確に理解することで、以前はできなかったことも実現することが可能になります。新規のサービスを展開した場合、それを気に入ってもらえるか、また現在提供しているサービスについての意見など、コミュニティ全体で対応することは非常に意義があります。

 また、開発者ら本人もコミュニティ内で関わることを好みます。知識や経験を共有することでお互いを支援し合うこともできます。従来だと、SlackやTwitterなど情報が散らばっていて、全てを1ヶ所にまとめるものがなく、透明性にも欠けていました。私は企業側・顧客側の両サイドのニーズに気づき、両者をつなぐプラットフォームがなかったことから起業を決意しました。

誰にも気付かれないフィードバックを企業のもとまで届けたい

――コミュニティマネジメントはどうして重要だと思いますか。

 20年前であれば、ソフトウェアを開発・購入することは非常に費用のかさむものでした。ソフトウェア企業は、営業担当を雇い、片っ端から電話で潜在的な顧客を当たる必要がありました。

 今は、企業が様々なプラットフォームを駆使しており、現状は昔と全く違います。よりソーシャルになり、より透明性も向上しました。ニーズ一つひとつに対して、サービスを供給できるソフトウェアが存在します。コストも低くなり、競合もかなり増えました。従って、現在の営業モデルは、ソフトウェアの実装を前提としています。その上で、顧客の意見に耳を傾け、意見を取り入れることは事業の最も根本的な部分となっています。

 例えば、あるソフトウェアについて、それを使用している企業がフィードバックをツイートしたとします。そのフィードバックはそこからどこにも行き当たりません。誰にも気付かれず、拾われず、消えてしまいます。先方まで届かないのです。しかもこの現状はTwitterのみに限りません。

 コミュニティを形成することは、会社は自身の顧客の意見に興味があり、意見を取り入れる気があることを表明できます。私たちは、顧客であることを民主化したいのです。もしあなたが何らかのソフトウェアを使用しているなら、あなたはその使用者のコミュニティの一部です。

――直近のラウンドで調達した資金の使い道はどのようなものですか。

 私たちは20人程度の小さなチームで活動していますが、製品試用のウェイティングリストは数千もの登録がありました。テスト待ちの皆さんに素晴らしいサービスを提供し、共に成長できるようなチームを構築する。これが第一の用途です。

 また、成長速度が非常に早く、市場のニーズも大きいのでそれに対応できるようプラットフォーム開発にも資金を充てたいと思います。

コミュニティは、国を問わず重要

――今後、国際展開は検討していますか。

 コミュニティを構築して、企業が顧客と関係を築くことは、国を問わず重要です。世界的にも、コミュニティ内で活発に活動している企業は多数存在します。私たちもそこに参入するのが待ちきれません。社内にChief Community Officerや、Chief Customer Officerの役職を置いている企業も増えています。

 私たちの企業理念や提供するサービスの価値を理解し、賛同してくれるような企業とパートナーシップを組めることを願っています。

――日本のマーケットでの展開についてはどう考えていますか。

 日本は、ソフトウェアの観点はもちろん、ハードウェアの観点からも非常に前向きな国だと思います。ゲーム業界などがいい例で、既に形成されたコミュニティがたくさん存在します。その中で、人々は互いにコミュニケーションを取り、活発に関わり合っています。日本は良くも悪くも内向的な部分があると感じるので、コミュニティ管理という意味で私たちが参入する余地があれば、ぜひ進出を図りたいと思います。



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