企業データ管理版「Google」を目指す
―まずはMohit Aronさんのこれまでの経歴について教えてもらえますか?
私はインド工科大学デリー校とアメリカのライス大学でコンピュータサイエンスを学びました。博士号を取得してからの20年間、ほぼずっとシリコンバレーで仕事をしてきました。Googleでファイルシステムの構築に携わったほか、Nutanixという会社を立ち上げ、CTOを務めました。今も日本企業と付き合いのある、素晴らしい会社です。そして2013年にCohesityを立ち上げたのです。
―Cohesityはどのような経緯で立ち上げたのでしょうか。
前に立ち上げたNutanixでは、生産にかかわるインフラ構築を手掛けていたのですが、そのなかで大量のデータを管理することの難しさに直面しました。生産部門のデータはもちろんですが、その裏にはその何倍もの非生産関連データやバックアップがあり、それらもまたしっかり保管する必要があります。
しかし現実的に、1社のストレージやクラウドでは管理しきれず、複数のベンダーをまたいで利用するのが主流でした。同じ会社の管理データがあちこちに分散していたのです。
そこで、私はそれらを統合して一元管理するためのプラットフォームを完成させました。これがあればデータ間の分析やテスト、開発も迅速に行うことができます。Google検索やGmailなどのアプリを一元管理できるGoogleのプラットフォームをイメージしていただければわかりやすいと思います。私たちは非生産分野にかかわるストレージのプラットフォームを提供する会社なのです。
分散しがちなバックアップデータを一元管理
―なるほど。具体的なサービスや商品について教えていただけますか?
まず、主な商品として企業データのデータバックアップです。企業にはさまざまなデータがあり、これまでは分散させて管理するのが主流でしたが、私たちはそれを一元管理します。
次に、ファイラーやネットワーク接続ストレージとしても機能します。バックアップと別にベンダーを探す必要はありません。複数のデータセンターと複数のクラウドを駆使し、大切に保管いたします。
―顧客データを預かるとなると、セキュリティも深刻な課題になってきますね。
もちろんです。顧客の中には政府や銀行も多く含まれていますから、何重にも警戒し、厳重なセキュリティのもとで管理しています。
プラットフォームだからこその統合型サービスが強み
―他社にはない、御社ならではの強みはなんでしょうか?
通常、他社ではバックアップならバックアップ、ストレージならストレージ、という風に単一のサービスにしか対応していません。その点、我々はあらゆることを網羅するプラットフォームを作っていますから、メールも検索も地図確認もできるGoogleのプラットフォームのようなものです。それがまず大きな違いです。あとは、プラットフォーム自体の規模ですね。非常にスケーラブルで、ほぼ無限に企業データを扱えます。
―ビジネスモデルはどのようになっていますか?
大きくは、バックアップサービスの販売になります。出張作業やデータ管理用ソフトウェアのライセンス供与も重要な収益になっていますね。あとは、Ciscoなどのハードウェア会社と提携し、当社のソフトウェアを搭載したハードウェアを販売してもらい、マージンという形で収益をシェアしています。
ソフトバンクビジョンファンドの出資を受け、日本でもサービス展開
―今後のビジョンについて教えてください
短期的な目標は、バックアップサービスのトップになることです。ここまで非常に順調に成長していますので、このまま進めていきたいですね。でもゆくゆくはインフラをシンプルにし、データ管理を簡素化していきたいと思います。今、Google検索やGmailを使用する際、Googleのプラットフォームをいちいち意識することはありませんよね。そのような存在になっていきたいと思います。
―最後に、国際戦略について、特に日本市場への参入への考えを聞かせてください。
日本は非常に大きな市場だと思っています。大手の自動車メーカーや電子機器メーカーも多いですから。昨年ソフトバンクと提携し、日本での事業を本格化させました。彼らとは合弁会社を立ち上げています。ソフトバンクは日本以外にも拠点があり、特にアジアでの仕事を進めるうえで大いに協力してもらいながらビジネスをすすめているところです。
―今後もそうしたパートナーを増やしていきたいとお考えですか?
そうですね。我々は、Googleが消費者データ管理に変革をもたらしたように、企業データ管理を再定義していきたいと思っています。パートナー企業はそのビジョンに力を貸していただける重要な存在です。今後も、日本を含め、革新的なビジネスを進めていきたいと思っています。