企業と消費者の双方にとって最適なWeb体験を
―まず御社の事業内容について教えてください。
BloomReachはパーソナライゼーション・プラットフォームを構築、提供しています。我々の役目は、すべてのWebサイトやアプリ、そしてあらゆるデジタル体験と消費者を結びつけることです。消費者に対しては彼らが本当に求めているものを、そして企業のマーケターに対してはデジタルへの投資に見合った収益を提供していきます。
当社では主に3つのサービスを提供しています。1つは、検索エンジン経由で訪れるビジター向けに、より魅力的なランディングページを構築することで、新規顧客を獲得するためのアプリケーション、「BloomReach Commerce Organic」です。
2つ目が、Webサイトを見たビジターに最適化およびパーソナライズされた体験を提供する「Commerce Search and Categories」です。これにより、Web上で検索や閲覧を体験する際の質が向上します。
最後に、3つ目となるのが、日々Web上に掲載するコンテンツ決定に奮闘するクライアント向けの分析ツールである「Compass」です。これを使えば、データに基づいた意思決定を行い、ビジネスを最適化することが可能です。
パーソナライゼーション、SEO、分析の3本柱
―企業と消費者双方にメリットを提供しているのですね。御社独自の強みは何でしょうか。
そうですね、まずはパーソナライゼーションとSEO(検索エンジン最適化)、そして分析という三本柱を同時に提供していることでしょうか。我々は総合的な顧客体験を提供するプラットフォームです。SEOに特化したエージェンシーや使いやすい分析ツールを持つ企業は他にもあるかもしれませんが、ランディングページから閲覧、検索、ナビゲーション、パーソナライゼーションそして分析に至るまで、顧客体験全般を包括的に管理するプラットフォームは当社だけだと自負しています。
次に、データそのものも当社の強みです。我々は顧客だけでなく、あらゆる製品やサービスを深く理解しています。人々が求めているものをしっかりと把握することができるため、より良い体験を提供することができるのです。
そして最後に、我々には機械学習やデータ科学など、独自のアルゴリズムを所有しています。顧客や消費者がWebサイトと接触するたびに、システムは賢くなります。今日より明日、明日より明後日になればさらにクオリティの高い体験を提供できるようになるのです。
Image: BloomReach
何百万もの消費者それぞれに向けてWebページを最適化
―クライアントにはどういった企業が多いですか?できれば具体的に教えてください。
創業当初からの顧客に多いのが大手商社や小売業者です。アメリカでは百貨店のNordstromや航空会社のSouthwest Airlines、あるいは事務用品販売会社のStaplesといった企業です。主な顧客はフォーチュン500企業をはじめ、何千何万という商品を扱っている大企業で、何百万という消費者にリーチしたいと考えています。
そういった大企業にとっての問題は、膨大な製品やサービスを扱い、非常に多くの消費者をターゲットとした場合、消費者一人ひとりに合ったWebページを知ることは不可能だ、ということです。その場合、BloomReachのように自動かつデータに基づいた拡張性のあるテクノロジーが必要なのです。
―御社のシステムの具体的な活用法を教えてもらえますか。
たとえば、検索エンジンからWilliams Sonomaのページに移動した場合、ランディングページを運用しているのはBloomReachかもしれません。冷蔵庫などを販売するSears OutletなどのWebサイトにある検索窓は当社がサポートしている可能性があります。衣料品販売のForever21で服を探す際、その体験はBloomReachが運営しているものかもしれません。どんな製品があなたに合うか、どんなコンテンツを表示するか、あなたがどんなものに関心を持つのか、そういった判断を下す際にも、我々の分析ツールが使われているかもしれません。つまりは、そういうことなのです。
―収益モデルはどうなっていますか。
我々の収益モデルはSaaSのスタイルで、基本はクラウドベースのシステムです。プラットフォームを丸ごと利用することもできれば、それぞれのアプリケーションを個別に購入することもできます。価格はWebサイトの規模や会社の規模で決まります。
―なぜ御社がパートナーに選ばれるのか、その理由は何だと考えていますか?
まず、企業がパーソナライゼーションといった問題にぶつかったときに考えるのは、「これを人の手でやるのか、それともテクノロジーに任せるのか」ということだと思います。そしてその多くが、とても手動では無理だ、という結論に至ります。Webサイトの変更に、そこまで人手を割くことはできませんから。
すると次に考えることは、この分野に精通したテクノロジーを提供するパートナーを探すことです。「幅広い顧客体験全般を扱える企業は? 顧客の需要とデータを深く理解しているのは? 高いテクノロジーがあるのは?」という疑問が浮かび、最終的にそのニーズに合致する相手として当社を選ぶ企業が多いということです。
根底にあるのは「マーケターと消費者を支えたい」という創業時の思い
―どのようにしてこのビジネスモデルが生まれたのですか?
今の会社を立ち上げたのは2009年のことです。それ以前にも、私はロードバランシングやインターネットサービスプロバイダなどインフラにかかわるスタートアップをいくつか手掛けていました。そして2009年当時の私は、アプリケーション事業に大きな関心を持っていました。ソフトウェア販売に興味を抱いた私は、顧客にオンラインでリーチする試みを多くのCMO(最高マーケティング責任者)に持ちかけました。そんなときに出会ったのが、当時Googleに勤めていたAshuです。
Ashuは機械学習の科学者であり、Googleで検索エンジンにかかわる仕事をしていましたが、より消費者に関連性のある体験を提供する方法を模索し、同社を退社していました。私はマーケターを支援する方法を、彼は消費者をサポートする方法を探しており、それなら互いの利益になる方法を作り出そう、ということで共同設立したのがBloomReachなのです。
Web全体を「BloomReach化」したい
―日本や海外では、今後どのようにビジネス展開していく予定ですか?
当社初となる海外拠点をロンドンに立ち上げたのが1年半前のことで、最近は少しずつヨーロッパやアジア、オーストラリアの顧客とも取引を始めていますが、まだ日本市場には参入していません。私の展望としては、第一段階としてアメリカ、そして次にイギリスとヨーロッパ、と考えてきました。今は別の言語へのローカライズを開始したところです。日本語や中国語、韓国語もゆくゆくは対応しようと思っていますが、それはグローバル化の最終フェーズになると思っています。
―では、日本への進出にはあと2、3年かかるということですね。海外進出に必要なことは何だとお考えですか?
私は、海外に進出する際、まずは物理的に存在するために(建物や設備などの)初期投資が必要だと考えています。もちろん、セールスやサポート、そして現地クライアントを支援する技術的なリソースも必要です。我々はクラウドサービスなので、現地にデータセンターも不可欠です。そうなると、現地の言葉をサポートするツールやシステムも必要です。
現地の市場に参入するということは、その土地のビジネスカルチャーについても学ばなければなりません。直接営業するのか、パートナーがいた方がいいのか、という問題もあります。これらすべて考慮しなければならないのです。
―最後に、今後のビジョンを教えてください。
私のビジョンはWeb全体を「BloomReach化」することです。つまり、靴でもデート場所でも、あるいは映画や休暇の過ごし方でも、とにかくデジタルで何かを探す際、不快感をおぼえることなく、最高のオンライン体験を味わってもらいたい、と考えています。世界中のWebやアプリでそれができれば、多くのハッピーな顧客を世界中の大手ブランドに導くことができるのです。問題は、Web上に情報がない、ということではなく、どうしたら今欲しい情報に出会えるか、ということなのです。