サイバーセキュリティ事業の経験から、組織が抱えるIT資産管理の問題に着目
――Axonius設立の経緯をお聞かせください。
私は子供のころからコンピュータやプログラミングに興味を持っていました。15歳の時に、韓国で開催されたバイオティック・オリンピックという国際大会にチームの一員として参加し、優勝しました。19歳でコンピュータサイエンスの学士号を取得したあとは、イスラエル国防軍の諜報部に5年間所属しました。
その後、Cymmetriaというセキュリティスタートアップの共同創業者兼CTOとなりました。ここでは、攻撃者の動きを監視する製品を提供していました。ここでの経験がAxonius創業のきっかけとなります。
Axoniusの共同創業者たち。中央がCEOのDean Sysman氏。Image: Axonius
北米のある大企業で、ネットワーク内に攻撃者がいるかどうかを調べる仕事をしていて、高度で持続的な脅威に感染していることを発見しました。そこで、感染したコンピューターの所有者や管理者の調査をしようとしたのですが、その企業の管理者は、なぜそのマシンが存在するのか、誰の所有なのか、ネットワークに入っているかどうか、どうやってアクセスするかなどを知らなかったのです。
そこで、管理者に「組織が持っているデバイスの数を知っていますか?」と尋ねたら「150万から300万台の間でしょう」と答えました。私は「それは、『わからない』というのと同じ意味ですね?」と言いました。たとえば、組織のファイナンス部門に、現在の金融資産がいくらぐらいかを尋ねて「だいたい3億ドルから5億ドルです」との回答がきたら、説得力がないと感じますよね。
その後、どの組織のCIOに対しても「あなたの組織は何台のデバイスを持っているか知っていますか」と聞いてみたところ、同じような反応でした。そこで私は、この問題が普遍的なものであることに気づきました。あらゆる産業の、あらゆる規模の、あらゆる組織に起きるこの問題を解決しなければならないと思ったのです。
リソース管理ソリューションを統合し、組織内のすべてのIT資産を管理
――Axoniusが提供するプロダクトの特徴をお教えください
私たちが提供しているのは、IT資産管理の分野のプロダクトです。従来のアプローチは、大きく2つありました。1つはエージェントによって管理する方法で、端末にソフトウェアをインストールする必要があります。もうひとつはネットワークをスキャンしてトラフィックを調べる方法です。昔からあるアプローチですが、これらはかつて限られた種類のプラットフォーム、OS、デバイス、ネットワークを対象にしていました。しかし、現在はそれらすべてが多岐にわたり、膨大な数に上っています。エージェントやトラフィックのスキャンでは十分なカバレッジを得られません。つまり、デバイス同士が互いに認識をできず、データの分断が生じているのです。
この解決策としてAxoniusでは、Active Directoryなど、組織で利用するすべてのリソース管理ソリューションと接続し、データを引き出して正常化します。対応する既存の管理ソリューションは300以上用意していますので、既存のインフラからデータを引き出すことができます。このような技術を実装しているのは私たちだけです。なお、ビジネスモデルは、年間のライセンス契約で、価格は組織の規模によって設定しています。
Axoniusのダッシュボード画面 Image: Axonius
――新型コロナウイルスによるパンデミックは御社にどのような影響を及ぼしましたか?
2020年の3月ごろ、アメリカでは人々が数週間から数ヶ月の隔離を強いられました。多くの企業は当初支出を控えていましたが、非常に速いスピードで在宅勤務に移行し、より多くのテクノロジーを使って仕事をし始めました。その後、組織がただそこに留まっているだけではいけないということに気づき始めたのです。その結果、私たちは現在、史上最速の成長を遂げることができました。
日本の自動車メーカーもすでに導入。日本を含むAPACへの進出を計画
――2021年3月に資金調達を行いました。この資金はどのように活用する予定ですか?
これまでは北米を中心に活動していましたが、成長している市場に参入したいと思っています。今回の資金調達で加速する今年の大きな計画のひとつが、APACへの進出です。その計画を立てるために、この地域の潜在的な提携関係にあるパートナーと話し合うことに非常に興味を持っています。
――日本市場にも進出する計画ですか?
私たちには独立した現地チームはありませんが、日本が最も重要で不可欠な市場のひとつであることは間違いないと認識しています。すでに私たちは、日本の組織や団体といくつかの関係を持っています。
例えば、日本の大手自動車メーカーが当社のお客様です。私たちが販売したのはそのメーカーの北米のチームですが、日本から多くのユーザーがAxoniusを利用しているのは明らかです。今後も日本でのパートナーやお客様を広く探していきたいと思います。
――将来構想を聞かせてください。
私たちは、自分たちの可能性を信じていますので、買収されることを望んでいません。ほかのプラットフォームやパートナーの一員になることは考えていないのです。私たちは株式公開を目指しています。そのためには、会社としても市場としても納得のいくタイミングで、このビジョンを果たしたいと思います。