史上初の炭素繊維製自転車を3Dプリンターで作成
――2020年1月にAREVOのCEOに就任しました。CEO就任までの経緯を教えてもらえますか。
私は過去20年ほど、スタートアップに携わる起業家でした。1999年MITで博士号の取得を目指していた時に、起業のため大学院をやめたことが起業家になったきっかけです。
起業しては売却するということを繰り返し、過去5年ほどは主にディープテック企業への投資を行いました。AREVOにはその最中で巡り会い、大変面白い企業だと感じたので、投資家としてだけでなく経営者としても関わりたいと考えました。私のやりたかった材料科学にも近かったので、ぴったりでした。
――御社のビジネスモデルついて詳しく教えてください。
私たちのビジネスモデルは、主に炭素繊維等の素材を使った部品を作ることです。人々に素材を認知してもらうため、「Superstrata Bike」というD2Cのカスタムメイド自転車ブランドを設立しました。
今後は「Superstrata Bike」ブランド事業も継続はしますが、私たちのコアは工業系企業を対象としたBtoBビジネスです。現在いくつか進行中のプロジェクトがありますが、各々の活用事例は私たちの技術の応用の幅を見せるためでもあります。大企業に注目してもらうまでには時間がかかりますからね。
Image: AREVO 2020年8月、ウルトラマンデザインのオーダーメイドカーボンファイバー製自転車「Superstrata Ultraman edition」の限定予約を受け付けた。
AGC、住友商事、大林組が出資。ベトナムでのオペレーションも拡充
――コロナ禍、2020年8月にシリーズBの2500万ドルの資金調達を実施しましたね。
コロナ禍で良くも悪くもありましたが、資金調達は困難を極めました。巷ではリモートワークを可能にする企業に投資したほうがいいという熱気がありますが、ディープテックは長期的なビジョンを見据えています。5〜10年を見越したビジョンに賛同してくれた投資家たちが味方についてくれました。
社内では、リモートワークの普及で通常業務がより効率的に行えるようになりました。私の住むベトナムが新型コロナウィルスの封じ込みに成功したことも貢献したと言えます。今後ベトナムは私たちのメインオフィスとなるでしょう。年末までに40名の社員を配置し、来年末までには人数を倍にする予定です。
――日本での展開について教えてください。
現在は、AGCという素晴らしいパートナー企業がいます。また、東京に3〜4人で構成されたチームもいます。出資者にはAGC、住友商事グループ、大林組といった日本企業が並んでいます。旭化成とAGCにはプリンターを2台販売しました。
将来的には日本にも工場を配置したいです。質、スキル、教育水準が非常に高い国なので、心配はしていません。 ジョイントベンチャーとなる企業を見つけるのが理想です。