データをスプレッドシートにまとめ、後は質問に答えていくだけ
―まずAppSheetの事業について教えてください。
昨今、業務プロセスの自動化が求められていますが、実際はあまり進んでいない現状があります。例えば、業務プロセスを自動化するためにアプリを作るとなると、プログラマーに制作を依頼することになり、高額な開発費用がかかり、開発期間も長くなります。それはコーディングが必要だからです。
当社は、業務プロセスの自動化に使うアプリを、コーディングせず自動的に生成する仕組みをつくり、プラットフォームとして提供しています。
IT系の大規模企業でも社内の基幹業務プロセスの自動化は課題になっており、当社のサービスはそうしたところでもトラクションを得ています。
―コーディングなしでアプリを作るということですが、どうやって実現しているのでしょう。
業務プロセスには業務ロジックがあります。そのロジックに対応でき、コンピューターを使った自動化が可能で一般的に広く使われているソフトを探したところ、スプレッドシートが該当しました。スプレッドシートは数式を組み合わせることで、多くのロジックを表現することが可能です。また、ビジネスアプリの多くはデータドリブンでデータは構造化されていますので、データ構造とスプレッドシートの数式でロジックを整理し、これら構成要素をまとめることでアプリを生成します。作ったアプリはブラウザ上で動きますので、修正もすぐに反映できますし共有も可能です。また、AndroidとiOSの両方で使うことができます。
世界中のビジネスユーザー10億人がターゲット
―競合他社はいますか。
約1年前からローコードとノーコードが急激に話題になり、Buzz wordになるなど、注目されています。個人的には、ローコードとノーコードは同じ意味で、開発者向けにプラットフォームを提供している企業が、「ローコード」という言葉を使っていると思います。彼らのサービスの多くはアプリ開発者が活用するライブラリやツールを提供しているため、当社とはターゲットが違います。
当社は、世界中に約10億人いるビジネスユーザーをターゲットに、ビジネス用途で活用できるサービスを提供しています。ビジネスユーザーの多くは、アプリを開発する知識や能力は備えていないものです。私たちは「ノーコード」でそれを変えようとしています。ここが、同様なサービスを提供している他社との大きな違いです。
そして、価格設定やビジネスモデルも競合他社とは違います。当社は有料サービスもありますが、より多くの方にサービスを使いアプリを作ってほしいので、基本的なサービスは無料で提供するフリーミアムモデルです。当社のサービスはボトムアップで導入が進んでいますが、競合他社はトップダウンで、企業への販売が主流になっています。
また、AppSheetを使えばプロトタイプを数分で作ることができます。このユーザーエクスペリエンスは競合他社サービスでは得ることができないものだと考えています。
AppSheetは世界100カ国以上で使われている
―日本でも導入が進んでいますか?
当社のサービスは地理的な制約がありません。ユーザーのデータにアクセスできる環境があればどこでも導入が可能です。実際、既に日本を含む100カ国以上にユーザーがいます。
日本では、大手運送会社がソリューションパートナーになっています。そして、郵便局向けのテクノロジーサービスを提供している日本企業にも協力しています。こうした導入実績はありますが、まだまだオーガニックグロースに依存している状況です。日本での展開には現地のパートナーが必須だと考えていますので、今後更にパートナーを増やしたいと真剣に考えています。
編集部からのお知らせ:米国とイスラエルの注目セキュリティスタートアップをまとめた「Security Startups 50」を提供しています。こちらからお問い合わせください。(リリース日:2019/8/6)