AnyRoadは、ブランドが提供する「Experience」の効果を測定し、データ分析を行うExperience Relationship Management (以下ERM)プラットフォームを提供している。データに基づいた効果測定が難しく、成果指標を設けにくかったERM分野にアプローチしており、SalesforceのCEOも出資する注目スタートアップだ。同社は、欧米で多数の導入実績があり、現在は、アジア圏で事業を拡大し、日本市場への参入も目指す。日本でも起業経験がある同社のCo-Founder & CEOのJonathan Yaffe氏に話を聞いた。

Red Bull時代、体験・経験のマーケティングに年間数十億ドルを投資

―まず、創業の経緯を教えてください。

 大学卒業後にRed Bullに就職し、マーケティング部門に所属していました。Red Bullでは、オンライン広告やメール配信など、デジタルマーケティングは飽和状態だという認識で、体験や経験が消費者の購買動機に繋がると信じられていました。そのため、イベントの主催などを通じた体験・経験の提供に年間数十億ドルを費やしていました。

 結果的に、Red Bullは、エナジードリンク市場で世界シェアトップになりましたが、結果が出るまでは自分たちが提供していた体験や経験が販売数に影響したのか、経験価値マーケティングに効果があるのかは、誰にもわかりませんでした。

 現在、経験価値マーケティングは、企業のマーケティング予算の約7.5%を占めます。しかし例えば、lululemon (高機能スポーツウェアの小売)が提供している無料ヨガレッスンが、本当にブランド認知度の向上や購買に繋がっているのかは不明で、効果を追跡し測定する方法がありませんでした。私たちは、そこにビジネスチャンスを見つけ、AnyRoadの創業に至りました。

Jonathan Yaffe
AnyRoad
Co-Founder & CEO
カリフォルニア大学バークレー校にて認知神経科学学士号を取得後、Red Bullのマーケティング部門に所属。2005年にKAIS International School(東京)を設立、2019年8月まで校長を務めた。2005年には、コワーキングスペースみどり荘の運営などを手がけるMirai Institute(東京)も共同で設立し現在も共同創設者として関わる。2013年に東京からカリフォルニアに戻り、AnyRoadを共同で設立しCEOに就任。

―AnyRoadのサービス内容を教えてください。

 当社は、オフライン・エンゲージメントを管理するERMプラットフォームの提供と、データ分析を事業にするデータカンパニーとして、体験や経験の提供からデータ分析までを包括的に支援しています。

 参加登録および発券業務から得るデータ、体験や経験の提供前と後に実施するミクロサーベイや、人口統計や地理的なデータ、それと購買データ分析やロイヤリティの構造化データを、CRMシステムに統合し、時間とともに体験や経験がブランド認知度と消費行動に変化を起こすか、その効果を測定し分析します。

Image: AnyRoad

―ビジネスモデルは?

 サブスクリプション型モデルです。企業向けのSaaSですので、Salesforceと同様のビジネスモデルで、年単位での契約になります。

ERMシステムで新市場を創る開拓者

―日本市場への進出など、今後の展開について教えてください。

 アメリカホンダ自動車で当社のサービスをご利用いただいていますが、日本市場への進出はこれからです。当社の顧客には大手企業が多く、米国とヨーロッパの自動車メーカー、消費財メーカーや、小売業などで実績があります。

 日本には、自動車メーカー、食品・飲料メーカーや酒類メーカーなど、多くの人に愛される素晴らしいブランドを持つ企業が沢山あります。人びとは大好きなブランドを買うだけでなく、それ以上の関わりを求めており、当社のサービスはそうした人気ブランドにとって有用だと考えています。

 現代では、体験や経験を重視する「Experience economy (経験経済)」に経済が移行しています。世界中のトップ企業が、ブランド体験や経験を重視する今、私たちは大きな変革期にあり、体験や経験がもたらす効果の測定が求められています。当社は、ERMシステムという新市場を開拓しながら、様々な業種で顧客を増やし、地理的拡大を目指します。



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