ソフトウェアの開発の主流が、一枚岩のアプリケーションから小さなサービスの分割であるマイクロサービスになり、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)エコノミーは隆盛を極めている。アプリケーションのさまざまな部分が互いにデータをどのように共有するかを制御するサービスメッシュを開発するのがSolo.io(本社:米マサチューセッツ州)だ。CEOのIdit Levine氏に導入事例やソフトウェア市場の現状について話を聞いた。

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「一枚岩」からマイクロサービス、APIゲートウェイ 流れを見極める

――御社のサービスと立ち上げの経緯を教えてください。

 私たちのサービスはとてもシンプルです。近年、ソフトウェア市場において、「一枚岩」の統制されたアプリケーションから、それぞれ独自の機能を有する独立したマイクロサービスへと移行していきました。例えば、GoogleやAmazonといった巨大IT企業でも、自社のクラウドサービスを構築する際は、マイクロサービスを採用しています。なぜなら、この手法を取った方が、サービスのサイズや機能を追加でアップデートさせ易いからです。

 あらかじめアプリケーションの規格を決定する手法はソフトウェアの構築段階で限界が決まってしまいます。このようにマイクロサービスには利点が多いのです。私たちが手がけるのは、「別々のサービスがネットワークを介してコミュニケーションを取ることを確かにする」ことです。

Idit Levine
Solo.io
Founder&CEO
イスラエルのBar-llan Universityで理学士号を取得後、15年以上にわたり複数の企業でソフトウェアエンジニアとして勤務する。2014年からDell EMC社にてCTOとして勤務した後、2017年にSolo.ioを創業。

 もう少し詳しく説明しましょう。マイクロサービスは、単位の異なる小さなサービスが連携をとって、一つの大きなサービスをつくる技術です。その異なるサービス同士は、開発言語も違っていたり、データベースも異なっていたりします。

 例えば、私たちがAmazonで買い物をするとき、過去の買い物履歴やおすすめの商品が表示されますが、これらは全てマイクロサービスで動いているのです。結果として、ユーザーは同一のwebページ上に「買い物履歴」「おすすめ商品」を見ていますが、それらが同時に動いている内部の仕組み自体は、非常に複雑なものなのです。

 私たちが取り組んでいるのは、この「買い物履歴」と「おすすめ商品」を、同一の画面に表示させる働きを確かにするための基盤づくりです。「買い物履歴」と「おすすめ商品」は同時に通信する必要がありますが、その通信を規定するロジックをつくる技術を「サービスメッシュ」と表現します。

 私たちは、「サービスメッシュ」を提供する会社なのです。2017年の創業以来、私たちは異なるサービス同士をつなぎ合わせるAPIゲートウェイ技術を構築し、多くの企業に利用されてきました。そして、サービス間の通信を規定する要素をそれぞれのサービスから抜き出し、より抽象化した技術であるGloo Mesh Enterpriseをローンチし、アップデートしました。これは、オープンソースの技術を応用したもので、サービス間の通信時間を大幅に削減し、ワンストップで全てを完結させることができます。ユーザーエクスペリエンスもとてもよく、好評を得ています。

Image: Ashalatha / Shutterstock

――どんな顧客が御社のサービスを利用しているのでしょうか。

 SAPやT-Mobileといった、グローバル企業です。私たちの顧客数は100を超えます。ITをはじめ、金融や石油ガス業界等幅広く、新しいテクノロジーへの抵抗がない企業が利用しています。我々のサービスの一部はオープンソースを利用したものなので、多くの企業が「毎日」使っています。ソフトウェア市場のマイクロサービス化を強く感じますね。

技術的優位性、膨大なユースケースでUXも向上

――御社のサービスにおいて、競合他社と差別化している点を教えてください。

 API技術において、技術的アドバンテージが多いものを提供している点です。この技術は、クラウドネイティブのアプリケーションに対してより効果的です。現在は、クラウドに端を発したサービスにどの企業も力を入れているので、私たちのサービスを使っているのです。

 サービスメッシュにおいて、私たちのサービスは膨大な数のユースケース(利用者がシステムを用いて特定の目的を達成するまでの、利用者とシステムの双方向のやり取りを定義したもの)を提供しています。私たちはサービスメッシュの分野において先駆者であり、多くのユースケースを提供できる会社はあまり見当たりません。そのため、導入企業も私たちのサービスをスムーズに導入することができ、結果的にユーザーエクスペリエンスも良いものになっているのです。

――2017年の設立からこれまでの道のりはいかがでしたか。

 私はSolo.ioを創業するまで、ソフトウェアエンジニアとして働き、クラウド市場を見てきました。ですので、市場のエコシステムからホットなサービスまで、その変遷を見続けてきたのです。私が創業した2017年は、特にソフトウェア開発における、統一されたアプリケーションからマイクロサービス化の流れが顕著なタイミングでした。ですので、前述した「サービスメッシュ」の構想は当時からありました。ですが、「このテクノロジーはまだ新しすぎて、市場は受け入れてくれないだろうな」とも思っていました。

 とはいえ、ソフトウェアにおける、マイクロサービス化の流れは必須とも理解していました。そのため、最初はAndroidに用いるプロキシ技術という、サービスメッシュのはしりになるテクノロジーを販売しました。その後、APIゲートウェイマーケットに参入しました。なぜなら、それが「サービスメッシュ」を市場に受け入れてもらえる、良い「つなぎ」になると感じたからです。

 起業して約5年が経ちますが、「大きなトレンドを読み、顧客視点で小さくサービスを始める」というスタートアップの基本を徹底してきたことがこれまでの成功の理由だと感じています。まずは、「課題」を徹底的に見つめ、小さく始める。そのことで、まだ他の誰も見つけていないマーケットを創出することができます。

資金調達でさらなる人員拡大 日本市場への積極展開も視野に

――2021年10月には、シリーズCで1億3500万ドル(約165億円)の資金を調達しました。資金の使い道、今後の目標を教えてください。

 私たちは、シリーズA、Bで約3500万ドルの資金調達に成功しました。正直に申し上げますと、シリーズBまでの調達で資金的には十分だったのですが、多くのベンチャーキャピタルから出資の話があり、シリーズCの調達も行うことにしました。なぜなら、私たちのサービスを世界中どこでも使えるようにし、組織としてもより大きくなることを志向したからです。

 シリーズCの資金調達を行う前から、当社はグローバルカンパニーでした。アジア太平洋を含め、全ての大陸に私たちの顧客がいたのがその証です。こちらの手が回らないほど、見込み客からの問い合わせがあります。より多くの人々にサービスを届けるためにも、人員拡大を含め、会社をより大きく、強くする必要性を感じています。

 今後は調達した資金で、営業人員、エンジニアチームをさらに拡大させ、増加する顧客からのリクエストに応えていきたいと思います。

――日本市場への進出の予定はありますか?

 既に、日本のEコマースを手がける大手企業が私たちの顧客です。また、それとは別の見込み客がいて、今後も日本市場へは積極的に展開する予定です。日本は、世界でも有数のIT市場を誇ります。また、前述したように、私たちのサービスにはオープンソースのものもあるので、既に英語版のものを使っているユーザーもたくさんいると聞いています。

 日本市場は大きく、特殊だからこそ、本格的な参入はマーケティング、言語への対応が整ってからにしたいです。今後、日本市場に参入するとすれば、現地の商習慣や日本語訳に対応できる代理店とお話をしてみたいですね。

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