Start-Up Nation Central(以下SNC)は、イスラエルのエコシステム構築支援、事例動向など情報発信、そして、国内のスタートアップを世界につなげ、国外の企業をイスラエルのスタートアップにつなげる仲介者として機能する非営利機関だ。今回は、CEOのEugene Kandel氏に話を聞いた。

編集部からのお知らせ:本記事の内容も含め、イスラエルスタートアップやそのエコシステム関連情報をひとつにまとめたレポート「Israel Startup Ecosystem Report」を無償提供しています。こちらからお問い合わせください。

「改善」の日本と「革新」のイスラエル

―まず、イスラエルと日本のイノベーション文化の違いについてお話しください。

 日本人は、永続的に住み続ける場所があることを前提に、知識の向上や蓄積を行っています。例えば終身雇用制度はその考え方に基づいていますね。ユダヤ人には、過去2000年間そうした場所がありません。常に追放される可能性がある環境にいたため、新しい土地に素早く適応し、チャンスを見つけだし、生き残る方法を考え出す必要があり、それが文化になっています。

 日本が築かれた物を「改善」する文化だとすると、イスラエルは、失敗し試行錯誤しながら解決する、「革新」を恐れない文化です。

 ここ数年、日本企業のイスラエルでの活動が活発になり、SNCが、タケダ、リクルート、トヨタなどの日本企業を適切なローカル企業とつなげ、支援してきました。全く違う文化を持つ日本とイスラエルですが、コラボレーションは可能です。

Eugene Kandel
Start-Up Nation Central
CEO
1977年よりイスラエル在住。ヘブライ大学にて学士号および修士号を取得。1989年に米国シカゴ大学経営大学院でMBAおよび博士号を取得後、ロチェスター大学(ニューヨーク州)の助教授に就任。1997年から現在もヘブライ大学の教授(経済学・金融学)を務める。2009年から2015年までイスラエル国家経済会議(National Economic Council)の委員長および首相経済顧問を務め、2014年のネタニヤフ・イスラエル首相訪日に同行。2015年にStart-Up Nation CentralのCEOに就任。

―日本企業は世界中で技術を探しています。他の国にはないイスラエル企業の強みは何でしょうか。

 日本やドイツの中堅企業を含め、世界中の企業がイスラエルに来ています。

 イスラエル人は、例えば、インターネット上のデータ移動のプロジェクトに携わった後、そのロジックを活用し、水漏れを予測する水位測定システムを開発するなど、特に技術の転用に長けています。これは、多角的にビジネス展開する日本の総合商社など大手企業の要求に応える、イスラエルの最も優れたところです。

 また、イスラエル政府は、軍隊、研究開発そして大学への投資に力を入れ、起業リスクを削減するサポートプログラムや、大学からの技術移転や人材育成プログラムも提供し、更に、EUの「Horizon 2020」にも参加しています。

 イスラエルでは、国防軍が最先端技術の開発と若い人材の育成に大きく貢献しており、軍隊で訓練を受け最先端技術に精通し、経験値が高い20代前半の人材が民間にいることも他国にない強みと言えるでしょう。彼らが軍隊で習得した技術は、農業、インダストリー4.0など様々な分野で活用されています。

 イスラエルは基盤技術を使ったBtoB企業が多く、市場規模、生産能力、マーケティング力などの面で多くの日本企業と競合しないため、調和が保たれやすいことも日本と相性がよい点です。そして、イスラエル人の常識に縛られない方法で問題を見つけ解決する能力は、日本企業にも有益でしょう。

オープンイノベーションが主流に

―日本の大手企業だけでなく中小企業もイスラエル企業に仲介してもらえますか。

 SNCは、「Start-up Nation Finder™」という、企業規模に関係なく無料で使えるプラットフォームで、イスラエル企業6,700社の最新情報と、専門家によるインサイトを公開しています。まずは、欲しい技術を持った企業をこのプラットフォームで探してください。コンタクトを取りたい企業が見つかったら、ワンクリックでライトパーソンへ連絡を取ることができます。

―日本企業とイスラエルのスタートアップはどういった形で協業できると思いますか。

 特にITC(情報通信技術)分野においてですが、技術を持った企業を買収する「イノベーション」ではなく、様々なツールを組み合わせ、エコシステム全体とエンゲージメントを持つ「オープンイノベーション」が今は主流です。

 日本企業にも、イスラエルのエコシステムと課題を共有し、ソリューション開発パートナーを選択する「オープンイノベーション」方式をお勧めします。私たちは、顧客ではなくパートナーになる企業を求めています。

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