2012年に創業し、アメリカ・ミシガン州に本社を構えるSkySpecs。同社は、AIと機械学習を用い、風力発電設備の保守・管理をより簡単にするソフトウェアサービスを展開している。世界中で風力発電が注目されている中、同社は25カ国以上に顧客がおり、年間50000基以上の点検を行っている。日本では2020年、東京電力ベンチャーズと風力発電設備のドローン点検におけるアライアンスを結んでいる。同社の特徴は、この分野において、他社の追随を許さない実績と技術を有していることだ。SkySpecsの共同創業者であり、CTOのTom Brady氏に話を聞いた。

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ブレードの「どこを修理するべきか」を提示

――御社がどんなサービスを展開しているのか、教えてください。

 私たちは、陸上・洋上風力発電タービンのブレードの状態を、画像解析などの技術を使って自動で点検するソフトウェアサービスを運営しています。また、ドローンを用いたタービンの点検も行っています。

 当社のミッションは「陸上・洋上風力発電事業者に対して、効率的な発電をサポートし、より利益が出せるようにすること」です。私たちの風力発電設備管理ソフトウェア「Horizon(ホライゾン)」は、ブレードの画像を機械学習によって解析し、損傷箇所や損傷程度を判定することができます。また、点検データ保存や損傷箇所の分析、補修作業管理といった点検作業のプロセスを一元管理するプラットフォームとして活用することも可能です。

 風力発電は、ブレードの日々の状態の検知やそのデータの集積といった分野で課題が残されています。ブレードに破損が故障が生じると、発電に支障が出ますし、修理には時間もコストもかかります。SkySpecsのサービスは、ブレードの状態を観察し、それをデータとして集約することで、事業者にとって故障が発生したときに最適な決断を下すことができるプラットフォームを提供しているのです。

Tom Brady
SkySpecs
Co-Founder & CTO
University of MichiganでAerospace Engineeringの学士号、修士号を取得。学生時代に、Danny Ellis氏(SkySpecs社CEO)とMichigan Autonomous Aerial Vehiclesというサークルを立ち上げて活動。2012年にSkySpecs社をEllis氏らと共同創業。

――具体的に、御社のサービスはどのような使い方をされるのでしょうか。

 当社のサービスは、年間50000基以上の風力タービンの点検に使われていますが、特徴的なのは「ブレードのどこを直すべきか」を教えることです。風力発電機の検査においては、一回の検査でブレードの破損など、膨大なケースが報告される可能性があります。問題なのは、多くの場合それらの欠陥は発電や安全性に問題がないことが多いことです。つまり、検査が報告するブレードの欠陥の全てを修理しようとすると、膨大なコストと時間がかかってしまいます。

 SkySpecsは、ブレードの検査と検査結果のデータを集約したソフトウェアを組み合わせることで、「本当に直すべきもの」を指摘し、修理の優先順位を教えているのです。

――従来、事業者はどのようにブレードの状態を確認していたのでしょうか。

 これまでは、事業者がブレードの検査を行う複数のベンダーに働きかけ、状態を確認していました。これでは点検報告のデータが一つにまとまらず、とても非効率でした。しかし、SkySpecsは、PDFやエクセルにまとめてブレードの状態を報告できるので、風力発電タービンの近くにいなくとも、スマートフォンやパソコンなどでワンストップの確認を可能にしているのです。

 さらに、当社のサービスはブレードの全体像をデータで報告するので、事業者は修理するべき欠陥かどうかをその場で判断することができます。かつては、一つの検査機関に依頼し、「このブレードの欠陥は大惨事を招くだろうか、安全を期すために修理をしよう」という判断をするしかなかったのです。当社は2016年からこの事業を行っており、ブレードの「どの部分の故障」が致命的な結果につながるかを深く理解しています。事業者にとって、点検コストと発電しなかったことによる機会損失を低減するのが、私たちがお届けするコアバリューです。

Image: SkySpecs

世界25カ国以上でサービス展開 日本では東京電力ベンチャーズと提携

――御社の収益モデルを教えてください。

 私たちの顧客は世界の約25カ国以上にいて、その中にはFortune100にランクインするほどの企業もあります。再生可能エネルギー事業者の中でも、トップクラスの企業が多いです。顧客は海外に多くおります。例えば、アメリカやカナダ、メキシコ、ヨーロッパ諸国や、オーストラリア、日本などの国があります。ですから、単一の収益モデルは構築していません。

 SkySpecs社が自動検知器とソフトウェアを取り付け、ブレードに関するデータを共有している顧客もいますし、我々のサービスと従業員が、顧客企業のエンジニアリングチームの戦力としてカウントされている顧客もいます。ですから、顧客が求める最適な形で当社のサービスが利用されると良いと考えています。

――日本市場においては、東京電力ホールディングス100%子会社の東京電力ベンチャーズと国内独占アライアンスを締結しています。

 SkySpecsは2020年12月に、東京電力ベンチャーズと、風力発電設備のドローン点検における独占アライアンスを結びました。東京電力ベンチャーズとのアライアンスは、当社にとって日本での販売代理、ディストリビューションの側面が強いです。アライアンスの目的は、彼らが管理する風力発電施設のアセットに、私たちのドローン技術を用いた点検能力を利用することで、彼らの管理の「ペインポイント」を探すことです。

――今後も日本でのパートナーシップ構築の可能性はありますか。

 陸上・風力発電設備の点検は世界的にも大きなマーケットであり、解決すべき問題です。日本市場において、当社の第一の関心事は、日本の再生可能エネルギー・インフラの所有者や運営者を支援することです。

 当社は常にテクノロジーパートナーを探しています。最高品質のプロダクトによってエコシステムを構築しようとしています。顧客が求める価値とは、技術的なソリューションを実際に導入することで、点検や資産管理に関する出来る限りベストな判断を下すことであると理解しています。それを実現するには、当社の力だけではなく、パートナーシップのネットワークも構築していきたいと考えています。

――日本市場が注目される理由はありますか。

 当社CEOのDanny Ellisは、東京電力ベンチャーズとの提携において、「2050年までには、世界の洋上風力発電容量の6割がアジアに所在すると予測されている。その中でも日本は最大の未開拓地と捉えており、このアライアンス締結は絶好のタイミングだ。東京電力ベンチャーズとのパートナシップに心躍る。末長い関係性を期待している」と述べています。日本は国土の特性上、洋上風力発電の設置には大きなポテンシャルを有しています。

 一方、陸上の施設とは違い、洋上風力発電設備は安全性の点検が難しいです。だからこそ、これまで25カ国以上、約50000基の風力発電設備を点検してきた我々の実績が活かせると考えています。

Image: SkySpecs

約110億円の資金調達に成功 ソフトウェアに磨きをかける

――資金調達の状況とその使い道について教えてください。

 当社は、2022年5月、Goldman Sachs Asset Management社が主導するシリーズDラウンドの資金調達において、8000万ドル(約110億円)を調達しました。この資金で、我々のソフトウェア「Horizon」の精度向上に努めます。具体的には、画像解析とデータ集積のクオリティを向上させていきます。

 当社は2021年、テクノロジーを使って風力発電設備の点検を行う、アイルランドのFincovi社とデンマークのVertikal AI社を買収しました。両社の買収と、大型資金調達により、Horizonのソフトウェアを他社が追随できないレベルにまで完成度を高めたいと考えています。

――なぜ、御社はこれだけの投資家を惹きつけることができているのでしょうか。

 第一に、短期間で、非常に強固な顧客基盤を構築できたことが挙げられるでしょう。我々が風力発電設備の点検サービスを始めたのは2016年からですが、世界中の風力発電事業者を助け、よりスムーズな点検の実施に貢献してきたと思います。この分野における第一人者がSkySpecs社であるのが第一の理由だと考えています。

 第二に、我々が才能豊かなメンバーを揃えたチームをつくれたことが理由でしょう。現在、当社はアメリカ、オランダ、アイルランド、デンマーク、インドにオフィスを構えていて、250人の社員がいます。全てのメンバーのモチベーションがとても高く、事業の成長を確信したからこそ、投資家も魅力を感じたのではないでしょうか。

Image: SkySpecs

――最後に、御社の長期的な目標を教えてください。

 風力発電設備の管理をより簡単にすることです。今後、世界中でより多くの陸上・洋上風力発電設備が設置されていくと思います。その事業者が設備の保守・運用を考えたときに、SkySpecsが「ファーストチョイス」に選ばれるようになりたいですね。

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