Image: SizeSquares / Shutterstock
空撮や物流、測量、農業、警備などさまざまな用途で活躍するドローン(UAV:Unmanned Aerial Vehicle、無人航空機)。便利な反面、旅客機の運航の妨げになったり、原子力発電所など重要な施設に不正に侵入したりといった問題も生じている。SkySafe(本社・米カリフォルニア州)は、空港や発電所、軍の施設、スタジアムなど空域の安全が求められる場所での不正ドローンを探知・追跡・分析するソリューションを提供する。マサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業後、アメリカ空軍やセキュリティ企業を経て創業したCEOのGrant Jordan氏に事業の特徴を聞いた。

空軍でのドローン対策研究を活かしたソリューション開発

 Jordan氏は、MITでコンピューターサイエンスや電気工学の学位を取得した後、2007年から4年間、アメリカ空軍の研究所(AFRL)で不正ドローンなどの脅威に対抗するためのシステム開発に携わった。2012年から3年間は、コンピューターセキュリティのコンサルティング企業Somerset Reconの社長を務める。そして2015年、MIT時代に共に学んだScott Torborg氏(現Chief Scientist)とSkySafeを創業した。

Grant Jordan
SkySafe
Co-Founder & CEO
マサチューセッツ工科大学で電気工学やコンピューターサイエンスを学んだ後、2007年にアメリカ空軍へ。軍の研究所でカウンターIED(即席爆発装置の脅威に対抗する装備)や小規模ドローンミッション用のシステムを構築する業務に従事。2012年から3年間、コンピューターセキュリティのコンサルティングを行うSomerset Reconの社長を務め、2015年にSkySafeを創業。2017年からは商用ドローン業界の主要メンバーによる非営利団体Commercial Drone Allianceの役員も務める。

「私たちは、ドローンの脅威が高まっており、本来飛行すべきでない場所で悪用される可能性があることに気づいていました。たとえば、空港では悪意のあるドローンが引き起こすリスクや、無知な人が飛行機の運航の妨げになることを知らずにドローンを飛ばしてしまうことがあります。私たちのソリューションは空港だけでなく、国境での密輸防止や軍事施設での導入もあります。石油やガス、原子力発電所などの重要インフラ、スタジアムなどの公共の安全を守るのが私たちの活動です」

 SkySafeは、飛行が認められていないドローンを識別・追跡し、飛行を回避させるソリューションを提供している。ドローンで使われる無線信号を検出して位置を特定・識別し、飛行が認められてないドローンについてはジャミング機能などを使ってコントロールを奪い、安全に着陸させることができる。

認可・不認可ドローンの区別もシステムで速やかに判別

 SkySafeの顧客は、軍や政府の国境警備隊、刑務所など警備や安全を担う機関をはじめ、空港や航空会社、インフラ施設、スポーツスタジアムなど、管理する空域の安全を守る機関だ。Jordan氏は、その必要性を象徴する出来事として、2018年にロンドンのガトウィック空港で起きた、ドローンによる滑走路閉鎖事件を挙げた。

「不認可のドローンが発見された後、そのドローンがいなくなったかどうかを判断するのが難しかったのです。たとえば、警察が調査のために自分たちのドローンを飛ばすと『不正ドローンがいる』と通報されることがあります。空港などを管理する側は、どのドローンが警察のものか、不認可のものか区別できないのです。ガトウィック空港のケースでは、滑走路が1日半も停止して大きな損失を招きました。しかし、私たちのシステムを使えば、調査の時間をわずか15分ほどに短縮できます」

 空港では、警察だけでなく航空会社などが整備や検査のためにドローンを利用する需要もあるという。SkySafeのソリューションなら、使用が認められたドローンを識別する情報をシステムにインポートすればいい。たとえ空港内でドローンが飛んでいて、目撃者からの通報があったとしても、認可・不認可の区別をシステムで判断できるのだ。

 同社のソリューションは、ドローンの検知や認識以外にも、その分析機能を使って法執行機関や軍隊などのフォレンジック調査にも活用されている。脅威が発生した際、回収したドローンがどのような振る舞いをしたか、飛行ログや画像などを抽出・監査するためのツールも提供している。このツールは日本を含む32カ国で利用されている。

Image: SkySafe

日本でも導入広がる 新たなパートナーも常に歓迎

 SkySafeはこれまで、2016年のシードラウンドと2017年のシリーズAラウンドでAndreessen Horowitzから計1500万ドル(約17億円)、2021年にはシリーズBラウンドでKingfisher Investment Advisorsなどから3000万ドル(約34億円)を調達した。2022年にはドローン追跡インフラをさらに拡張し、より多くの施設をカバーすることを目指す。2022年1月現在、チームのメンバーは20名ほどだが、こちらも増やす計画で、アメリカだけでなく、日本をはじめとする複数の地域でのサポートも強化していく。

「現在日本には販売パートナーがいます。今後は、石油やガス、空港、スタジアムといったインフラのセキュリティを提供する企業とのパートナーシップが必要だと考えています。電力や産業分野などでインフラを守りたいと考えている大企業や、大規模な商用ドローンプログラムをより円滑に進めたいと考えている企業と提携する機会があるでしょう」

 SkySafeと同じように空域を守ることを目的とし、レーダー技術を活用する競合企業もあるが、Jordan氏によると、SkySafeは無線通信に注力し、探知からフォレンジックまでを統合している点で優位にあるという。さらに、商用ドローンが普及していく将来を見据えて、専用の交通管理システムの構築も構想している。ドローンへの関心は世界的に高まり、保護された空域での商用ドローンの使用に対する需要も増えているため、安全な利用のための基盤が必要とされているのだ。

商用普及で需要増 インフラ進化目指す

「私たちは商用ドローンが活躍する交通管理のための基礎を築いています。将来的にドローンによる配達や検査を安全に行うことを考えた場合、各ドローンがどこにいるかを知る必要があり、事故を回避するために他のドローンに飛行予定地を通知することなどが必要になります。私たちは、すべてのドローンがどこにいるかという情報を提供するデータプロバイダーの1つとなるべく、ネットワークを構築しているのです」

 SkySafeの技術面での大きな次のステップは、検知・分析範囲の拡大だ。クラウドへネットワークを広げ、より大規模なインフラ、より大規模なエンタープライズソリューションを目指す。初期のビジネスは、特定の設備で個別に利用するツールの販売であったが、現在はクラウドを介して各種設備や領域の管理を提供している。さらにそのネットワークを拡大し、広範囲に検知・解析ができるようなインフラへの進化を目指している。Jordan氏は同社のミッションや展望について次のように語った。

「私たちは商用ドローンが世界中どこでも安全に使えるようにしたいと思っています。現在の問題点の1つは、ドローン使用の透明性が欠けていることです。一般の人は飛んでいるドローンに対して少し恐怖心を抱くのではないでしょうか。ですからドローンを飛ばす企業にはその説明責任が必要で、そのためのインフラを弊社が整備します。当社はすでに日本市場に進出していますが、新たなパートナーとなる可能性のある方々とお話ししたり、私たちがまだ考えていない新たな機会を探ったりしていくことを常に歓迎しています」



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