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大容量バッテリーを支える素材を開発。リチウムイオン電池の歴史を変える
―まずは御社のサービス内容を教えてください。
我々の使命は、エネルギー貯蔵に最適な素材を開発し、次世代のバッテリー製造を実現することです。現在広く使用されているバッテリーには、黒鉛アノードや金属酸化物カソードといった素材が使われています。当社で製造している素材を使えば、それよりもはるかに大きなエネルギーを貯蔵できるバッテリーを作ることができます。同じサイズのバッテリーに、いかにして多くのエネルギーを貯蔵できるか、という点に力を入れています。
―つまり、御社はバッテリーそのものを製造しているわけではないのですね?
そうですね。我々はバッテリーがエネルギーを貯蔵する際に欠かせない、重要な素材を作っています。リチウムイオン電池に現状多く使われている黒鉛アノードなどに代わる、シリコンベースのアノードを製造しています。
シリコン素材は、黒鉛よりもエネルギー貯蔵量が多いことで知られています。これまでも、黒鉛アノードとシリコン粒子を混合するかたちでは使われてきました。しかし、黒鉛を完全に排除してシリコンをベースにする、というのは我々が初めてです。1991年にリチウムイオンが初めて導入されて以来の、根本的な改革と言っていいでしょう。
携帯電話や電気自動車のバッテリーに活用
―御社で手がけるバッテリーの主な用途はどんな市場になりますか?
まずは、消費者向けの携帯電話といったデバイスです。当社の技術を使えば、同じ容量のエネルギーを、より小型のバッテリーに貯蔵することができますから、その分のスペースを有効活用することができます。
あと、我々が力を入れているのが自動車市場です。電気自動車に使用するバッテリーですね。バッテリーの小型化は価格の低下を意味し、バッテリーが安くなれば、電気自動車そのものの価格も下げることができますから、これは大きなメリットです。
―大容量バッテリーを製造する企業は少なくないと思いますが、他社にはない御社独自の強みは何でしょうか?
たしかに、シリコン素材を使っている企業もありますが、彼らの商品はあくまで素材の数%をシリコンにするといった限定的なものです。黒鉛を完全にシリコンに置き換える当社の製品は他社を圧倒します。
また、シリコンのテクノロジーに取り組んでいるスタートアップもいくつかありますが、商品を市場に出せるまでに至っている会社はありません。我々は7、8年前からこれらの素材開発を手がけており、やっと大量生産が可能なほどスケーラブルな事業になりました。
他のスタートアップではバッテリーそのものの構造を再構築しようとしているものも多く、当社のようにバッテリーのメーカーとうまくパートナーシップを組むことも難しいでしょう。
―バッテリーのメーカーが御社で作った素材を使う場合、バッテリーの仕様や構造を御社製品用にカスタマイズする必要はあるのでしょうか?
いいえ、それはまったくありません。メーカー側はただ黒鉛素材をシリコンに置き換えるだけでよいのです。
―先ほど、消費者向けデバイスと自動車がターゲット市場だと伺いますが、どのように開拓していく予定ですか?
そうですね、まずは最初の2、3年は消費者向けデバイスのほうに力を入れようと思っています。自動車市場に参入するには、もう少し準備期間が必要だと考えています。
とはいえ、消費者向けデバイスも十分に大きな市場です。こちらで事業を拡大して体制が整い次第、自動車市場へと手を広げていきたいと思っています。このような企業は世界を見ても、例がないと思います。もちろん、今も自動車メーカーとの取引もありますよ。BMWとも提携しています。
テスラ出身。堅実に足元を固めつつ、世界のバッテリーのスタンダードを目指す
―この会社を立ち上げた経緯は何でしたか。
当初、私はテスラモーターズのエンジニアでした。そこでバッテリーシステムの開発に携わっていました。業界を見渡した際、バッテリーの開発が遅れていることに気がつきました。
そこで2008年、私は同社を退職し、バッテリーの性質について研究することにしました。私はリチウムイオン電池の性能を改善し、価格を大幅に下げ、電気自動車をもっと手ごろな価格にできるような素材を作りたいと考えました。そして2011年、今の会社を立ち上げたのです。
―今後、世界展開も視野に入っているのでしょうか?
そうですね、我々は世界中のバッテリーメーカーと密接にかかわっているわけですが、リチウムイオン電池の主要メーカーは韓国、日本、中国にあります。ですから、現地のメーカーと提携し、多くの地域で多くの方に、我々の製品を使っていただきたいですね。
また、我々が作ったバッテリーを扱ってくれる携帯電話メーカーなども、パートナーシップを希望する相手です。ゆくゆくはトヨタやホンダなどの自動車メーカーとも提携し、電気自動車の製造を支えていきたいと思っています。
―最後に将来的な展望をお聞かせください。
我々はまだ、長い道のりの途中にいます。すべての車を電気自動車にするには相当なテクノロジーが必要です。いつか、リチウムイオン電池のスタンダードになりたい、と思っています。すべてのリチウムイオン電池に当社のテクノロジーが搭載されるようになれば、言うことはありません。まずは消費者向けデバイスを通して何十億という人たちにリーチし、それから多くの自動車に拡大していきたいですね。
過去に、リチウムイオンがニッケル水素に取って代わった際、バッテリーのテクノロジーが大きく変革しました。私は、我々の技術もまた現在のリチウムイオン電池を大きく変えるものだと思っています。10年以上の長い道のりになるかもしれませんが、私たちはそこを目指して進んでいきたいと思っています。
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