ビジネス領域のカスタマーサービスではバーチャルアシスタントが質問に答えてくれるケースも珍しくなくなってきた。このようなサービスを医療分野に持ち込もうとしたのがSenselyだ。症状を相談すれば、AIが適切な医療体制につないでくれる。CEOで共同創業者のAdam Odessky氏に話を聞いた。

新技術をヘルスケア領域に応用

―どうしてSenselyを立ち上げようと思ったのですか。

 私は大学でコンピュータサイエンスを専攻した後、ソフトウェア開発者としてオラクルやマイクロソフトで働いてきました。特に注力していたのが自動チャットなどの通信系サービスです。カスタマーサービスラインを作り、顧客とつなぐ役割ですね。基本的に人と人をつなげ、インタラクションを自動音声システムでプログラムするということをやっていました。

 同時に、私は常にヘルスケア分野への情熱を持っていました。家族が様々な持病を持っていたこともあり、私自身も含めて、誰もが何らかの形で患者になることはあると感じていました。ビジネスの世界に比べて遅れているヘルスケアシステムに最新のテクニックを導入すれば多くの人の助けになると思いました。これがSensely立ち上げのきっかけです。

Adam Odessky
Co-founder & CEO
イリノイ大学でコンピュータサイエンス専攻、2000年に卒業。2007年USFでMBA取得。オラクルなどを経て、2013年Sensely創業、CEOに就任。
 

―現在のヘルスケアシステムにはどのような課題があるのでしょうか。

 今日、患者は、たとえ民間保険に加入していても、具合が悪ければ誰かに電話をしておそらく数日は予約を入れるために待たなければならないでしょう。時には、問題を解決するために医師、看護師、レセプト担当者、専門家など、様々なプロセスをくぐりぬけないといけないこともあります。この領域に、カスタマーサービスで使ってきた最新の技術を導入したらどうかと考えたのです。

トリアージで症状チェック

―具体的にSenselyでは何ができるのでしょうか。

 Senselyはバーチャルアシスタントです。いくつかの機能があります。1つは症状チェック機能です。トリアージと呼んでいますが、保険加入者に質問をしていくことで、急患なのか、医師の予約でいいのか、セルフケアでいいのか、最適な誘導をして、ヘルスケアシステムを効率的にしています。

 患者はテキストチャットもしくは音声チャットどちらかの方法でこれを受けることができます。そしてわれわれは自然言語処理と音声認識を使い、患者が何を望んでいるのかを理解します。

 もう1つの機能は、ヘルスケアライブラリーです。チャットボットを通じて、この病気についてや、どれくらい症状が続くのかといったことを調べることができます。そして3つ目は、病気になっていない人向けのコンテンツです。痩せたいとか、食生活を改善したい、よく眠れるようになりたいなどの悩みにも応えることができます。

 最後に、糖尿病や心臓病、COPDなどの持病がある人向けのプログラムを提供しています。バーチャルアシスタントが体重や血圧を把握して、状態が改善しているか、悪化していないかを見守ります。悪化がみられれば、医師や看護師につなぐトリアージが発動します。ここでの目標は、管理をうまくできていないうちにどんどん悪くなってしまうことを防ぐことです。

―強みはどのような点にありますか。

 われわれのチャットボットは自然な感情表現と説明が可能です。チャットボットが扱う内容は時にセンシティブです。例えば、糖尿病や喘息などの健康リスクやお酒を飲むのか、タバコを吸うのかなどの個人的な質問をします。ここで私たちが発見したのはSenselyを利用したユーザーは医師などと電話越しに直接話すよりも3倍も正直に話してくれたということです。これはとても興味深い点だと考えます。

32言語に対応

―どのようなビジネスモデルですか。

 SaaSを基本としたビジネスモデルです。基本的には保険会社がターゲットですが、医療システムや他のプロバイダー、また製薬会社と取引することもあります。Senselyのアプリもありますが、保険会社のシステムの中にわれわれのサービスを組み込む形で提供しています。

―グローバルも含めた今後の展開をどう考えていますか。

 既に32言語に対応し、英国向けにはブリティッシュアクセントにするなどローカライズをしています。楽天と組んでおり、日本語も対応しています。長期的には、誰もが信頼できるAIのヘルスケアナビゲーターがついてくれていて、皆それを知っているというような世界を目指しています。



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