Image: Vadi Fuoco / Shutterstock
「現代のママ」向けのECブランドを買収し、グローバルに成長させるECアグリゲーターのRainforest Life社。2021年にシンガポールで創業した同社は、既にアジア各国の13社のブランドを買収し、主にアメリカ、ヨーロッパの消費者に向けて商品を販売している。同社が買収するブランドの選定は「利益率が高く、Amazonでのカスタマーレビュー数が多い『お母さん達が買う商品』を扱っている」という明確な特徴がある。創業1年超で年商(実績値)約3600万ドルに上るRainforest Lifeの共同創業者で、CFOのJason Tan氏に創業の経緯や事業の内容、会社の展望を聞いた。

Amazonの「レビュー」を重視して商品を買うママたちに注目

――御社はどんなサービスを展開しているのですか?

 Rainforest Lifeは、ECアグリゲーターです。ECアグリゲーターとは、Eコマースで成長をしているブランドを買収し、ハンズオンで経営することで、売上を伸長させるビジネスを指します。その中でも、Rainforest Lifeは、現代のお母さんたちが使いたくなる商品を販売しているブランドに特化しています。

 私たちのミッションは、規模の小さいブランドを成長させ、世界中のママが使うブランドに成長させることです。世界には、まだ知られていないけれども、良い商品を販売しているブランドがたくさんあります。当社の仕事は、そうしたブランドを選定し、グロースさせていくことにあります。

Jason Tan
Rainforest Life
Co-Founder & CFO
2002年、Monash UniversityでCommerceの学士号を取得後、CIMB社に就職。同社で戦略的投資のディレクターを務めた。インドネシアのデジタル金融サービスプラットフォームOVOの創業リーダーチームの一員として、組織の財務・資金調達部門を牽引するCFOを務める。フィンテックプラットフォームのFaveでCFOを務めた後、2021年にRainforest Lifeを共同創業し、CFOに就任。

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 当社は現在のところ、中国、シンガポール、日本、マレーシア、オーストラリアなどの計13のブランドを買収し、運営しています。これらのブランドが販売しているのは、キッチン用品や寝具、赤ちゃん用の商品などです。私たちの顧客の約90%がアメリカ・ヨーロッパに住んでいます。

 Rainforest Lifeの強みは、アジアのブランドに注力している点と、現代のママに向けたブランドを買収している点にあります。この2点は他のECアグリゲーターにない強みであり、当社が成長を続けている理由でもあります。

 Rainforest Lifeが最近買収したブランドに「NatureBond」があります。同社は赤ちゃん用の離乳食サポート器具などを開発するブランドです。

 同ブランドの商品であるシリコン製の赤ちゃんのおしゃぶりは日本でも販売されており、Amazonでも多くのレビューがつくなど人気です。NatureBondはアメリカ、ヨーロッパの顧客に向けても商品を販売していています。

 なぜ、当社がNatureBondのような現代のママが購入するプロダクトを販売しているブランドを買収するかというと、彼女たちが「レビュー」を購入の際の基準として重視しているからです。

 NatureBondのプロダクトには多くのレビューが残されていて、高評価のコメントもたくさんついています。ママたちは、他の属性よりも、よりレビューを軸にした購買をする傾向にあります。

 また、家庭消費のなかでは母親が実権を握っていることが多いという事実も、当社の戦略を支えています。

Image: NatureBond HP

アジアのブランドはポテンシャルが高い

――買収するブランドの選定基準は何ですか?

 当社が買収するのは、収益力があるブランドです。具体的には、15%以上の利益率を記録していて、Amazon上に多くのレビューがついているプロダクトを販売している企業になります。

 なぜレビュー数を選定基準の一つにしているかというと、プロダクトに対するレビューは、その商品の信頼性の高さを象徴し、実際に購入につながる確率が高いと言えるからです。

 また、当社がアジア発のブランドを買収していることにも理由があります。NatureBondのように、アジア発のブランドは欧米のママに人気があるからです。私の試算では、世界に約200万いるとされるAmazonマーケットプレイスを利用するサードパーティーの販売業者のうち、約30~40%がアジアからのものです。アジアのブランドはポテンシャルが高く、今後も成長を続けていくと考えられます。

――御社を創業した経緯を教えてください。

 私はRainforest Lifeを創業する前は、フィンテックのスタートアップでCFOとして経営に参画していました。スタートアップの数字を日々確認している中で、Eコマースは巨大な市場だと何度も気づかされたのです。市場に多額の資金が流入するだけでなく、ターゲットになる消費者の数も莫大で、多くのチャンスがそこにある、と確信しました。

――御社の収益モデルを教えてください。

 当社はブランドを買収し、Amazonを通じて消費者に販売するので、他の小売業者と同じように、マージンで稼いでいます。多くの商品の販売はAmazon FBAモデルと言われるものです。利益率はとても高く、約18~19%程度です。年間収益(実績値)は約3600万ドルを推移しています。

――御社はこれまで約1億ドルの資金調達に成功しています。調達した資金の使い道を教えてください。

 調達資金の約80~90%は、新たなブランドの買収に充てます。日本でも良いブランドがあれば、ぜひ買収したいと考えています。

――Monk’s Hill VenturesやJanuary CapitalなどAPACの著名なVCが御社に出資しています。こうしたVCを惹きつけられた要因は何だと考えていますか?

 2点あると考えています。1点目に、当社が買収するブランドがすべて、利益率が高いということです。もし、利益を出せないブランドであれば、買収はしません。Rainforest Lifeには、利益を出せるブランドの評価基準を算出する体制が整っています。

 2点目に、当社の経営陣はスタートアップの運営に経験豊富な人材が集まっていることが挙げられます。私も、長年スタートアップを経営してきましたし、共同創業者でCEOのJJ Chaiも、AirbnbやCarousellといった有名スタートアップでのビジネス戦略の経験があります。

 つまり、実行力に長けた人材を抱えていることから、投資家は当社に対する投資の計算がしやすいという側面があったのでしょう。

 Eコマースは年々拡大していて、特にコロナ禍以降はロックダウンや各国政府による住民への現金支給などもあり飛躍的に消費額が増えました。世界経済のボラティリティは高いですが、Rainforest Lifeは利益率を一定に保ちながら成長を続けることができています。この確実性が、当社が投資家たちを惹きつけることができた要因だと考えています。

Image: Rainforest Life HP

日本市場でのさらなる展開、連携を目指す

――既に日本市場にも展開していますが、今後、日系大企業とパートナーシップを構築する可能性はありますか?

 日本の事業会社からの投資はいつでもオープンにしています。私が過去に経営していたスタートアップでも、日本企業からの投資を受けていたことがあるのですが、彼らの特徴は、安定した利益を見込める企業体制になっているかどうかだと分析しています。そうした点においては、当社はぴったりです。

 具体的な業界としては、ECプラットフォームを手掛けているIT企業とECのための倉庫を有している物流企業が挙げられるかと思います。また、日本のブランドもさらに買収していきたいと考えています。

 Eコマースにおいては、特に物流網の構築がとても重要です。私たちはベトナム、中国、インドなどアジア諸国の多くのSKU(Stock Keeping Unit、受発注や在庫管理の最小の管理単位)数を抱えるブランドをアメリカやヨーロッパ諸国で販売しているので、各国で優れたパートナーと契約を結んでいます。日本市場により深く浸透していくためにも、日本での強固なサプライチェーンの構築は不可欠だと言えるでしょう。

――最後に、御社の長期的な目標を教えてください。

 今後も、現代のママに向けた良いプロダクトを販売しているブランドを世界中に広げていきたいです。会社としては、ブランドを買収するなどして規模を拡大しつつ、利益率を維持していきたいと考えています。

 Rainforest Lifeの将来には上場や売却などさまざまなゴールがありますが、現状のフォーカスとしては、まずブランドを成長させることに尽きます。今期中の目標である売上高5000万ドルを超え、向こう2年間以内に、同2億ドルの突破を目指しています。

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