モバイル時代を見据えた、バッテリーの高性能化ソリューション
――まずはQnovo設立の経緯を教えてもらえますか?
私はスタンフォード大学で電気工学と応用物理学を学び、数年間教職に就いた後、光学や電気通信、レンズセンサーなどの業界で働きました。2010年頃になると、世の中の主流がラップトップからモバイルへと移行していました。その時、長時間駆動可能なバッテリーの需要が高まっていることに着目したのです。
当時、バッテリーはアジア、特に中国を拠点とした競合が多く、コスト面で競争力をつけることが課題でした。私は「高度な計算を使い、電池の性能を向上させられないか」と考えました。このインスピレーションがQnovoを立ち上げたきっかけです。
――御社ではどのようなサービスを提供しているのですか?
当社では、スマートフォンなどのデバイスや電気自動車向けに高性能かつ長寿命バッテリー管理ソフトウェアを提供しています。
5GスマートフォンはLTEより最大50%以上の電力が必要とされ、長時間使用可能なバッテリーの需要は高まる一方です。当社では高精度な管理ソフトによりバッテリーの急速充電、容量増大、長寿命化に加え、事故につながる危険性のあるバッテリーを予測的に検知することで安全性を実現しています。
――メインターゲットはスマートフォンと電気自動車ということでしょうか?
そうですね。創業当初はまず、携帯デバイスに注力しました。実は最初の顧客はソニーでした。2017年から電気自動車へのソリューションを拡大しました。今はドイツの主要な自動車メーカーや、韓国のメーカー、そして日本のホンダとも一緒に仕事をしています。ぜひホンダのプラットフォームにもソリューションを導入したいと考えています。
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――競合はいますか?また御社ならではの強みは何でしょうか?
数年前から、業界では競争が激化しています。しかし、私たちは化学とソフトウェアを組み合わせたソリューションを提供しており、この点で私たちは業界をリードしています。スマートフォンでも電気自動車でも、これだけのボリュームで搭載されている技術は、他にないでしょう。また技術についてもこれまでに38件もの特許を取得しています。
――基本的にBtoBビジネスということですよね。収益モデルを教えてください。
当社は完全なBtoBです。ソフトウェアをライセンス販売し、それを携帯電話会社などがデバイス本体に組み込んでいます。当社の製品とは知らずに使用している消費者も多いでしょう。
ソニーとも連携。日本企業との相性が良い
――日本でのビジネスはどんな進捗でしょうか。
日本企業とは縁が深く、日本を訪れた回数は50回以上になります。特にソニーには当初から投資も含め、お世話になっています。品質を求める日本の体質は、パフォーマンス・寿命・急速充電という高機能バッテリーを目指す我々のソリューションと合致しているようですね。
――今後、日本でのビジネスを拡大する計画はありますか?
これからは電気自動車の分野を拡大していくことになるでしょう。先ほども言いましたが、日本の自動車メーカーとも協力しています。クリーンなエネルギーを積極的に取り入れる日本企業とは、相性がいいようです。最初は敷居が高くても、一度理解し合えれば堅固な関係を構築できるため、日本の企業は信頼できるパートナーです。
今は新型コロナウイルスの影響で実際に行き来できないため、オンラインでしか会うことができないのが歯がゆいですが、今後も日本の顧客とは良好な関係を築いていきたいと思います。
※記事を一部修正しました。(2021/1/8)