Image: stoatphoto / Shutterstock
ブランドやプロダクトラインのアイデアを持ち、オンラインでビジネスをしたいと願うクリエイターのためのプラットフォーム「Pietra」。通常のECサイトとは違い、クリエイターは自宅にいながらにして、世界のトップベンダーやサプライヤーに製品開発を依頼したり、倉庫やフルフィルメントの提供を受けたり、また自分のウェブサイトを作成したりできる。これまで大資本に限られていたブランド創造の夢を、たった一人の人間でもできる未来を可能にするものだ。Pietra創業者のRonak Trivedi氏に、クリエイターの成功を加速させるその仕組みと戦略について話を聞いた。

Uberのプロセスにならったプラットフォーム構築方法

 Trivedi氏はMicrosoftやUberで勤務したあと、2019年にPietraを創業する。テクノロジー系スタートアップが起業しようと思えば、すぐに必要な開発人材や素材、資金を調達できる環境が整っている一方、クリエイターが自分で製品をつくろうと思った場合、サプライヤーの確保や流通の構築などに多くの時間とコストがかかってしまうことに気が付いたからだ。

「たとえば、日本製デニムを使ってブランドを立ち上げたい人がいた場合、輸入輸出の方法、日本への行き方、倉庫の設置など仕組みを構築するだけで、何千、何万ドルという費用がかかってしまいます。そこで私たちは、クリエイティブな人たちにも、テクノロジーの人たちと同じツールやインフラを提供できないかと考えました」と、Trivedi氏はクリエイターのためのインフラを作った背景を述べた。

Ronak Trivedi
Pietra
Co-Founder & Chief Executive Officer
Microsoftでプログラムマネージャー、Uberでシニアプロダクト担当を経て、2019年に、アパレルや香水、ジュエリー、スキンケア製品などクリエイターと、サプライヤー、顧客をつなぐためのプラットフォーム「Pietra」を創業した。現在、従業員は12名、ニューヨークに拠点を置く。

 これまでの同氏のキャリアと異なる分野の創業に思えるが、同じテクノロジー分野であることや、世界中でサプライヤーを見つけるプロセスなどのノウハウは前職から学んだという。

「Uberは世界中で優秀なドライバーを見つけなければなりません。一緒に働きたい人を探し、採用し、訓練を重ねます。そして合格した人だけがUberの一員となれるのです。その経験とプロセスが、サプライヤーやメーカーを探すのに非常に役立っています」(Trivedi氏)

製品の企画から販売、出荷までノンストップで提供

 Pietraでは、アパレルや香水、キャンドル、お茶、コーヒー、お菓子、ジュエリー、スキンケア製品など、さまざまなサプライヤーと提携して製作が可能だ。同社がプラットフォームを構築するうえで、特に注力しているのは3点。1つ目は同社が世界中で築いたサプライヤーやメーカーとのネットワーク力。2つ目は、クリエイターの商品を保管し、写真の撮影や出荷をするためのフルフィルメントセンター。3つ目は、クリエイターが製品を販売するシンプルなECサイト制作や、既存サイトと接続するツールだ。

 最近、開発した特徴的なテクノロジーとして、クリエイターがどんな製品を作ったらいいか容易にするレコメンド機能がある。これは、クリエイターの関心事や、商品の閲覧者、売った相手などあらゆるデータソースを分析して、デザインやアイデアの発想を与えてくれる。また、スムーズな起業を手助けするために、プラットフォームが過去に積んだ経験値から、初心者に必要なステップバイステップを教えてくれるガイド機能も備えた。

 AlibabaやShopifyのようなECサイトと違い、Pietraはオンライン上で製品の企画から販売、出荷まで、ビジネスに必要なあらゆる機能を備えている。前者が自宅から倉庫まで荷物運ぶ手間がかかる一方、Pietraはそうした中間の負荷がかからないのが特徴だ。

Image: Pietra HP

 顧客であるクリエイターは現在4万人いて、中には100万ドル稼ぐ人もいるという。彼らは1人か、友人と2人でビジネスを展開しているケースが多く、コンピューターひとつで有名な小売店や海外から引き合いをもらうまで成長したオーナーもいる。またサプライヤー側も、大手メーカーに限らず、中小の工場でも製造が年内いっぱい埋まるほど、成功しているケースもあるという。

 Trivedi氏は、「誰もが何百万ドルも稼げるわけではありませんが、大規模なビジネスにしなくても、有意義な人生を築き、副業から副収入を得ている人はたくさんいます」と述べ、大量生産にこだわらずとも個人がビジネスで成功する方法は十分あると語った。

個人がベストセラー商品を生む未来を創りたい

 Pietraは2021年6月、シリーズAラウンドで1500万ドルの資金を得た。参加したのは、VCのアンドリーセン・ホロウィッツやAbstract Venturesなどだ。調達資金は、日本をはじめグローバル展開に必要なインフラ整備に重点を置く考え。Trivedi氏は、Pietraに興味がある日本のサプライヤーがいたら、ぜひウェブサイトから登録してほしいとアピールした。

 またパンデミックでeコマースが隆盛したことによって、EC市場におけるクリエイターブランドの価値も高まっているという。クリエイターにより多くの選択肢を与え、サプライヤーには世界中に製品を供給できるチャネルを提供できるようにするため、クリエイターとサプライヤー両方の発掘を進めていく。

 今後1年以内にクリエイターを5〜10万人に増やしていき、ソフトウェアとオペレーションの両面から効率化を図っていく方針だ。ユーザーが10倍早くビジネスを始められるように、10倍早く、10倍安く、10倍高い品質のサービス向上を目標とする。

 Trivedi氏に長期的なビジョンを聞くと、将来的には大規模なオフィスやコンシューマーブランドは存在しなくなり、一人の人間がベストセラー商品やブランドを構築できる未来を実現したいとして、次のように述べた。

「オーナーはPietraでウェブサイトを維持すれば、プロモーションやマーケティング、クリエイティブな活動をするだけでよくなります。すべてがオンラインで完結するようになると思います。Pietraは、クリエイターたちが世界で最も早く、最も簡単で、最も安い方法でスタートし、ビジネスを運営できる場所となるでしょう」と、個人が何かをオンラインで売りたいと思ったときのデフォルトサービスでありたいとした。



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