ビジネスでの取引には、常に書類のやりとりが伴う。提案書や契約書の作成、交渉、契約締結などに伴う事務作業は、煩雑で手間がかかる割に付加価値を生みづらい。PandaDocは、こうした営業に伴う「作業」を簡易化、合理化するSaaSソリューションとして、英語圏で高いユーザーを伸ばしている。コロナ禍で電子署名機能が急速に普及し、追加で3000万ドルの資金調達にも成功した。今回はCEOのMikita Mikado氏に話を聞いた。

ベラルーシで起業。海外取引で苦労したことがきっかけ

――まずはPandaDoc設立の経緯を教えてもらえますか?

 私たちは、取引の簡易化と合理化をミッションとしています。

Mikita Mikado
PandaDoc
CEO
ベラルーシ共和国出身。Belarusian State University of Informatics and Radioelectronicsにてコンピューターサイエンスの学士号取得。スタートアップのCEOを務めながら、University of Hawaii at Manoaにて、コンピューターサイエンス、英語および日本語を学ぶ。2010年にベラルーシで、PandaDocの前身となるQuote Rollerを共同で設立。2014年に米国でPandaDocを共同で設立しCEOに就任。
 もともと私はベラルーシで起業したのですが、顧客がアメリカ、イギリスやオーストラリアの企業だったため、対面で書類をやり取りできませんでした。遠隔地にいる顧客との、書類のやりとりや、条件の交渉は容易ではありません。書類は郵送しなければなりませんし、郵送しても顧客が書類を見ているのかわからず、とにかく時間がかかりました。非常に手間と時間がかかるプロセスの割に、そのプロセス自体に価値はありません。

 約10年前から電子署名ツールや、テンプレートを作成しライブラリーを構築できる製品など、プロセスの一部に対応しているソリューションはありました。しかし、プロセスやワークフロー全体を一元管理および処理できるサービスはなかったのです。

 最初は、自分の会社で使うために、ソリューションを作ったのですが、評判になって様々な企業で使われ始めました。そこで、2010年にPandaDocの前身である、Quote Rollerという会社をベラルーシで設立しました。

 そして、多くの企業が同じ問題を抱えており、大きな市場があることがわかったので、資金を調達し、2014年にシリコンバレーでPandaDocを設立しました。7年前のことですが、当社は、シリコンバレーの投資家だけでなく、ヨーロッパやイスラエルなど、世界中の投資家から、リモートで資金を調達しました。

営業関連の書類作成、共有、電子署名、保管などを一元管理

――サービスの概要と強みを教えてもらえますか。

 PandaDocは、提案書、見積書や契約書など書類の作成、書類の共有、電子署名、そして保管までを1つのプラットフォーム内で、オールインワンで行えるSaaSです。


 営業チームは、提案書などの書類を作成し、送付した後に誰が見ているのかを把握し、署名をもらい、案件をクローズし保管するという一連のワークフローがあります。このワークフローに必要な全てが備わっています。

 CRMなどとの連携も可能ですし、サービス業、製造業や建設業など、どの業界でも適用できます。さらに、2020年3月に、ワークフローをインタラクティブにする、新しい機能を加え、ユーザードリブンで改善を続けています。

 私たちのコアバリューは、提案書や契約書作成の自動化、文書の生成と配布および交渉などの、ワークフロー内にある「作業」をサポートすることなので、電子署名機能は無料で提供しています。

PandaDocのダッシュボード画面。書類の送信相手の閲覧状況も確認できる。

――どういった規模の企業をターゲットにしていますか?

 大企業から小規模な企業まで、顧客企業の規模は様々です。現在は、英語圏をターゲットに展開しています。日本語版はありませんが、PandaDocの操作は非常に簡単なので、英語版を使っている日本企業は複数います。

――電子署名機能を無料で使えることで、クチコミで利用が広がっているようですね。

 そうですね。有料サービスを利用している顧客は、約2万社ですが、無料サービスは10万社以上に使われています。既存ユーザーにPandaDocを使っていただくことで、新しいユーザーが増えていると言えます。

コロナ禍で電子署名機能が急速に普及、3000万ドルの資金調達にも成功

――今年8月にシリーズBラウンドで資金調達に成功しました。新型コロナウイルスの影響はあったのでしょうか。

 資金調達を始めたのが4月だったので、経済的な危機感が最も高まっていた時期に重なり、最初はかなり苦労しました。

 しかし、リモートワークを強いられている人々を支援するために、電子署名機能を無料で提供し始めたことで良い流れが生まれました。電子署名機能は、驚くほどの勢いで普及し、無料の機能を使い始めたユーザーが、有料のサービスも使うようになり、資金調達も順調に進んだのです。

無料で電子署名機能を提供。コロナ禍で急速に普及した。

――今後、日本など海外での展開も視野に入れていますか?

 海外での事業拡大は視野にありますが、まだ積極的に取り組んではいません。ただし、米国内だけでなく、英語圏で事業を拡大していますし、英語版は誰でも利用可能です。また、グローバル展開している企業もPandaDocを使っているため、電子署名機能などは、既にグローバルに使われていると言えます。

 具体的な予定はありませんが、日本市場に参入する時は、現地に代理店あるいはパートナーを持つ必要があると考えています。



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