On(オンデマンド)でScale(スケーラブル)なOnScaleのCAE(Computer Aided Engineering)ソフトウェアは、クラウド上で稼働し、従来のエンジニアリングシミュレーションソフトウェアより、低コストでハイパフォーマンスを実現している。エンジニア間のコラボレーションを加速させるツールとしても有効だ。今回はCEOのIan Campbell氏に話を聞いた。

Ian Campbell
OnScale
CEO
エンジニアであり、起業家。2005年、Middle Tennessee State Universityにて学士(機械工学)、2008年、Georgia Institute of Technologyにて修士号(航空宇宙工学)とMBAを取得。10代よりAutoCADやCOMSOLなどのエンジニアリングツールを使い学び、エンジニアとしてNASAやNOAAなどのプロジェクトに係る。ITを活用したビジネスのSenior Consultantや、投資会社でCEOを務めた経験もある。2015年には、最先端の感圧タッチ技術でセンシング業界を革新するNextInputを創業、FounderとしてCEOとCSOを歴任。2017年にOnScaleのCEOに就任。

1,000コアマシンもその場で用意、クラウドで使うスーパーコンピュータ

―まずOnScale設立の経緯を教えてください。

 OnScaleを設立する前に、大学院時代の仲間と二人でIoTセンサー技術を開発し起業しました。会社は成功しましたが、製品の開発過程において、試作品の設計と最適化をシミュレーションし、事前検討を行うためのエンジニアリングソフトウェアツールに数10万ドルを費やした経験があります。このツールを使うことで、最適な試作品を最初から作ることができコスト削減になる、ということでしたが、実際には、数100万ドルかけて作った“最適化”されたはずの試作品は機能しないものでした。

 こうした問題を解決するためにOnScaleを設立しました。CAEソフトウェアをクラウド上で動かすことで既存の問題を解決しています。

―OnScaleのソリューションについて教えてください。

 既存のエンジニアリングシミュレーションソフトウェアにおける3つの課題を解決しています。

 1つ目の課題は、価格です。機能をフル装備した老舗大手企業のCAEソフトウェアの値段は1ユニット約10万ドルしますが、当社のCAEプラットフォームの使用料金は、「コア時間」に基づいており、1コア時間の最低価格は8ドルです。

 例えば、エンジニアリングチーム向けのサブスクリプション版では、1,000コアマシンで1時間シミュレーションをレンダリングした場合、1,000コア時間分の料金のみユーザに請求します。チーム向けに加え、エンジニア1名が1ヶ月10コア時間まで無料で利用できる無料のアカウントもご用意しています。
 2つ目の課題は、パフォーマンスです。通常のCAEソフトはライセンス単位で購入し、1ライセンス、1ローカルマシン、1エンジニアです。そのため、ローカルマシンのCPUのコア数にパフォーマンスが縛られます。例えば、ローカルマシンとして使える「ハイパフォーマンスコンピュータ」のコア数は36コアほどです。当社では、AWS上で100,000CPUコアを動かした実績があります。大規模なシミュレーションを行うために1,000コアマシンが必要だと言われたら、その場で1,000コアマシンを作ることもでき、パフォーマンスの課題を解決します。

 最後の課題は、コラボレーションです。従来のCAEソフトウェアを使っているエンジニアは、ローカルマシンで開発を進めるため、例えば開発時に得られるエンジニアリングデータの共有や交換は非常に困難で、データインサイトを得ることもできません。OnScaleのチーム向けサブスクリプション版は、メンバー間でデータを共有することが可能です。

 また、チーム内のエンジニアが割り振られたコア時間をどのように活用し、成果を上げているかなども把握できるため、エンジニアのパフォーマンス管理ツールとしても機能します。

 OnScaleは、社名の通り、「オンデマンド」で「スケーラブル」なプラットフォームです。

長期的にはCAE市場以外でもサービスを拡充したい

―中長期ビジョンを聞かせてください。

 中期的な目標は、CAEソフトウェア市場の常識を打ち破ることです。私が把握している範囲で、エンジニアリングソフトウェアはライセンスベースで販売されています。8コアマシンのライセンス料を基準に、16コアは料金が変わる、CPUのコア数に応じた価格設定モデルが多いのですが、現代のクラウドコンピューティングにおいてこのビジネスモデルは無意味です。

 長期的な目標は、誰でも製品やサービスを構築できる一般的なエンジニアリングシミュレーションプラットフォームを築くことです。CAE市場は10億ドル規模で、非常に重要な市場ですが、クラウドシミュレーション機能を活用できる市場は他にもたくさんあります。例えば、負荷製造(Additive Manufacturing)やジェネレーティブデザイン(Generative Design)など、高度で複雑なシミュレーションを使う可能性がある分野で最適なプラットフォームになることを目指します。

―すでに日本オフィスもあります。日本進出の展望についてお聞かせください。

 日本は、米国の次に重要な市場です。東京にオフィスを開設したばかりで、社員が常駐し、日本チームを拡大させるために、求人も始めています。

 OnScaleのWebサイトに日本語ページも作りましたし、製品の日本語版や、トレーニングマテリアルなどの日本語訳も進めており、日本向けのローカライゼーションが現在進行中です。

 日本は先端技術開発に非常にフォーカスしています。5Gネットワークは、アメリカより日本が先に実用化すると思いますし、自動運転車とそれ用のシステムやセンサー、航空宇宙工学アプリケーション、IoTデバイスなど、日本のエンジニアが得意としている最先端技術が沢山あります。

 シリコンバレーにあるIntelやGoogleなどの大手企業のほとんどが当社の顧客です。最先端技術開発におけるエンジニアリングの課題を解決できる唯一のCAEプラットフォームとして、日本でも大手企業と提携が進んでいますので、それをさらに拡大していきたいと考えています。



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