全てのディスプレイに量子ドットが採用される日も遠くない
――まず御社のテクノロジーについて教えてください。
量子ドットと呼ばれる物質で、高い明るさと高精度な色彩を実現できることからディスプレイ等に応用されています。
2013年に技術を公開し、商業用としては初めてKindle Fireタブレット向けに開発しました。そして2015年にSamsungが自社のTV製品に技術を採用したことから一気に普及しました。
2020年はタブレット、ノートパソコン、モニター、ディスプレイなど、120以上の異なるモデルの製品に量子ドット技術が搭載される予定で、今年だけで1000万台が販売されています。
――御社の技術は市場で圧倒的なシェアを持っていると言えるのでしょうか。
量子ドット技術は、全てのディスプレイに採用されているわけではなく、大型ディスプレイの5%程度です。しかし、その割合は非常に大きくなっています。そして量子ドット技術を採用した大型ディスプレイの分野で、当社は圧倒的なシェアを持っています。
――量子ドットは今後どのような分野で応用が期待できますか。
携帯の画面やパソコンのモニターをはじめ、例えば、農業、医療、バイオ、ソーラーパネル業界等でも応用可能です。高精細な光が要求される現場では必須の技術です。例えば人体内に入る造影剤のようなものにチップやLED技術は使用できませんから。
また、量子ドット技術を使って皮膚の再生を促す研究なども存在します。透明なソーラーパネルを開発し、窓ガラスに応用するプロジェクトもあります。エンドユーザーは多様です。
アジアでの存在感を高めるため、日本企業は必須のパートナー
――すでに日本企業とのパートナーシップを締結しているそうですね。
日本企業とのパートナーシップは非常に重要です。なぜなら、量子ドット技術をディスプレイで使用するには、当社の材料をディスプレイに組み込む作業をしなければならないからです。その方法としては、例えば量子ドットを使ってインクを作り、製造ラインでガラスのディスプレイシートに塗布します。しかし、私たちはインクの会社ではありません。そこで、当社の主要なパートナーの1つである日本のDICが私たちの材料を使ってインクを作ってくれるのです。
Image: Nanosys
その他にも住友化学、昭和電工マテリアルズ、富士フイルム、昭栄化学工業、長瀬産業ともパートナーシップを締結しています。
私たちはアジアでもっと自社製品の展開を行いたいと思っているので、日本企業とのビジネスが欠かせないと考えています。
――今後の展望は何でしょうか。
私たちのビジネスの95%がアメリカ国外にサプライチェーンを置く企業との取引で成り立っています。また、アジアの中でも中国は大きな成長が見込める市場です。ですから、ゆくゆくは、拠点にアジアに移す予定です。現在2021年の戦略を立てているのですが、日本でのオフィス設置や人員配置も含まれています。
現在拠点はアメリカで社員は85人程度いますが、営業は3〜4人しかいません。従って、人材も増やさなくてはいけません。技術は幅広く応用できるので、コネクションを広げ、顧客を増やしていくことが直近の目標です。