MākuSafe(メイクユーセーフ)は労働者が装着するウェアラブルデバイスと、デバイスが収集したデータを事故の予防や生産性向上につなげるプラットフォームを開発している。米国内でも製造業従事者の割合が高いアイオワ州発スタートアップだ。本年中に製品ローンチを目指す同社には、北米のみならず、ヨーロッパ、南米や日本を含めるアジア地域からも注目が集まっている。今回はCo-Founder & CEOのGabriel Glynn氏に話を聞いた。

Gabriel Glynn
MākuSafe
CEO & Co-Founder
シリアルアントレプレナーとして過去13年間で複数のスタートアップのExitに成功し、Iowa Small Business AwardのEntrepreneur of the Yearなど、数々の賞を受賞。2015年に自身のソフトウェア会社「Slash/Web Studio」をExitした後、2016年にMākuSafeを共同で設立し、CEOに就任。2017年には、製造業界の新しいテクノロジー、アイデアやアプローチを取り上げる「Advanced Manufacturing Podcast (AMP)」をiTunesで立ち上げ、ホストとして製造業界の世界的リーダーたちにインタビューを行った。

常時リアルタイムトラッキング。事故検知時には自動録音と報告書作成

―まずMākuSafeの製品とサービスについて教えてください。

 当社は製造工場などで生産工程や現場作業に直接従事する労働者の安全衛生管理、事故の予防および生産性の向上を目的としたハードウェアとプラットフォームを提供しています。

 ハードウェアは、従業員一人ひとりがつけるウェアラブルデバイスと、デバイスからデータを集めクラウドと通信するベースステーションがあります。

 クラウドプラットフォーム「MākuSmart」は、AIを活用し集めたデータを分析します。可視化されたデータは、安全管理、予防などに活用可能ですし、保険会社にとって有効な、設備の故障予測にも活用することができます。

―ウェアラブルデバイスの機能を少し詳しく教えてください。

 ウェアラブルデバイスは大きく分けて4種類のトラッキングが可能です。環境条件、労働者の挙動と現在地、そして従業員の音声を自動録音することができます。

 環境条件のトラッキングは、音、温度、湿度、空気の質、照明など、労働者が接する様々な種類の情報が対象です。

 労働者の挙動のトラッキングには、加速度計を使用しています。現行モデルは、足元を滑らす、転倒、落下(以下「Slip, Trip and Fall」)の三つの動きに対応しています。そして現在、人間工学に基づき、押す、引っ張るなど、リスクがある動作を検知できるよう、いくつかの企業と協力し取り組んでいます。

 音声を録音する機能は、他社との差別化にもなっている機能です。例えば、濡れた床で滑った従業員がいたとします。デバイスは、その「ニアミス」を検知し自動的に録音を開始します。当該従業員は誰で、施設内のどこで起きたのか、という情報を取得し、自然言語処理を使って録音を文字に起こし、自動的に報告書を作成します。

天気予報のように危険を「予報」する

―データ分析にAIを活用しているのですね。

 私の出身地であるアイオワ州内には6,000以上の製造業者がいます。私の父もその中の1社で安全管理者として働いていました。父を含め、製造業の安全管理者はデータサイエンティストではありません。安全管理者の最も重要な任務は、労働者の安全と健康を守ることですから、それに集中できるよう、データ分析や可視化を含め、必要なデータの取得、「Slip, Trip and Fall」の検知など、全てコンピューターが担います。

 私たちが目指しているのは、AIを活用して天気予報のように危険を「予報」することです。例えば、以前は竜巻が到着したタイミングで警報が出ました。今は竜巻が発生する数日前から予報できます。

 職場で起きる事故の最大の原因は疲労です。そして、労働環境が疲労の最大の要因です。環境条件と問題発生時の状況をトラッキングし、データとして蓄積する。蓄積データが増え、それを分析すれば何かしらのパターンを発見することができ、「予報」が可能になると考えています。

―GlynnさんのバックグラウンドがMākuSafe設立に関わっているようですね。

 そうですね。父と昼食を共にしていた時に、監査に来ていた労働安全衛生局(OSHA)の担当者と話をする機会を得ました。MākuSafeは、この時の経験からインスピレーションを得ています。

 当初、私たちは二つの問題を解決したいと考えていました。まず一つ目の問題は、OSHAによる監査は年に一度で、1日だけ安全を確認したら残りの364日も同じだと想定して終わっていることです。これを解決するためには、職場環境の常時監視が必要だと考えました。

 そして、もう一つは、同じ施設内でも、場所が少しでも違えば状況も環境も違うため、個々の労働者を見守る必要があるということです。そこで、労働者が直接つけるウェアラブルデバイスにすることを目指しました。

本年ローンチ予定。最初の案件から8,000ユニットを導入

―中長期の目標を教えてください。

 本年後半に製造工場内での導入が決まっています。これが最初の製品導入で、約8,000ユニット規模です。現在は製品ローンチとこの大規模案件にフォーカスしています。

 長期的には、様々な業種を対象に事業を拡大したいと考えています。例えば、建設、石油やガス、鉱業、林業などでも当社製品は有効ですし、関心を示している潜在顧客が多くいます。また、事業の拡大に合わせてパートナーも探すつもりです。

―日本など、海外展開も視野にありますか。

 もちろんです。ドイツ、フランス、コロンビア、ブラジル、クウェート、日本と中国の方々からお問い合わせいただいています。しかし、まだ具体的な話はなく、当面は北米にフォーカスします。

 海外展開する場合、ダッシュボードの翻訳が重要ですし、文化的な違いに基づく考え方の違いにも配慮が必要です。例えば、安全に対する考え方や技術も、ヨーロッパと米国では違います。海外展開は、文化的にも技術的にも学ぶことが多くあるでしょう。



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