【Lightspeed】米国屈指のVCが語る、危機下における5つのインサイト

【Lightspeed】米国屈指のVCが語る、危機下における5つのインサイト

シリコンバレーコロナショック
2020/07/31
米国屈指のアーリーステージのベンチャーキャピタルとして、名を馳せるLightspeed Venture Partners。米国シリコンバレーをはじめ、イスラエル・インド・中国などでグローバルにスタートアップ投資を行っている。シリコンバレーの中枢で、ITバブルやリーマンショックを乗り越えてきた歴戦の投資家は、今回のコロナ危機をどう見るのか。Lightspeed創業者でパートナーのBarry Eggers氏にインタビューした。

スタートアップの多くがサバイバルモードに突入

―コロナ禍、スタートアップは厳しい現実に直面しています。Lightspeedでは投資先のスタートアップに対して、どんなコミュニケーションやサポートをしていますか。

 今は、スタートアップのCEOや創業者にとって非常にストレスが大きい状況です。将来の展望や資金繰りなど、多くのことが不確実です。約4ヶ月前は、市場は非常に「泡立って(frothy)」いましたが、今は多くの企業がサバイバルモードです。

 私は今、CEOや創業者の相談に乗ることに多くの時間を費やしています。不確実性の高い環境下における売上予測と、避けては通れないコスト削減計画の立案を手助けしています。

 社員全員がリモートワークになった分散型組織におけるマネジメント、社員全員が理解するように、メッセージをシンプルに明確に伝え続けるオーバーコミュニケーションの方法など、CEOや創業者は、強いリーダーシップを発揮しなければならない状況に置かれています。また誰が本当のリーダーで、誰がリーダーになれていないかが分かってしまう状況でもあります。

―この局面でコスト削減は避けられないとのことでしたが、そういった面でもスタートアップをサポートしていますか。

 そうですね。当社にはコスト削減や、人員削減を支援する専門のチームがおり、個別にサポートしています。しかし重大な健康危機に直面しているコロナ禍の状況において、人員削減ではできる限り相手を尊重することが重要です。  

Barry Eggers
Lightspeed Venture Partners
Founder & Partner
1985年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)経営経済学学士取得。1991年スタンフォード大学経営大学院卒業。1991年にCisco Systems入社しDirector Business Developmentを務める。1997年にLightspeed Venture Partnersを創業。カリフォルニア ベイエリア出身。

―Barryさんは投資家として、過去の様々な危機を経験しています。コロナ危機をどうみていますか。

 私は、2000年以降のドットコムバブル崩壊も、2009年の金融危機も経験しました。

 前回皆さんにお会いした時に、いずれ景気後退が起きるだろうと私は言いました。まさか、新型コロナウイルスによって実現するとは、誰も予測しなかったと思いますが、金融危機以降、10年間「Bull Run(強気相場)」が続いていたので、景気後退は起こりえる時期でした。

 コロナ危機により、あらゆるスタートアップは経営を見直し、社内業務を考え直す必要があります。スタートアップは、限られた少ないリソースを最大限活用し、大きな成長につなげる方法を見つけ出さなくてはいけません。

―一方、コロナ禍でコラボレーションツールやオンライン教育などの分野では成長が続いています。

 そうですね。電話より効果的にコミュニケーションできる、リモートコラボレーションツールは確実に成長していますね。

 コロナ危機は長期戦です。リモートコラボレーションツール以外にも、注目が集まる分野はありますし、そうした分野で投資が進むことを期待しています。

 現在、ヘルスケアや創薬には多くの資金が投入されていますし、ヘルスケア関連では、すでに成功を収めているケースもあります。社会課題への投資も行われ、地球温暖化や気候変動などの問題がより注目を集め、ホームレス問題や教育にも光が当たると思います。

 今のような危機的状況に陥ると、優先事項を見直さねばなりません。世界的に注目されてきた社会課題にも、私たちが長年放置してきたような社会課題にも投資が進むことを期待しています。

VCのパフォーマンスは過去3年より高くなる

―不透明な状況になると日本企業はリスクを取らず、投資を控えがちです。こういう危機的状況にどう動くべきか、アドバイスをもらえますか。

 現在、皆がサバイバルモードになり、投資や生活におけるリスクを軽減したくなります。しかし、公開市場が下落しているタイミングは、投資に参入しやすい時期でもあります。公開市場が下落すると、3〜6ヶ月の遅れを伴いながら非公開市場も追随します。

 VCへの影響を誰もが心配していますが、競争は減り、おそらく取引価格は下がり、実際は新しい投資を行えるよい環境に移行すると思います。VCのパフォーマンスも過去3年より高くなると思います。

 リスクを取り積極的になれる投資家にとっては、エキサイティングな時期です。新しいスタートアップへの投資だけではなく、すでに売上が立っているスタートアップの買収が、3ヶ月前よりも低価格で実現できると思います。

―現在のユニコーンの多くはリーマンショックが起きた時期に創業されています。今回のコロナショックでも、将来のユニコーンとなる企業は生まれるのでしょうか。

 社会環境が混乱し、過去10年間でユニコーンに成長した企業は、もはやユニコーンではいられなくなると思います。例えば、食料品の即時配達サービスのInstacartは売上を伸ばしても、Airbnbはそうはいきません。様々な業界で突然、大きな影響が出ています。

 リモートコラボレーションやヘルスケア、社会課題への投資以外にも、クラウドへの移行が早まると思います。クラウドインフラや関連アプリへの投資も活発になるでしょう。

 消費者向けには、暇な時間を費やすためのアプリの利用が増えていますし、利用時間の増加は続くと思います。自宅で自粛していると精神的にも身体的にも負担が増すので、健康に関わる、例えば当社が投資している瞑想アプリのCalmや、従来のように物理的にジムやスタジオに訪れることなく、自宅でトレーナーと共にグループでトレーニングを行える新しいアプリの開発も進んでいます。

 教育分野は、すごいことが起きるかもしれません。皆が自宅で学習できるようになったら、世界中の人々に教育の機会を広げ、発展途上国の人々に対して教育を提供できるようになります。米国内のオンライン教育は、常に議論が行われてきましたが、今までは大きく進展しませんでした。今では、全ての年齢の学生を対象に、世界中でオンライン教育が行われています。オンライン教育に慣れた世界中の子どもたちに対して、最適な教育をどのように提供していけばいいのか、考えていかなければなりません。

 これからは、インターネット接続だけではなく、世界中の地域で提供できること、バンドウィズ(帯域幅)が非常に重要になります。バンドウィズ(帯域幅)を提供できれば、チャンスは無限大です。

 何が新しい「日常」になるのか、テクノロジーがどのような役割を担うのか、とても興味深く、そして、新たに生まれる事業や会社が今後10年でどれだけインパクトをもたらすか、楽しみです。

特集:シリコンバレーコロナショック

#1 【500 Startups】コロナ禍、スタートアップ投資はこう変わる
#2 【Lightspeed】米国屈指のVCが語る、危機下における5つのインサイト
#3-1 【Venrock】シリコンバレーの名門VCが語る、SaaSスタートアップ投資の原則
#3-2 【Venrock】50年の歴史を持つVCは、コロナ危機をこう見る
#4 【スタンフォード】コロナ禍こそ、オープンイノベーションのチャンス

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