Image: Avigator Fortuner / Shutterstock
アフリカで起きていること、と言うと、実際に取引がない企業にとっては遠い果ての地のように感じるかもしれない。先進国や大手物流企業では当たり前に使用されている貨物追跡システムが、アフリカでは機能していないことが多く、近代的な国でもインフラ面の改善点が多い。アフリカのサプライチェーンをデジタル化しようと改革に乗り出したのが、ガーナ発のスタートアップ、Jetstream Africaだ。共同創業者でCEOのMiishe Addy氏が現地の課題とソリューションについて語った。

貨物追跡をデジタル化したプラットフォームに

――御社のサービスについて詳しく教えてください。

 私たちは、アフリカで国境間貿易を行う企業向けに、サプライチェーンプラットフォームを開発しています。主なターゲットは、貨物の運送業者です。私たちのミッションは、アフリカでビジネスをする人々が自分たちのサプライチェーンをチェックし、管理できるようにすることですが、現時点ではまだ非常に難しい状況です。

 その理由は、アフリカのサプライチェーンには最低でも平均7社が関わっていて、手続きも異なり、踏まなくてはいけない段階が多いからです。多国籍運送業者の貨物追跡システムは海上輸送、航空輸送ともに優れた追跡機能を持っていますが、サハラ以南のアフリカに輸出入する場合、貨物を見失い、何が起こっているのか分からなくなります。もしかしたら港で留め置かれて罰金を科せられていても、いったいなぜそんなことになったのか分からない場合もあります。

Miishe Addy
Jetstream Africa
Co-Founder & CEO
ハーバード大学で哲学の学士号、スタンフォード大学院で法務博士号を取得。米NYで、コンサル大手Bain & Companyや大手法律事務所ワクテル・リプトン・ローゼン・アンド・カッツで勤務。2015年以降は起業やメンターシップなどに関わる。2018年にJetstream Africaを共同で設立。

 私たちのプラットフォームは、サプライチェーンの各段階で何が起こっているのかを可視化・確認でき、貨物の輸送をどのように進め、管理したらいいのかを簡単に分かるようにしてくれます。

「世界で最も費用と時間がかかる港」を変えたい

――どうしてJetstream Africaを立ち上げようと思ったのですか。

 私と共同創業者のSolomon Torgborの2人で起業しました。Solomonは海運企業で8年ほど働き、起業やテクノロジーに関心がありました。私はニューヨークのコンサル会社で働いた経験があり、そこで産業界について学ぶとともに、起業家精神やテクノロジーにほれ込みました。スタンフォード大の大学院で学んでいた頃は同級生の多くが起業したり、スタートアップに参加したりしていて、すごくダイナミックでした。

 私は、ガーナと米国のハーフです。米国での経験を経て、ガーナの首都アクラにある起業家養成スクールで働くため移り、そこでSolomonと出会いました。彼の海運業界での経験と、私のテクノロジー分野への関心やビジネスの知識を基に、一緒にさまざまなビジネスモデルの検討を始めました。

 アフリカの港は、世界で最も費用と時間がかかる港です。近代化したインフラも多少ありますが、サプライチェーンに関わる企業が多すぎて、全ての過程でエンドツーエンドの効率性を達成するには、まだまだ時間がかかります。私たちは、なるべく早く効率性を実現するため、さまざまなビジネスモデルを検討しました。

 市場に欠けていたのは、例えば、中小企業がガーナからコンテナ1つに満たない製品を送る際の海上輸送のソリューションです。コンテナは1つで約25トンの貨物を積めます。ただ、平均的な輸出企業は小規模で、毎月それだけの生産量を確保できません。私たちは、さまざまなサプライヤーの貨物を集めて輸出する方法を開発しました。

 また、国際貿易の場合、通常は銀行の融資を受けることができますが、アフリカの場合、そのような支援を受けられる企業は全体の半数程度です。資金があれば、製品を作り、輸出にかかる経費をカバーできます。輸入業者でも、サプライヤーに支払う費用をカバーできます。

Image: Jetstream Africa

 しかし、西アフリカから貨物を送る場合、海上輸送では2~3カ月もかかります。例えば米国において、サプライヤーへの支払いに2~3カ月も遅れが生じるのは許されません。そのため、輸入業者は商品をいつ販売できるのか、どこにいるかも分からない輸送船の経費を前払いせざるを得なくなるのです。

 そうすると、運転資金不足が起こります。通常なら融資でカバーできるかもしれませんが、アフリカの銀行はそこまで関与しないので資金調達の面で大きな格差が起こります。そこで別の手法での資金調達が必要になります。当社はその手法を提供できるのです。

道路条件から港まで、サプライチェーンの問題を幅広くカバー

――プラットフォーム開発では、どのような課題がありましたか。

 1つ目は、インフラです。西アフリカ、ガーナの最大の港であるテマは非常に近代的ですが、周辺はそうではありません。例えば、ガーナ北部からトラックで港まで荷物を運ぶ際、道路が整備されておらず、雨でぬかるんだ道で運転手が立ち往生したり、警察のチェックポイントで賄賂を要求されたりと、サプライチェーンに影響する問題が山積みです。ガーナでもナイジェリアでも港の状況によっては、トラックが港に入るだけで2週間も待ちぼうけを食らうということもあります。

 さらに、融資の返済時期は決まっている一方、サプライチェーンでは何が起こるかによって状況が変わります。道路の悪条件によるトラックの故障で予定通りに商品を売ることができないなど、全てが密接に、相互に関わり合っていることが最大の問題かもしれません。

Image: Jetstream Africa

 そこで2つ目の問題につながります。デジタル化の遅れです。Jetstream Africaは、デジタルソリューションを提供しています。多くの場合、私たちの顧客が使用しているアプリはWhatsAppとMobile Moneyです。従って、顧客のオンボーディングや教育、既存のアプリをどうシステムに統合するのかなど、開発に多くの投資が必要になります。

アフリカ、そして南米へ 同じ問題を抱える新興国にサービスを

――シードラウンドで調達した資金は何に充てますか。今後の目標も教えてください。

 現在までに310万ドル(約3億5千万円)をシードラウンドで調達しました。そのうち100万ドルは運転資金に、200万ドルは市場拡大に充てています。製品開発を担うエンジニアの給与や、実際に現場に足を運ぶ営業担当、クライアントのオンボーディングを担当する人材の給与にも充てていきます。

 プラットフォームは、金融、決済、インボイス、そしてサプライチェーンの可視化を軸に開発しており、それらの機能は全て統合されます。私たちのソリューションは、どちらかというと新興国向けです。短期的には、ガーナ市場での拡大、そして直近でビジネスを展開したエジプト、ナイジェリアでのオペレーションの拡充を予定しています。また、南米も視野に入れています。

 昔、南米を旅行し、そこで働いたことがあります。その時、アフリカで見られる多くの課題が同様に南米にもあることを知りました。グローバル企業は、原材料や、新しい消費市場を求めています。その市場の多くは、若者の人口が伸びている南半球に位置しています。私たちのソリューションがフィットするような地域でぜひ、ビジネスを展開できればと思っています。



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