Image: HZO
水没にも耐えるHZOの防水コーティング技術は、スマートフォン、タブレット、Bluetoothイヤホンなど身近な電子機器で多く活用されている。資金調達は$118Mに達し、本年中には、事業拡大に伴いより広い敷地に本社を移転するという。今回はDirector of MarketingのRyan Moore氏に話を聞いた。

Ryan Moore
HZO
Director of Marketing
ブリガムヤング大学(Utah州)の学士課程にて広告、グラフィックデザイン、工業デザインを学ぶ。在学中から、デザイナーとして企業でグラフィックデザイン・アートデザイン・プロダクトデザインに関わる。2012年にMarketing ManagerとしてHZO入社。2018年Senior Marketing Manager、2019年6月Director of Marketingに就任。

「防水」は求められている

―まずHZOの事業について教えてください。

 水や汚染物から電子機器の内部回路を保護する防水コーティングが当社の事業です。コーティングのOne stop shopとして、それぞれの顧客の仕様に対応し、カスタマイズしたコーティングを施しています。

―個々の顧客にカスタマイズしたサービスを提供しているということですが、どのくらい「カスタマイズ」しているのですか。

 そうですね。コーティング対象となる機器のサンプルを顧客から預かり、顧客が希望する仕様に応えるコーティング方法とコーティング剤を考え提案します。次に、テストを行い、仕様を満たしていることが確認できれば、コーティング作業に入ります。当社のコーティング機器はすべて社内で設計し製造しており、使用する機器もそれぞれの顧客のニーズに基づきカスタマイズしています。

 コーティングの実施場所に関しても、顧客ごとに対応しています。例えば回路基板の防水コーティングを行う場合、その基板を当社に持ち込み、当社施設内で処理を行い、企業に戻すこともできます。または、当社のコーティングは独自のチャンバーで行いますので、顧客の施設にチャンバーを設置しコーティング工程を製造ラインに組込むことも可能です。

 先にOne stop shopといいましたが、当社には、技術者、工程、機械・施設、材料科学の知識といった、防水コーティングに必要な全てが揃っているからこそ、ここまでのカスタマイズに対応できています。

大量生産に対応できる唯一の技術

―HZOの強みを教えてください。

 防水コーティングには、透明で耐性も高くミクロン単位でコーティングができる「パリレン(Parylen)」を主に使っています。パリレン自体は新しい物ではなく、他の多くの業界でも活用されていますが、当社はパリレンを使った完全防水コーティングの大量生産に対応しています。これが強みの一つです。

 2009年に海洋研究所向けに電子機器の防水コーティングの依頼を受け、その後アフターサービスを検討するなかで、家電も防水コーティングの需要があることに気付き、大量生産に対応する完全防水コーティング技術を開発したことが、HZO設立の経緯でもあります。



 もう一つは、例えば、完全防水や、危険な化学物質や腐食性の高い環境での耐性を求める顧客もいれば、汗から保護できればいいという顧客もいます。顧客が求める保護レベルは違います。当社の「HZO Spectrum of Protection™」は、パリレン以外のコーティング剤も使い、ナノコーティングとバリアコーティングサービスを提供しています。それぞれの予算と製造上の要件を満たす、複数のソリューションを提供している点も当社の強みだと言えるでしょう。

中国で拠点を増やし、本社も拡張のため移転を予定している

―アジアでは中国国内に数箇所と、ヨーロッパはスイスに拠点がありますね。海外を含め今後の展望を教えてください。

 中国では、製造業が盛んです。中国国内には当社のコーティング施設に加え、顧客の施設12箇所に当社のチャンバーを導入していますが、今後更に増えることが見込めます。また、米国内でも事業規模が拡大しており、年内には本社をUtah州からNorth Carolina州に移転する予定です。

 日本にも事務所を持っていたことがありますし、今後数年間で事業を拡大したいと考えています。数年前に楽天に買収された電子書籍サービスのKobo(コボ)もリーダーにHZOの防水コーティングを採用しています。Koboが以前行ったユーザを対象とした調査では、最重要視している機能は「防水」だという結果が出ていました。防水コーティングの重要性を認識している企業。今後もそういう企業との関係を重視していきます。

 今後の展望としては、電子機器以外の市場における事業拡大です。防水コーティングは、消費者向け電子機器以外にも様々な産業で活用でき、需要があると考えています。



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