コロナ下 急拡大したインドEC市場のニーズに対応
2020年以降、世界的に拡大した新型コロナウイルスの流行。インドでも同年4月以降、感染者数が急速に増加した。その一方、この期間にインドの電子商取引(EC)ブームが始まったという。AmazonやインドEC最大手のFlipkartだけでは対応できないブームが来ていたとTaneja氏は指摘する。
コロナ下におけるEC需要において、自身がこれまで培ってきたデータサイエンスの専門知識を活かして起業しようと考えたTaneja氏。前職のBombay Shaving CompanyでCRO(Chief Revenue Officer)を務めた経験も役に立ったという。
「私はコロナ流行による受益者の1人と言ってもいいでしょう」と氏は語る。世界第2位の人口のインドでは、現在6億人のオンラインユーザーがいるとみなされ、そこでECを利用する人が1億~1億2,000万人、定期的にECショッピングをする人が3,000万から3,500万人ほどいるとTaneja氏は語る。
GoKwikは2020年9月に設立。心掛けたのは、RTO(Return to Origin = 商品が開封される前に返品されること)とCOD(Cash on Delivery = 代金引換)の2つの課題を解決するソリューションをきちんと提供するECサイトを作ることだったという。
現在では300以上のブランドが、GoKwikのプラットフォームを利用し、インド国内のほぼ全ての大規模ブランドが導入している状態だという。創業から18カ月で、GMP(Gross Merchandise Value = 総商品価値)は10億ドルを超える規模で、80万人の顧客を抱えるまでに急成長している。
ビジネスの成長の鍵は5つの側面
GoKwikの成長要因として、Taneja氏は、発見(Discovery)、セレクション(Selection)、購買行動などへの変換(Conversion)、顧客の維持・リピーターの獲得(Retention)、物流(Logistics)の5つのキーワードを挙げた。
例えば、「発見」において、ユーザーがどこでどのように商品を見つけるのかというデータを、「セレクション」においては、あるカテゴリーの商品において1つのブランドがどれだけの幅のある商品をラインナップできるかなどを細かく調査していく。
また、インドのオンラインショッピングにおいてのユニークな点について、代金引換が多いとTaneja氏は説明する。そして商品が自宅に届けられても、注文を受け取らない人が多いのも特徴だと言う。
「インドは、代金引換市場が70〜75%に上るという特徴を持つ国ですが、代金引換注文の25〜30%でRTO(開封しないでで商品を戻すこと)が発生しています。これはセールススタッフにとって痛手あり、売り上げを失うことになるだけでなく、商品を戻すための追加費用も必要になります。この返金に伴う費用を当社で持つことが、我々のビジネスの成功の鍵だったと思います」
RTOの率を少しでも下げるために工夫もした。同社が蓄積したデータを用いて、データサイエンスによる予測によってRTOの改善に取り組んでいるという。加えて、「オンラインでの決済の変換速度を上げるために、テクノロジーを活用しています」と自社のサービスの強みを説明する。
現在の競合相手について聞いたところ、「先発者のアドバンテージがあります」と強調する。GoKwikのビジネスを立ち上げるまでに半年をかけ、この分野において第一人者であるという利点は大きいと胸を張る。
「いくつかの海運会社や決済会社がこの市場に興味を示していますが、当社がこの分野においてのマーケットリーダーであることに変わりはありません」と続ける。
また、「顧客の維持・リピーターの獲得」において、消費者を引き止め続けるために、「例えば、インドのSnapdeal、Limeroad、LensKartなど、ECの大手ブランドにもマーケットプレイスに参画してもらっています。数多くのオフブランドにも参画してもらっています」と戦略を語る。
Image: GoKwik HP
インドを超えて海外展開も視野に
中長期的な計画について尋ねたところ、Taneja氏はまずはインド市場でさらに充実した商品を揃えることに加え、インド以外の市場にも目を向けたいと明かした。
「最初のターゲットとして考えているのは、中東諸国、東南アジア諸国です」。GDPが高く、ECの成熟した市場であることを念頭に、できれば半年から9カ月以内には海外展開を進めていきたいと考えている。その後は、日本などへの進出も視野に入れているという。
日本市場に参入する場合、どのような課題があり、パートナーシップが必要かという問いに、Taneja氏は「1つ目にロジスティックの問題があります。2つ目には日本には大規模な小売グループがあり、さまざまなフランチャイズ、グローバルフランチャイズ、ローカルフランチャイズのブランドがある点です。1つのショッピングモールで15から20のブランドを持っているような企業との連携にも興味はありますが、もちろん個々のブランドにも興味もあります」と話した。将来的な日本進出の可能性についてはオープンにしつつ、今後もインドのEC市場の成熟に取り組んでいく考えだ。