Image: FreeWire Technologies
FreeWire Technologies は、創業から5年目、米国、英国、ニュージランドそして日本で製品導入実績があるスタートアップだ。同社は、充電スタンドを「移動型」にすることで、電気自動車の普及における課題を解決し注目を集めている。今回はCo-Founder & CEOのArcady Sosinov氏に話を聞いた。

Arcady Sosinov
FreeWire Technologies
Co-Founder & CEO
2008年、ボストン大学クエストームビジネススクール卒業。金融業界で新興市場投資等に関わり7年以上の経験を積んだ。2015年にカリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBA取得。2014年にFreeWire Technologiesを共同で設立、CEOに就任。

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充電インフラはモビリティ革命における最も大きなチャレンジ

―まず御社の製品について教えてください。

 FreeWire Technologiesには3つのブランドがあります。ひとつ目は、移動可能な充電器「Mobi EV Charger(以下Mobi)」です。この製品は、例えばGoogleやFacebookなど多くの大手テック企業のキャンパスや社宅で使われています。

 今までは、EV用充電スタンドは探すのも一苦労、そして見つけても充電が終わっている車が停まったままですぐに使うことができなかったり、不便かつ非効率的で、EVの普及にインフラが対応していませんでした。他にも、充電スタンドの使用時間が電力使用ピーク時間帯に重なること、EVの充電に使用される電力が社屋で使われる総電力使用量を超え、電力需要の分散やコスト削減など多くの問題が未解決のままとなっていました。

 それを全て解決したのがMobiを使った当社の包括的な充電サービスです。当社のサービスで、企業の社員は駐車場内の好きなスペースに車を停め、勤務中に充電を終えます。企業は電力需要の分散と充電コスト削減ができる、全く新しいサービスです。

 二つ目のブランドは「Mobi Gen」です。MobiとMobi Genは、サービスの適用対象が違う以外に大きな相違点はありません。Mobiは乗用車などを対象としているのに対し、Mobi Genはイベントや工事現場での使用、フードトラックなどの大型車両を対象にしています。こちらは、ディーゼル発電機に代わる製品として、CO2排出量規制がある日本でも需要があるのではないかと考えています。

 三つ目のブランドは据え付け式の急速充電器「Boost Charger」です。Boost Chargerは、蓄電池を使った120kWクラスの高出力急速充電器で、同等の他社製品と比べ設置コストを最大40%削減することが可能です。

 通常、急速充電器を設置する際には、電気の契約を低圧受電から高圧受電に変更する必要があり、その手続や許可が下りるまでに時間もかかりますし、固定費も上がります。蓄電式のBoost Chargerは低圧受電契約のままで導入が可能です。そのため、設置からサービス開始まで1ヶ月もかかりません。充電スタンドの設置は、通常4〜6ヶ月かかりますから、こうした意味でもBoost ChargerはGame Changingな製品といえます。

―Mobiのサービス内容と、コスト削減についてもう少し詳しく教えてください

 そうですね。Mobiのサービスには、充電サービスに加え、充電対象車両の位置確認、充電状況のリアルタイム配信、課金機能などのソフトウェアプラットフォームサービスが含まれています。また、MobiとMobi Genは、普通充電と急速充電にも対応し、Mobi一台で一日約8台のEVの充電が可能です。

 あまり具体的な数字は言えませんが、大規模なインフラ導入時のコストと比較して5年間で約25%のコスト削減につながりました。

日本の技術もFreeWire Technologies製品に貢献

―日本への進出について聞かせてください

 日本市場にはもちろん興味があり、その参入においてはベルエナジー社(つくば市)の協力を得ています。日本では、EVの充電市場とクリーンエネルギー市場の両方でビジネスチャンスがあると考えています。

 当社製品には日産自動車の電池を採用していますし、日産とは非常に密接な関係にあります。日本市場はコングロマリット(複合企業)に支配されていますので、そうした企業内にある、該当部署との連携を模索することが現実的だと考えています。また、他のユーティリティ(公益事業)を担う企業とも何らかの形でご一緒できればと考えています。

―将来の展望についてはどうお考えですか

 私たちのビジョンは、ユーティリティ(電気)とEV所有者の間に位置する会社になることです。ユーティリティ(電気)への影響を最小限に抑えるためには、バワーフローをコントロールする必要があります。最近では、急速充電の需要が高まり、テスラ社が最大250kWで充電できる急速充電器を発表しました。250kWは大電力です。例えばこの充電器を10台同時に稼働させたら2.5MW(メガワット)の電力が必要になります。桁違いの電力量です。

 電力を蓄電池に溜めることで電力需要カーブをなだらかに抑え、ユティリティ(公共事業)への影響を最小限にし、EV所有者の充電コストの削減にもつなげていきたいですね。

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