製造業の“エアービーアンドビー”とも言われるFictiv。製造業のオンデマンドプラットフォームを構築し、プロトタイプを迅速に作ってほしい顧客と稼働可能な製造設備を持つ業者をマッチングさせることで開発サイクルを早める。このネットワークと技術で実現したいこととは―。共同創業者でCEOのDave Evans氏に話を聞いた。

Dave Evans
Fictiv
Co-Founder & CEO
スタンフォード大学で機械工学を専攻。Fordが設立したシリコンバレーラボにてハードウェア設計、プロトタイピングを担当。2013年にFictivを共同創業。Forbesの「30 Under 30」に選出。

製造業のオンデマンドプラットフォーム

―どんな事業を展開していますか。

 製造業のオンデマンドプラットフォームを構築しています。中国や米国を中心に、世界中に200社あまりの製造業のパートナーネットワークを保有しています。たとえばソニーのような大企業が新しい製品を開発しようとしたときに、我々はそのお手伝いができます。グローバルネットワークの中から、部品などを短期間で作ることができる企業をつなぎます。

 特にフォーカスをしているのは電機、自動車、医療機器・ロボティクス、航空宇宙の4つの業界です。顧客数は公開していませんがダイムラー、インテル、Facebookなどが主要顧客です。我々は仲介料で収益をたてており、現在無料で使えるツールを将来は有料化することも検討しています。

世界中の製造パートナーと連携し、数日で部品を作る

―強みは何でしょうか。

 我々自身は、機械は持っていません。我々がしているのは、カスタムメイドの発注や実際に作る製品のデザインや設計を簡単にできるようにするためのソフトウェアの開発です。製品を設計し、供給者と試行錯誤するための「Work Space」というツールを提供しています。グーグルドキュメントで文書を共有しながらあれこれ議論するのと同じように、3Dで部品のデザインを見ながら専門家とやりとりができます。

 「Fabricate」というツールでは、3Dプリンターや射出成形部品、CNCのグローバルな供給ネットワークにアクセスができます。CADモデルをアップロードするだけで、自動で見積もりと製造業者とのマッチングがされ、製造側からのフィードバックが得られます。数週間とか数か月とかではなく、数日で実際に部品を作ってもらうことができます。

 また、世界中のパートナーについては、非常に高い水準をクリアして初めて我々のビジネスネットワークに入ってもらっているので、これが我々の強みになっています。現地に赴き、長いチェックリストで2週間近くかけて、質の保証と維持ができるか、処理能力があるか、どのようにインフラやチームを運営しているのかなどを精査しています。

開発期間を短縮し、ものづくりのサイクルを変える

―どうしてこの事業をはじめたのでしょうか。

 私はスタンフォード大学で機械工学の研究をしていましたが、その後フォードの研究所で勤務しました。そこで技術者が直面していたのは、時間の問題でした。たとえばダッシュボードをつくるのに、4年とか5年もかかってようやくできあがるわけです。スマートフォンの業界ではこれが6〜8か月で済みます。いわばiPhoneが12回新しいバージョンを試している間に、ようやく製造業では1回の開発が終わるといった状態だったのです。

 この開発のサイクルをどうにか短くできないかと考え、ただ順番を待つのではなくオンデマンドで製造することができないかと思い付きました。実際に、もしカリフォルニアにいる地元のお客さんであれば、朝注文をいただいたものを夕方にはお届けするということも可能です。あらゆる部品が届くのを待っている状態は、コストがかかり致命的です。これを早めることができれば劇的にものづくりのサイクルを変えることができます。

―たとえばどのような事例がありますか?

 たとえばLIM(液体射出成形)の話をしましょう。LIMは膝上の義足を作るのに有用ですが、足を失った人の切断面は人それぞれなので、毎回それに合わせた義足を作る必要があります。従来は、実際に部品を製造するのに3〜4週間かかっていました。

 しかし、その3〜4週間の間に筋肉の形状が変化してしまって、できあがった頃にはうまくフィットしないというようなことが起こります。これが2、3日でできあがれば、計測した週のうちに義足を装着することができます。製造工程を短くすることは、他の方法でなかなか解決できなかった問題を解くことにつながります。

製造業を21世紀型に変えたい

―今後の展望は。

 1990年代や2000年代にソフトウェア開発をしたいと思ったら、IBMなどの大企業で働いて、開発と販売をしてもらわないといけませんでしたよね。それが今は、ソフトウェアを作りたかったらSwiftを学んで、Appleのアプリショップで売ることができて、世界中の人がそれにアクセスできます。このプロセスが非常に簡単になったから、イノベーションもたくさん起こったわけです。

 我々は、この30年でソフトウェア業界に起こったイノベーションを、製造業でも起こしたいのです。大企業でもそうでなくても、だれでも同じようなレベルでツールへのアクセスがあり、ツールをうまく使うことができれば、もっともっと新しい製品を作ってみることができて、イノベーションが起こると思います。製造業を21世紀型にしていきたいのです。

―日本企業との協業に関心はありますか?

 もちろんあります。日本は消費者向け家電のイノベーションの中心地ですよね。ここ数年で少し変わってきているかもしれませんが、技術や知識は十分にあります。我々は、我々の投資家であり顧客であるインテルのような大企業から、従業員20人程度のスタートアップまで、300社と仕事をしています。企業規模は問わず、その開発プロセスをお手伝いできたらと思います。

 また、日本は世界でもっとも精密なCNCの機械を作っています。こういった機械を作っている技術者や工場を企業に紹介したいですね。機械を保有している側にとっても、我々が入ることで収益を増やすことにつながると思います。現在、拠点は米国と中国だけですが、私は日本の文化も大好きなので、ぜひ訪問したいですね。



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