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現在の東南アジアエコシステムは素晴らしい時期に入って5年目
―東南アジア市場では、シリーズBラウンドの投資資金が不足していると聞きました。実際にそうした状況にありますか。
私は経時的に物事を判断します。東南アジアのスナップショットを持っているわけではありませんが、米国で育ち、90年代後半に米国で起きた最初のドットコム・ブームの渦中で、最初の波そして次の波でも、浮き沈みするスタートアップを見てきました。
東南アジアのスタートアップは皆、「資金調達に苦労している」と言っていますが、シリーズBラウンドにいるスタートアップが特に苦労しているかもしれません。
ここ5年、東南アジアは素晴らしいエコシステム状況にあると思います。時間の経過と共に見ていくと、シリーズAレベルに到達するのに2〜3年かかり、そこからさらに2〜3年かけて、創業4年のスタートアップが3000万ドル規模の資金調達ができるようになりました。東南アジアのエコシステムは徐々に発展しており、5年前に起業したスタートアップが「次はいくら必要?」と考え始めている時期にあります。そして、投資家は起業家の後を追うものです。起業家が資金調達を決めれば投資家にとって機会が訪れます。
―それでは、現在の状況はエコシステム全体の自然な流れということですか。
そうですね。数年前まではシリーズAの資金調達にも苦労していましたが、今は違います。今後数年以内に、東南アジアのスタートアップは、5000万ドルや1億ドルの資金調達に成功するようになるでしょう。そうなると、8000万ドル規模の投資を行うグローバル投資家が東南アジアに注目するようになり、資金調達の苦労は緩和されると思います。
―現在は、FinTechスタートアップへの投資が盛んなようですが、FinTech業界は今後も注目されていくと思いますか。
FinTechは以前からアクティブでホットな分野ですし、それは現在も同じです。
GGVは東南アジアのエコシステムと共に成長しながら約10年前から活動しています。設立当時は、Eコマースが最もアクティブでしたが、すでに飽和状態にあります。Eコマースが増えれば、物流の需要も高まり、テクノロジーで需要に応えるスタートアップが増えると考え、過去1年半はEコマースではなく物流企業に投資しています。それ以外には、Health TechやInsure Techにも投資しています。
eBay、AmazonやPayPalが1.0だとすると、今は2.0で、Educational Tech、Health TechやInsure Techが注目されています。
日本での上場も視野に
―シリーズBラウンドに投資をしていくことを目的に、韓国のHanwha Asset Management(以下Hanwha Asset)と提携し、共同でファンドを立ち上げられました。Hanwha Assetとの提携はどのように始まったのですか。
Hanwha Assetは、アジア内の企業としては最も長くGGVのリミテッドパートナーでしたし、お互い相手から学べることがあります。GGVは東南アジアの起業家に信頼され、高い評価を得ているブランド力があり、アーリーステージの経験が豊富です。Hanwha Assetは、5〜10億ドル規模の投資を行っており、大規模投資の経験が豊富ですし、GGVへの投資も行っています。
少し前に当社の3号ファンドに三井不動産が加わりました。まだ付き合いは短いのですが、とても良好な関係を築けています。当社は、三井不動産だけでなく、他のリミテッドパートナーともポジティブな関係を築いています。その中でも、Hanwha Assetとの付き合いは5年におよび、時間をかけて築いた信頼関係があり、よいパートナーシップを継続してきたからこそ、「もっと一緒にやろう」という話になったのです。
―日本企業が東南アジアで成功するためにはどうすればいいのでしょう。また、東南アジアのスタートアップは日本企業に何を求めていますか。
日本企業そして韓国企業の多くは、製品の販売はグローバル展開しますが、事業提携やイニシアチブの規模が大きい場合はドメスティックを好みます。他の韓国企業とは違い、Hanwha Assetは外向きだったことも当社との関係が双方向的に深まった理由の一つです。
日本企業に限ったことではなくアメリカ企業でも言えますし、全ての日本企業がそうだということではありませんが、海外進出した際に自社からインターナショナルチームを派遣し事業を進めるケースを多く見てきました。個人的には、同業のローカルプレーヤーを買収し、体制や運営を変えずに事業を展開し、そこから経験を得る方法が最も成功するやり方だと考えています。
例えば、カカクコムのように東南アジアで成功している日本企業もいますが、数年前にインドネシアに進出した日本のEコマース企業は、インドネシアにオペレーション拠点を設け、事業チームメンバーは日本から日本人を送り込みました。このやり方ではローカルオペレーションはうまくいきません。この日本企業は、インドネシアへの進出に3000〜3500万ドルを費やしたと思いますが、1年後には撤退しました。Alibabaはインドネシアに進出する際、ローカルプレーヤーを買収し、ローカルチーム、ブランドそしてテクノロジーも変えず事業を展開して成功しています。
東南アジアでは、AmazonとAlibabaが競っているように、アメリカのテック系企業と中国のテック系企業がバトルを繰り広げていますが、国際化に関しては、中国企業が一番リベラルな考え方をしていると思います。
日本では、特にテクノロジー市場が成熟しており経験値も高いので、その共有が東南アジアの企業にとって最も魅力的だと思います。他には、日本企業が得意とする、プロセスの効率化に関連する知識も魅力的です。日本企業と聞いて私がイメージするのは、自動車メーカーの生産ラインの自動化や生産効率向上における実績です。
以前、東京証券取引所のシンガポール支店でイベントを行ったことがあり、東京証券取引所が、東南アジアのスタートアップを日本に迎えてくれたことがありました。彼らは、東南アジアのスタートアップをマザーズで上場することに、興味を持っていましたね。
金融資本は東南アジアの原動力になります。国内投資を行う日本人投資家が集う東京証券取引所で、東南アジア企業の上場を支援してくれる日本企業がいれば、東南アジアのスタートアップにとって新しい扉を開くことができると思います。
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