日中でのスタートアップおよびイノベーション共創を推進するアクセラレーターである「ジャンシン(匠新)」は2022年8月29日、上海展覧中心にて「日中イノベーション・デイ」を開催しました。本イベントは、中国科学技術部主催の「グローバル技術移転EXPO」における日本をテーマとした特別イベントとして開催。その中の1つのセクションである日中企業イノベーション大会では、ソニー中国研究院、ミスミ中国、三井住友海上の3社をお招きし、日中でのイノベーションの発展トレンドや提携事例、そして提携ニーズなどについて講演を行いました。今回はその3社の講演内容についてご紹介します。

※TECHBLITZのコンテンツパートナーであるジャンシン(匠新)が開催した「日中イノベーション・デイ」の様子を寄稿でご紹介します。

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1.「誰もやってこなかったことにチャレンジしてきた」
―ソニー中国研究院院長 竹中幹雄氏

 ソニーの研究所は世界中にあり、中国では北京、上海、深圳の三都市にあります。巨大な市場で地場にあった研究開発ができること、優秀な中国の人材とともに研究開発できること、そして社会実装による価値検証ができることは中国で研究開発する強みであり、ソニー中国研究院のミッションとなります。

 中国で特にエンターテインメントとモビリティを短期・中期的に、農業、高齢化や教育などサステナビリティの領域を中長期的な応用領域として研究を推進しています。モビリティでは、中国の産官学と連携して自動運転などの実証試験を通じて、インフラ協調型自動運転の基盤技術を構築しています。また、メタバースの領域では、主に3次元コンテンツクリエーション技術をベースに中国の産官学と連携し、次世代のバーチャルプロダクションの検証を行っております。サステナビリティの領域では、AI(人工知能)・WN(無線通信)、ロボットやセンサーなどの技術を活用し、様々な実証試験を通じた課題解決にチャレンジしています。

 日中企業イノベーション大会において、竹中幹雄院長は「常に当時の常識にとらわれず、新しいこと、それまでに、誰もやってこなかったことにチャレンジしてきたことは創業当初から今も変わっていなく、イノベーションはソニーのDNAだ。ソニーの技術を活用して、中国の産官学と連携し、高速で実証試験を実施して中国の社会への貢献を目指す。現在中国におけるモビリティ、メタバース、サステナビリティ領域での提携パートナーを募集しており、今後もイノベーションを一緒に起こしていきたい」と述べました。

ソニー中国研究院院長である竹中幹雄氏が講演する様子
Image:ジャンシン(匠新)

2.「人を活かしオープンな形でイノベーションを起こすこと」
―米思米(中国)精密機械貿易有限公司執行役員常務(ミスミ中国) 馬場隆氏

 ミスミは2003年、中国に現地法人を設立し、製造部品・消耗品などの製造業において必要な部品の製造・販売を行っており、取扱い商品数は1200万点超となります。また、5日以内での出荷商品比率は80%、納期遵守率は99.96%、最短配送時間4時間の短納期を追求し、「時間価値」を提供することを企業理念とします。金型事業、FA事業、MRO事業以外では、ミスミとして初のソリューション事業であるPASS事業を立ち上げ、中国発の新たなビジネスモデルとなっています。

ミスミの会社紹介
Image:ミスミ中国

 ミスミでは「Small Is Beautiful」という組織論があり、一つの組織が顧客の声を聞き、開発から生産、販売までのサイクルをワンストップで速く回すことは「勝ち戦」と言われます。ミスミは中国製造業における間接資材管理の無駄を解消することに着眼し、商品販売事業から業務改善事業へ転換するPASS(Purchase Automation System Service)を立ち上げました。高頻度使用品は自販機に置いて0時間で提供、中頻度使用品は分倉庫から4時間配達、都度調達品はハブ倉庫から24時間、20万点以上出荷が可能。これは、お客様の必要な調達方法に応じて調達できるというスキームになっています。

ミスミのPASS(Purchase Automation System Service)サービスの全体概要
Image:ミスミ中国

 日中企業イノベーション大会において、執行役員常務である馬場隆氏は「イノベーションの源泉はどこにあるのか」について、「大事なのは金ではない。抱えている人材を、いかに導いていくか、どれだけ目標を理解しているかが重要」という米IT大手アップルの創始者であるスティーブン・ジョブズの名言を述べました。同時に、「現地社員の自発性と顧客の声を重視、最新の技術を駆使しながら顧客の利便性を追求、自前に拘らず外部の知見・技術を積極的に活用することこそが、PASSを支える3つの仕組みであり、今後も中国の企業・機関とお互いに手を取り合い、イノベーションを『共創』していける未来を共に創っていきたい」と述べました。

米思米(中国)精密機械貿易有限公司執行役員常務である馬場隆氏が講演する様子
Image:ジャンシン(匠新)

3.「オープンイノベーションにより、人と環境にやさしい、安心・安全な社会を実現していきたい」
―三井住友海上火災保険株式会社董事兼総経理 菅正彦氏

 三井住友海上火災保険は、日本最大級のグローバル保険グループであるMS&ADグループの中核企業。世界42の国と地域にネットワークを有し、ASEANでは唯一、全ての国に拠点を持っています。同社は、2022年4月にオープンイノベーションを目的として、GDH(Global Digital Hub)上海を設立しました。現在、「国際貿易プラットフォーム」「モビリティ」「スマート製造・建機」「ヘルスケア」の4つの取り組みを中心に、リスクソリューションにかかわる新たなビジネスモデルの構築を目指しています。

三井住友海上火災保険株式会社の中国における戦略の概要
Image:三井住友海上

 その中のモビリティの取り組みについては、移動式充電サービスの会社である「送来電(深藍動力)」と戦略提携を締結しています。この「送来電」の充電駆付けサービスにより、電池が無くなり走行できなくなった際や買い物などをしている際の空き時間に充電したいというお客様のニーズを満たす事ができます。このように、「充電スタンドに行くのではなく、充電スタンドが来てくれる」充電駆付けサービスと保険をセットにすることで、EVのペインポイントに関するお客さま向けのソリューションを共同で展開しようとしています。

 加えて、モビリティソリューション会社「Momenta(初速度科技)」とのコラボレーションを開始しました。そのコラボの中では、Momentaのドラレコ機能等を活用した安全運転モニタリングサービスの案内を随時進めようとしています。今後は、パナソニック、送来電、そしてMomentaといった関連企業と連携して、モビリティについての新たなソリューションを提供していきます。

三井住友海上火災保険株式会社が中国で展開する新たな取り組み事例
Image:三井住友海上

 日中企業イノベーション大会において、董事兼総経理である菅正彦氏は「三井住友海上は、保険会社と関係する企業、研究機関、あるいは政府と1対1で連携を拡大強化するだけでなく、関連業界が一体となった仕組みを創ることで、予防、補償、リカバリー等で、お客様に『事故が起こらないためのサービス』という新たなビジネスモデルの創出を目指す。オープンイノベーションによりリスクソリューションのプラットフォーマーとして社会と共に成長し、人と環境にやさしい、安心・安全な社会を実現していきたい」と述べました。

三井住友海上火災保険株式会社董事兼総経理である菅正彦氏が講演する様子
Image:ジャンシン(匠新)

 当日のオフライン会場での来場者数は88名、オンラインのライブ中継及び録画ビデオの閲覧数は2.44万回超、VR展示の閲覧数は89.4万回超となりました。また、「新民晚報」、「頭条新聞」、「第一財経」、「騰訊網」、「東方網」といった中国の主流メディアによって報告されました。(2022年10月17日時点)

日中企業イノベーション大会のビデオレビューは下記リンク(ジャンシン(匠新)WeChat公式アカウント)からご覧ください。

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