スタートアップ・エコシステム拠点形成に取り組む京都府と、一般社団法人 京都知恵産業創造の森、TECHBLITZが開催したオンラインイベント「スタートアップ・アライアンス・リンク」。第5回は、「京阪神発、次世代クリーンエネルギー社会」をテーマに、エネルギー・クリーンテック分野の京阪神のスタートアップ7社の代表らが登壇した。脱炭素社会の実現に向けたソリューションや未利用資源を活用したサーキュラーエコノミー事業、生物多様性に配慮した土地利用と新しい価値の創出提案など、各社の事業概要を紹介する。

<目次>
1. 低コスト、高効率CO2回収
2. 「見えない生態系」から未来の土地利用を設計する~「生態系誘導」と環境・エネルギー事業の連携~
3. みんなの環境貢献したいを繋げて大きくする、CO2吸脱着プラスチック “DACプラ”
4. 未利用バイオマス資源を用いたソーシャルインパクトとカーボンニュートラルの実現
5. 合成バイオ技術を活用した化学品生産
6. 次世代コールドチェーンプラットフォームで世界を笑顔に
7. 脱炭素革命をもたらす海上輸送イノベーション:水素船ZESST

1. 低コスト、高効率CO2回収

OOYOO
登壇者:創業者/取締役(CTO) イーサン シバニア氏
所在地 京都府京都市下京区中堂寺南町134番地
創設年 2020年
URL https://www.ooyoo.co.jp/
 OOYOO(ウーユー)は、京都大学と英ケンブリッジ大学で育まれた、二酸化炭素(CO2)の分離・回収技術を活かし、中小企業の工場などでの導入を視野に事業を進めている。同社の技術は、高性能な分離膜の製造技術と、小型化により移動可能または携行可能なガス分離精製技術が特徴で、一般的な同様の技術よりコストを抑えることができるという。現在、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)グリーンイノベーション基金事業の「低圧・低濃度CO2分離回収の低コスト化技術開発・実証」の分野で採択された「分離膜を用いた工場排ガス等からのCO2分離回収システムの開発」に住友化学と共同で取り組んでいる。実証プロジェクトを広げていく予定で、酒蔵など小規模事業者の実証実験パートナーを募集している。
Image: OOYOO(ウーユー)HP

2. 「見えない生態系」から未来の土地利用を設計する~「生態系誘導」と環境・エネルギー事業の連携~

サンリット・シードリングス
登壇者:代表取締役(CEO)石川 奏太氏
所在地 京都府京都市左京区吉田上阿達町17番地 Lab Tech 3F
創設年 2020年
URL https://www.sunlitseedlings.com/
 サンリット・シードリングスは、土地の生物多様性の評価・分析などを強みとし、環境の再生保全と社会的経済的価値の両立に向け、生物多様性戦略に配慮した未来の土地利用の在り方を企業向けに提案・展開している。同社の特徴は、野外調査から地球上の生物多様性と生態系の構造を俯瞰する生態学、ゲノム科学、ビッグデータ活用などのネットワーク科学を基盤とした統合的な科学アプローチ。例えば、地震などの災害や産業活動による土地の崩壊に対して「植生と土壌生物」に着目し、従来型の植林による復元にとどまらず、生態系再生のための効果的なポートフォリオを構築し、農産物を生産する植生など「価値多様な植生ポートフォリオ」を通して価値を生み出すプランを提案する。
Image: サンリット・シードリングス HP

3. みんなの環境貢献したいを繋げて大きくする、CO2吸脱着プラスチック “DACプラ”

ベホマル
登壇者:代表取締役社長 西原 麻友子氏
所在地 滋賀県近江八幡市小船木町745番地37
創設年 2022年
URL https://www.behomal.co.jp/
 ベホマルは二酸化炭素(CO2)の吸収材を開発・製造する。カーボンニュートラルに必須のCO2の吸収・除去において、手軽に導入できるDAC(Direct Air Capture、大気中のCO2を直接回収する技術)としてプラスチックに混ぜるだけでCO2吸着プラスチックになる「DACプラ製品」を提案する。バイオマスCO2吸収材(粉末状添加剤)を樹脂に入れて成型加工するだけでDACプラを製造できる。常温でCO2を吸収、80度で放出するCO2の吸脱着機能と吸脱着で色が変化する技術が特徴。DACプラを使った製品が生活のあらゆる場面に採用され、各地から集めたCO2をハブ装置で回収、濃縮抽出して再利用できる未来像を描く。今後1年内に試作品開発とPoC検証、3年以内の量産、5年以内に実用化を目指す。
Image: ベホマル HP

4. 未利用バイオマス資源を用いたソーシャルインパクトとカーボンニュートラルの実現

Innovare
登壇者:代表取締役 川谷 光隆氏
所在地 大阪府大阪市中央区淡路町3-5-13創建御堂筋ビル2F
創設年 2020年
URL https://innovare.world/
 Innovareは「グリーンテクノロジーで、青い地球を未来へつなぐ」をテーマに、東南アジアや日本国内外の未利用資源を活用した持続可能なサーキュラーエコノミー事業などを展開している。具体例として、天然ゴムの実など未利用資源を活用したバイオディーゼル燃料やグリセリンなどグリーンケミカル製品の研究開発に取り組んでいる。国際海洋の脱炭素に向けた船舶向けバイオディーゼル燃料や、再利用可能なグリセリンなどに加工することで気候変動対策と、天然ゴムプランテーションの経営・維持の危機という社会課題の双方にアプローチする。バイオディーゼル燃料は現在、大阪公立大学の特許技術を用いた研究や、タイの大学との共同研究によって技術をローカライズする取り組みをラボレベルで進めている。
Image: Innovare HP

5. 合成バイオ技術を活用した化学品生産

マイクロバイオファクトリー
登壇者:代表取締役 清水 雅士氏
所在地 大阪府大阪市北区豊崎3-15-5 TKビル2F
創設年 2018年
URL https://microbiofactory.co.jp/
 マイクロバイオファクトリーは、枯渇資源である石油資源に依存せず、再生可能な植物バイオマス資源を原料に微生物発酵で有用なバイオ化学品を生産する事業を進める。微生物による化学品製造の研究開発、生産及び販売や、有用微生物の開発、培養に関連する受託及び共同研究開発などを展開。具体例として、ジーンズなどの染料として使われるインディゴは主に化学合成で製造されているが、同社は合成生物学のテクノロジー活用で微生物発酵で糖から生産することに成功。発酵インディゴの実用化に向けて取り組んでいる。また、食品や化粧品への利用が期待されるヒドロキシチロソール(オリーブの実や葉に含まれる抗酸化物質)についても微生物発酵で糖から合成すること成功、パイプライン開発などに取り組む。
Image: マイクロバイオファクトリー HP

6. 次世代コールドチェーンプラットフォームで世界を笑顔に

コールドストレージ・ジャパン
登壇者:代表取締役 後藤 大悟氏
所在地 兵庫県神戸市中央区山本通2-14-22 プレジデントコート3階
創設年 2018年
URL https://cold-storage.jp/
 コールドストレージ・ジャパンは、冷蔵のテクノロジーを活用してサプライチェーンを変革し、国内だけでなく世界規模で新しいコールドチェーン(冷蔵・冷凍の貨物輸送網)プラットフォームを作り、社会課題解決に挑んでいる。現状のコールドチェーンはメーカー主導の物流体制であるため、一極集中型で都市部に集中し、物流が非効率となったり、電気代など維持コストが膨らむなどの課題がある。同社は「ブロックチェーン型の次世代コールドチェーン」として、生産者や消費者の近くに小型ストレージ(冷凍コンテナやトレーラー等)を設置し、多極的で小ロットで保管、融通の利く物流体制を提案している。現在、冷蔵・冷凍の貨物輸送網が確立していない発展途上国向けにも提案することができる。
Image: コールドストレージ・ジャパン HP

7. 脱炭素革命をもたらす海上輸送イノベーション:水素船ZESST

ZESST by Almatech
登壇者:ビジネス開発マネージャー 三崎 由美子氏
所在地 スイス(EPFL Innovation Park Building D CH - 1015 Lausanne)
創設年 2009年
URL https://zesst.ch/en/
 ZESST by Almatechは、スイスに本社を置く宇宙・船舶工学分野の企業が開発する、水中翼を搭載した水素エネルギーによる旅客船ZESSTを展開している。日本では神戸にオフィスを構え、CO2を排出しないゼロエミッション船として、ZESSTの2025年大阪・関西万博での試験運航を予定している。2027年から100人乗りの旅客船を建造・販売する計画をしている。ZESSTは都市部の港湾地域で陸路に代わる交通として期待でき、従来の船に比べ消費エネルギーを85%削減し、巡航速度は時速50kmに達し、エコロジーであるだけでなく経済的である点が特徴だ。ゼロエミッションの船舶は年間1500億円の世界市場規模が見込まれており、2027年から事業の黒字化を見込む。港湾の脱炭素計画などのパートナーシップを募集している。
Image: ZESST by Almatech HP



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