Image: Julia Ardaran / Shutterstock
二酸化炭素(CO2)の排出削減や電動化、蓄電、エネルギーの効率利用などClimate Tech領域のテクノロジーが注目され、スタートアップ投資も加速している。脱炭素社会の実現に向けて国内外の脱炭素テクノロジー(ZET:Zero Emission Technology)関連スタートアップ40社が登壇した「ZET New Japan Summit 2023 Kyoto」(2023年3月開催)。このうち海外スタートアップ各社の事業概要を紹介する。第2回は、WiTricity、Leaft Foods、Sylvera、ICEYE、Waterplan、Princeton NuEnergyの6社。

【WiTricity】EV向けのスマートなワイヤレス充電システム

Image: WiTricity HP

設立年:2007年
URL:https://witricity.com/

 WiTricity(本社:米マサチューセッツ州 Watertown)は、高共振ワイヤレス電力伝送技術を用いたEV用ワイヤレス充電システムを開発・提供している。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが発明し特許を取得したワイヤレス給電技術を商品化するために、2007年にMITのスピンアウトで同社は設立された。

 WiTricityは、距離を超えた高共振ワイヤレス電力伝送に関する基本特許を世界中で1,200件以上保有している。同社のシステムは有線と同じ効率で充電することができるほか、コントロールユニットが最適な充電量を判断することでバッテリー寿命を長持ちさせるという。

 地面に敷設した充電パッドからEV側の受電パッドに非接触で電力を供給できるためケーブルを接続する必要がなく、ドライバーは駐車するだけで簡単に充電ができる。トヨタ自動車など日本企業とも提携している。今後スマートシティにおけるインフラとしての活用なども見込まれる。

【Leaft Foods】植物の葉から作る次世代タンパク質

Image: Leaft Foods HP

設立年:2019年
URL:https://www.leaftfoods.com/

 Leaft Foods(本社:ニュージーランド Christchurch)は、植物の葉からタンパク質を抽出して作るスタートアップ。無味無臭で溶けやすく、様々な食品や飲料に利用可能なタンパク質濃縮粉末の製造を可能にした。

 ルビスコ (Rubisco)は、植物の葉に含まれる光合成を担うタンパク質(酵素)。すべての緑色の葉にみられ、ほうれん草やケール、アルファルファスプラウトなどの葉物野菜にも含まれている。同社のRubisco Plant Proteinは、穀物から抽出される他の多くの植物性タンパク質とは異なり、人の消化に良い形で葉からルビスコを抽出する技術を用いて開発されている。

 Rubisco Plant Proteinは、従来の植物由来のタンパク質のような「豆っぽい」独特の風味がなく、無味無臭。溶けやすいため、飲料にも使いやすい。泡立てることができ、卵白の代用品としても期待できる。植物の葉からルビスコタンパク質を生産する場合、乳製品タンパク質の生産よりも1ヘクタールあたりのCO2排出量が10分の1になり、非常にサステナブルである。

【Sylvera】カーボンオフセット活動を評価するシステム

Image: Sylvera HP

設立年:2020年
URL:https://www.sylvera.com/

 Sylvera(本社:イギリス London)は、企業のカーボンオフセット活動を正確に評価できる、WebプラットフォームとAPIシステムの開発を手掛けている。

 カーボンオフセット活動の評価方法にはいくつかの指標があるが、算出過程が不透明なケースもあり環境保護活動がどれほど効果的なのか確認することは難しかった。同社のプロダクトは、顧客企業のカーボンオフセット活動の効果について、衛星のデータ、マルチスペクトル画像やLiDARからのデータなど、複数のソースから多様なデータを収集している。

 収集したデータは、独自の機械学習アルゴリズムで分析して視覚化し、債権の格付け機関のようにプロジェクト毎の格付け (評価) を行う。一部エリアのデータを基に、他エリアの状態を3〜5年おきに推測するといった従来の方法に対し、同社はプロジェクト全域のデータを衛星から収集する。そのため、高精度・高頻度の評価が可能となっている。

【ICEYE】天候に左右されない高解像度データを24時間提供

Image: ICEYE HP

設立年:2012年
URL:https://www.iceye.com/

 ICEYE(本社:フィンランド Espoo)は、天候に左右されずに観測できる小型SAR(Synthetic Aperture Rader=合成開口レーダー)衛星の製造から、保守・運用、衛星画像の解析まで一貫して行うスタートアップ。

 同社のレーダー衛星画像サービスは、昼夜を問わず数時間おきに特定の地域をカバーし、夜間や雲に覆われた場所などでも高解像度の衛星画像を入手できる。農作物のモニタリング、自然災害の状況把握、違法漁業や海賊行為の監視などを通して、保険や金融、セキュリティ分野などの課題解決を後押しする。安全保障・防衛の分野でも企業や政府機関を顧客としている。

 同社は打ち上げ質量100kg以下の小型SAR衛星の開発に成功。小型化で開発コストを抑えつつ機能性を追求したことで、これまで取得が難しかった夜間や悪天候下エリアの高解像度データ(1平方メートル毎)を世界中から得ることができる。データは1時間毎に更新され、24時間いつでも入手できる。

【Waterplan】水資源管理のオールインワンプラットフォーム

Image: Waterplan HP

設立年:2020年
URL:https://www.waterplan.com/

 Waterplan(本社:米カリフォルニア州 San Francisco)は、変化し続ける水リスクを測定し、対応するためのオールインワン気候プラットフォームを提供する。

 同社のプロダクトは、企業が施設内の水の利用状況を管理するためのSaaSプラットフォーム。リモートセンシング技術と公開データで流域を継続的にモニタリングすることにより、脆弱性を評価し、水資源のネットゼロ目標をより早く達成することを可能にする。

 世界中の様々な水関連リスクに関する複数の指標を追跡するためのリスクフレームワークを構築したことで、洪水指数や干ばつ指数などの情報源と、衛星画像、気象データなどを組み合わせて分析したり、特定域内の水の総需要と総給水量を報告したりする。また、水資源に関するメディアの情報やコミュニティの意識、地域の産業・政府機関のデータなどからも情報を収集。施設内の定性的および定量的なデータを組み込み、リスク管理などの分析を行う。

【Princeton NuEnergy】リチウムイオン電池の革新的なリサイクル技術

Image: Princeton NuEnergy HP

設立年:2019年
URL:https://www.pnecycle.com

 Princeton NuEnergy(本社:米ニュージャージー州 Bordentown)は、電気自動車(EV)や家電製品から出るリチウムイオン電池の直接リサイクルに特化したクリーンテックのスタートアップ。プリンストン大学の先端技術を基盤にスピンアウトして創業した。

 同社の特許取得済みダイレクトバッテリーリサイクル技術は、構成部材をできるだけ壊さずに取り出して再利用を可能にする。使用済みリチウムイオン電池から、高品質・高付加価値の正極活物質を低運用コストで生産し、持続可能なエネルギーおよび環境ソリューションを提供する。

 同社のLPAS®(低温プラズマ支援分離)技術を採用することで、従来の乾式製錬・湿式製錬法よりも40%低いコストで正極活物質をリサイクルでき、環境廃棄物を最大70%削減するという。よりクリーンで、より速く、よりサステナブルにを可能にするこれらの技術で、世界の温室効果ガスを削減し、ESG価値を提供していく。



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