京都府と一般社団法人京都知恵産業創造の森、TECHBLITZが主体となり、京都にゆかりのあるスタートアップとイノベーションを推進したい事業会社などとのマッチングを主目的に開催したオンラインイベント「スタートアップ・アライアンス・リンク」。第2回のテーマ「エネルギー&クリーンテック」では、エネルギーと環境の未来を切り拓こうと、イノベーションに取り組む9社が自社の特徴的な技術やビジネスモデルなどを報告した。登壇企業の事業概要などを紹介する。

「京都発 テクノロジー×医療・健康」 社会課題の解決、エコシステム構築へ 
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<目次>
1. 核融合の産業化によるカーボンニュートラル社会の実現へ
2. さとうきびの未利用資源を活用したサスティナブルな素材開発
3. 工場排水・廃液から低濃度パラジウム、貴金属を徹底回収
4. 微風から暴風まで高効率に発電する迎角&翼径制御の小型垂直軸風車
5. 独立型交流電池から廃プラ解重合、灰リサイクル事業で展開幅広く
6. ワイヤレスケミカルセンサシステムの工業排水管理への応用
7. 鉄触媒を用いて林業廃棄物を再資源化
8. 蓄電池などの開発に強み 次なる挑戦はEV中古電池の二次利用
9. サブスク展開を目指すファブレスでのEVトラック開発・販売

1. 核融合の産業化によるカーボンニュートラル社会の実現へ

京都フュージョニアリング
登壇者:事業・マーケティング本部マネージャ 堀洋彰氏
所在地 京都府宇治市五ケ庄平野5-24(本社)
創設年 2019年
URL https://kyotofusioneering.com/
 京都フュージョニアリングは、「温室効果ガスを排出しない」「資源が海水中に豊富にある」ことから、安全で無尽蔵の究極的なエネルギーソリューションと考える「核融合」の実現と産業構築に向けて取り組む、京都大学発スタートアップである。核融合関連のスタートアップは近年、世界的に多く設立され、核融合熱の生み出しに注力する企業が多いのに対し、同社は核融合熱の取り出し(炉心要素技術)・核融合炉のプラントエンジニアリングと基幹装置の販売に注力している。同社によると、このような取り組みにフォーカスした競合企業はほかにないという。ファブレスの同社は、事業会社などとの裾野の広い協業で核融合の産業化を目指す。
Image : 京都フュージョニアリングHP

2. さとうきびの未利用資源を活用したサスティナブルな素材開発

Curelabo
登壇者:代表取締役CEO 山本直人氏
所在地 沖縄県浦添市港川2-14-7
京都市左京区吉田上阿達町17番地(京都事業所)
創設年 2021年
URL https://www.curelabo.co.jp/
 Curelaboは、大量生産・廃棄や工場排水による水質汚染など環境に及ぼす問題が指摘されるアパレル産業で、環境負荷が高い素材に代わる代替品の開発と、大量廃棄のビジネスモデルからの脱却を目指して設立した。さとうきびの搾りかす「バガス」や製糖過程で発生する副産物「糖蜜」などを活用し、サスティナブル素材のR&Dや製造・販売を行う。バガス由来の繊維や糖蜜を使ったバイオインディゴ染料、バガスの炭化による土壌改良剤などへの活用を進める。京都工芸繊維大学とバガスを使った再生繊維の研究開発でポリエステルの代替を目指すほか、京都芸術大学と3Dボディスキャナーを活用したジーンズなどの衣類のオーダーメイド技術開発に取り組む。サトウキビ以外の植物残さ(パイナップル葉、籾殻、茶殻、麦芽など)の活用で廃棄物削減の取り組みを進める。
Image : CurelaboHP

3. 工場排水・廃液から低濃度パラジウム、貴金属を徹底回収

ディーピーエス
登壇者:代表取締役 白鴻志氏
所在地 京都市西京区御陵大原1-39 京大桂ベンチャープラザ南館2215
創設年 2017年
URL https://www.dps-inc.co.jp/
 ディーピーエスが開発した「DualPore(デュアルポア)」は「貫通孔+細孔」の2段階の孔で目的物質の吸着・分離・回収といった流体力学的性能を高めるという、特殊な立体構造の新素材で、吸着剤やクロマト担体、固定化触媒へ活用できる。現在、この吸着剤を用いて自動車製造の触媒や電機・電子製品、歯科治療など、多様な用途に使われるパラジウムのリサイクル事業に取り組んでいる。使用方法は、DualPore吸着剤を従来の回収装置の下流に設置するだけという非常にシンプルである上、「大量高速処理や濃縮」「リサイクルやコスト削減」「優れた環境規制対応」を実現できるとしている。パラジウム以外の貴金属やレアメタルにも対応でき、有害物質の回収にも応用できる。
Image : ディーピーエス HP

4. 微風から暴風まで高効率に発電する迎角&翼径制御の小型垂直軸風車

WINDシミュレーション
登壇者:代表取締役 中田秀輝氏
所在地 京都府相楽郡精華町光台8-15-24
創設年 2019年
URL- (参考)https://www.pref.kyoto.jp/sangyo-sien/company/winds.html
 世界では再生可能エネルギーの約50%を占める風力も、日本では数%の利用に留まっている。課題は暴風への対応や発電コストの低減、静音化、太陽光とのハイブリッド化が挙げられており、WINDシミュレーションは、それらを解決する迎角制御と翼径制御を兼ね備えた小型の垂直軸風車を開発している(特許出願中)。従来品と比べて、暴風対策を踏まえた発電が可能であり、発電効率は約10%、発電量は約30%アップし、騒音レベルも低く、海外で普及している洋上大型風車のファーリング用非常用電源としての活用も可能という。現在は理論構築から流体解析での検証が完了しており、プロトタイプ開発を目指す。将来的には「スマート街路灯(暴風対応街路樹の電源)」「家庭用・スマートシティ用」「洋上用非常用電源(ファーリング用)」「家庭用ハイブリッド電源」の展開を視野に入れている。
Image : fokke baarssen / Shutterstock

5.独立型交流電池から廃プラ解重合、灰リサイクル事業で展開幅広く

AC Biode
登壇者:代表取締役社長 久保直嗣氏
所在地 京都市左京区岩倉花園町498-6
創設年 2019年
URL https://www.acbiode.com/
 AC Biodeは、独立型交流電池・回路の開発をはじめ、工業用灰をアップサイクルし、プラスチック廃棄物を分解する化学触媒の開発や灰リサイクル事業などを展開する。灰リサイクル事業では、石炭灰やバイオマス灰、下水汚泥灰から、吸着材や抗菌材などに活用される多機能化学品「CircuLite(サーキュライト)」にリサイクルする技術を持っている。同品は日本や中国、香港、台湾での販売実績もあり、フィルターや衛生用品、土壌改質、水質改善などへの応用が期待される。活性炭やゼオライトと同様の用途を持ち、イオン交換機能もあるため、汚染物質を物理的のみならず化学的にも吸着させる。また、下水汚泥のリサイクル率の向上や処理コスト削減、温室効果ガスの最大60%削減など、多くのメリットも挙げられている。
Image : AC BiodeHP

6. ワイヤレスケミカルセンサシステムの工業排水管理への応用

monotone technology
登壇者:代表取締役CEO 小島淳二氏
所在地 京都府相楽郡精華町光台1-7 けいはんなプラザラボ棟5階
創設年 2016年
URL https://www.monotonetech.com/
 monotone technologyは、センサ技術(特に電気化学センサ・光関連センサ)を応用した製品の開発・受注開発を展開する。これまで大型で持ち運びできなかった分析計をコンパクトなワイヤレスセンサとすることに成功し、リアルタイム計測が可能となった。スマホとワイヤレスセンサでpHなど水質測定・水質管理などに活用できる「pHAI(ファイ)」シリーズとして製品化している。同品は、医療現場での人工透析機洗浄液の排水のpH管理など、採用実績もある。今後は水質管理測定分野を強化し、工場排水や河川等の水質管理など工業分野へ拡大した展開を目指すほか、農業、水産、アクアリウム(レンタル水槽)等の分野からのアプローチも増えている。さらに、BOD測定をセンサ化し、リアルタイム測定可能にする仕組みについても検討している。
Image : monotone technology HP

7. 鉄触媒を用いて林業廃棄物を再資源化

TSK
登壇者:取締役 松浦良介氏
所在地 京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2 ATR内
創設年 2021年
URL https://tsk.kyoto/
 TSKは、有機電子材料や全個体電池材料の開発を主軸としているが、新規事業として「鉄触媒で林業廃棄物からのフルボ酸鉄の生成、再資源化」に取り組む。フルボ酸とは、森林や土壌に微量に存在する有機酸であり、植物に鉄などのミネラルを補給する貴重な資源。そこで、森林大国である日本で有効活用されていない間伐時の林業廃棄物を活用し、短期間(目標1週間)で効率的なフルボ酸鉄の生成をすべく、京都大学と研究を進めている。すでにフルボ酸とみられる物質の生成を確認できており、現在は分析と生成の最適化中という。フルボ酸鉄は発根促進効果や、植物への鉄の吸収促進などの効果もあるため、林業のみならず農業や漁業への好影響も期待できるという。
Image : TSK HP

8. 蓄電池などの開発に強み 次なる挑戦はEV中古電池の二次利用

CONNEXX SYSTEMS
登壇者:代表取締役 塚本壽氏
所在地 京都府相楽郡精華町精華台7-5-1 けいはんなオープンイノベーションセンター
創設年 2011年
URL https://www.connexxsys.com/
 CONNEXX SYSTEMSは、次世代型蓄電システムの開発・製造・販売・企画・設計などを展開している。これまでに非常用小型蓄電システムや産業用蓄電システム、家庭用蓄電システムなどを製品化してきた。現在、注力しているのが、1000V以上の高電圧大型電池の開発だ。EVの普及により、使用済み車載電池の処理が世界的な課題となっている。同社では、こうしたEVの中古電池を活用し、遠隔制御・監視システムと、安全・高信頼・安価な急速充電池の実現を目指す。中国では既に中古電池の二次利用が始まっているが、現在市場に出ている中古電池は高品質とはいえない状況だという。今後、開発を進めつつ、サービス技術や収益を十分に検討しながらの順次展開や、まずは新品の電池での商品化など、フレキシブルな対応も検討している。
Image : CONNEXX SYSTEMS HP

9. サブスク展開を目指すファブレスでのEVトラック開発・販売

フォロフライ
登壇者:COO 中尾源氏
所在地 京都市左京区吉田本町36-1 京都大学国際科学イノベーション棟
創設年 2021年
URL https://folofly.com/
 フォロフライは、ファブレス生産によるEV販売〜安全品質管理、EVの設計変更による仕向地対応(企画・素材開発)などを行う。中国の生産拠点では1トンクラスのEVトラック開発・販売が進んでおり、国内市場において「普通運転免許で運転できるサイズ」「航続可能距離300キロメートルのEVながらガソリン車同等の価格(現時点で380万円)」といった優位性があるという。物流会社のSBSホールディングスから既に1万台の受注実績もある。2022年夏には新型トラック販売、23年から量産出荷・多品種展開をスタートさせる計画だ。フリートマネジメントを行い、充電器や電気代、メンテナンス料、保険、環境対応型社会インフラなどをパッケージ化したサブスクリプションでのサービス提供を予定している。
Image : フォロフライ

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