子どもが自分で遊びコードを書く
―既に世界中で使われている「CodeCombat」ですが、2019年に教育機関を対象としたコンピューターサイエンスプログラム「Ozaria」をリリースされましたね。
はい。「Ozaria」は、プログラミングの知識がない先生が教えることを前提にした、コンピューターサイエンスプログラムで、学校や塾などの教育機関を対象としています。生徒および教育関係者から得た「CodeCombat」へのフィードバックをもとに、従来の学習ゲームに改善を加え、新たに先生用にレッスン計画、生徒の進捗確認やルーブリック設定(学習を評価する際の基準)機能などを設けました。
―教える側はプログラミングの知識が不要ということですね。
誰もがコンピューターサイエンスを学びたいと思っているものの、プログラミングのバックグラウンドを有する学校教員や塾講師の数が足りず、需要に供給が追いついていない状況があります。
また、従来のプログラミング学習プログラムでは、導入のために専任者を設け、高額なトレーニングを受ける必要がありました。しかし、専任者の育成に高額を投じても、トレーニングを受けた先生はプログラミングの知識を得たことで、より良い条件の職に転職してしまうケースが多々あり、問題がありました。
「Ozaria」は、英語の先生でも数学の先生でも対応できるコンピューターサイエンスプログラムで、先生が特別なトレーニングを受ける必要はありません。
―他の子ども向けプログラミング学習ソフトなどとの違いを教えてください。
プログラミングを「教科書を利用して学ぶこと」から脱却しようと目指している企業は少なく、子ども向けのプログラミング学習ソフトには、ドラッグ・アンド・ドロップで学習するものが主流です。また、専門知識が深い先生が教えているプログラミングコースもあります。しかし、これらの多くは、小規模クラスが対象で、コードは学べず、またはコードを学ぶとなると内容が難しくなり、授業を行うために複数の講師が必要でレッスン料が高くなります。
「Ozaria」は、まずゲームに学習が伴っているスタイルで、「CodeCombat」として500万以上のユーザーがいる実績から、子どもの興味を惹きつけるものだと言えます。次に、低学年の児童から使え、テキストベースでコードを書けるようになります。そして既存の先生に負担をかけることなく、先生1人で30人規模のクラスに導入できる学習プログラムがあります。最後に、パソコンでWebにアクセスできる環境があれば、自宅など学校以外の環境でも生徒は自分1人で学習を進められる点が他とは違います。50以上の言語に翻訳され、190カ国以上で使われている
―中国の四大ポータルサイトNetEastと2018年に事業提携されました。その経緯を教えてください。
当社はもともと、エンジニアばかりの小さいチームで、R&Dに最も注力してきました。プロダクトが良いものと認識されると、オープンソースだったことで、コミュニティにより翻訳が行われ、学習ゲームとして質が高くなるにつれて、口コミで世界中に広まりユーザーが増えました。
それでも、当社はメインマーケットである米国にフォーカスしていたのですが、中国からの需要が無視できない規模になり、市場参入を検討するようになったのです。私が中国語を少し使えるため、事業提携先と中国国内のチームを見つけることができ、話がまとまりました。2018年の時点で中国国内だけで約50万ユーザーが「CodeCombat」に登録しています。
―中国以外、例えば日本企業との事業提携も可能性がありますか?
米国内の市場でもまだ拡張できる余地があり、海外市場に積極的に進出する意向はありませんが、様々な国で需要があることは把握していますし、それに応えて行きたいという気持ちはあります。
「CodeCombat」および「Ozaria」は、スマートフォンではなく、パソコンを使ったコード学習に興味がある子どもがいて、塾や習い事としてプログラミング学習サービスを提供している企業や私立の学校、プログラミング学習を学校教育に導入しようとしている行政など、適した提携先があれば日本だけでなくどの国でも進出を検討します。
「CodeCombat」は実はかなりの数の大人のユーザもいますので、今後は大人向けのサービスの開発にも力を入れていきたいと考えています。