Captain Freshは、水産物の需要と供給のギャップを埋めるため、漁業者と小売業者をつなぐB2Bマーケットプレイスを運営するインド発のスタートアップだ。2022年3月には、シリーズCでTiger GlobalやProsus Venturesなどから5750万ドルを調達した。AIをはじめ最先端のテクノロジーを活用して、食品流通のムダをなくしたいというCaptain Fresh創業者でCEOのUtham Gowda氏に事業の概要について聞いた。

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インド全土から「1日10万キログラム」の魚介類の流通を支える

 人口13.8億人(2020年現在)のインドの小売市場は成長を続けている。その一方、小売業者は個人経営が多くて組織化されておらず、流通構造の煩雑さや非効率性は大きな課題の一つとなっている。Gowda氏は投資銀行や水産物輸出会社での勤務経験を生かし、2019年にCaptain Freshをバンガロールで創業した。

――ご自身の経歴と創業の経緯を教えてください。

 私は以前はKriscore Financial Advisorsで働くインベストメントバンカーでした。そこで大手輸出業者の担当を任されたこともあります。その後、私はインド最大の水産物輸出会社Nekkanti Sea Foodsへ幹部職として入社し、肉や海産物を扱うスタートアップへの投資経験を積みました。私がCaptain Freshを創業したのは、こうした投資銀行家と水産物業界で築いた経験というバックグラウンドがあったからです。

Utham Gowda
Captain Fresh
Founder & CEO
カルナータカ国立工科大学で電子工学を学んだ後、インドのビジネススクールでMBA取得。2012-2014年、Tata Strategic Management Groupでコンサルタントを務める。2014-2016年にKriscore Financial Advisorsにおいて、金融サービス、セメント、エンジニアリングサービス、自動車部品など、さまざまなセクターのM&Aを手がける。o3 Capital、Nekkanti Sea Foods Ltd. で副社長を務めた後、2019年、インドにおけるシーフードのB2BマーケットプレイスCapatain Freshを創業する。

――御社のマーケットプレイスの特徴は何ですか。

 私たちは動物性タンパク質食材を扱うB2Bのプラットフォームです。最初のタンパク質食材として、シーフードから始めました。生産者と全国の小売店とをつなげ、注文・仕入れから配送までを支えるビジネスモデルを構築しました。

 現在、全国で2000〜2500件の小売店などと取引があり、1日に10万キログラム近い海産物の取引があります。当初は活魚に重点を置いていましたが、いまは冷凍、乾燥、調理済み食品、加工品も扱っています。

 当社のビジネスモデルのユニークな点は、最先端のテクノロジーを導入しているところです。仕入れから生産管理、品質チェック、集配、カスタマーサービス構築といった、サプライチェーン全体にわたってテクノロジーを活用しています。

――どのようなテクノロジーを活用していますか。

 例えば、私たちのプラットフォームには、漁業者のためのInstagramやFacebookのような機能があります。これは漁場となりうる場所や、天候に関する注意事項など、日々の漁に役立つようなコンテンツを多く載せているものです。

 私たちは国内のあらゆる小売業者、水産業のバイヤーとつながっているので、需要を予測することができます。つまり、最新の在庫を把握できるので、適正な市場価格につなげ、ムダのない海産物の流通が可能となります。

 このほか魚の品質を評価する技術、配送車両を管理する技術、働く人の生産性を向上させる技術など、さまざまな機能を揃えています。

Image:Santhosh Varghese / Shutterstock

販売、配送、コスト管理などサプライヤーのニーズを捉え、急成長

――どういう顧客が御社のプラットフォームを利用しているのですか。

 私たちのプラットフォームは消費者側ではなく、供給者側のためのものです。つまり漁師と小売業者が利用しています。小売業者向けには、販売の自動管理や配送、購入、廃棄物管理、コスト管理などができるオペレーティングシステムも用意しています。

――プラットフォームを通じてどのように収益を得ているのですか。

 私たちの業態は在庫を生かすビジネスですので、予測モデルを活かして、小売業者はストックのあるところから仕入れ、必要とするところへ販売します。トランザクションが発生するたびにマージンを受け取るような仕組みです。

――これまでの業績はいかがでしたか。今後の目標はありますか。

 2021年12月期の売上高は前年比7倍に成長することができました。これも私たちのテクノロジーが供給者のコミュニティに深く、かつ広く入り込んでいるおかげでしょう。

 2022年もこの勢いを維持し、300〜400%成長することが目標です。そのために北米とヨーロッパ、日本へ進出したいと考えています。

――日本への進出に向けて、どのようなパートナーシップが必要ですか。

 今はどの日本企業とも提携していません。ですので、時間をかけて組織的な関係を構築できるようなパートナーを求めています。日本では、私たちの商品を販売するディストリビューターがあるといいですね。調達資金は先進国市場に進出するための投資に当てていくつもりです。

 例えば、現地の流通企業を買収することも考えたいですね。もし日本で良い企業を買収できれば、供給者と小売業者を結びつけて流通を進化させることも期待できるでしょう。

食料の持続可能性を支えるグローバルプラットフォームを目指す

――最後に、これから目指したいイノベーションと長期ビジョンについて教えてください。

 次のイノベーションは施設や工場同士をクラウドでつなぐことです。各工場を横断するシステムを導入できれば、ワークフローをデジタル化し、エンド・ツー・エンドのトレーサビリティ管理が可能となるからです。

 そうすれば私たちはもっと巨大で幅広い動物性タンパク質の市場とつながることができます。しかも常に最新の状態で市場情報が更新できます。

 私たちの目標は世界で最もスケーラブルで、多品種の食品を供給できるプラットフォームになることです。これはアメリカでもヨーロッパでも、世界中の誰にとっても魅力的な存在となるでしょう。

 Captain Freshは世界制覇のプラットフォームを構築し、食料安全保障と持続可能性において貢献できるよう努めていきます。

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