仮想通貨の分散型金融(DeFi)取引をよりスムーズにするブロックチェーン・ディストリビューション・ネットワーク (BDN)を開発するbloXroute Labs。米シカゴ近郊に本社を構える同社は、プロのDeFiトレーダーたちにとって必須である、トランザクション(取引)の“速さ”を担保するネットワーク・インフラストラクチャの開発者だ。世界中のトレーダーたちのインフラを提供する同社は投資家の注目も集めており、2022年には、SoftBank Vision Fund2が主導した資金調達ラウンドBにおいて、7000万ドル(約103億円)を獲得した実績もある。1日に平均約15億ドルの取引を支えるbloXroute Labs社の共同創業者であり、CEOのUri Klarman氏に話を聞いた。

DeFiトレーダーにとって必要なインフラを提供する

――御社はどんなサービスを展開しているのですか。

 DeFiトレーダーの取引をよりスムーズにするネットワーク・インフラストラクチャの開発・運営をしています。DeFiとは、銀行や証券会社などの中央管理者がいない金融システムであり、ユーザー同士で取引する仕組みのことを指します。

 ユーザー間の取引はすべてブロックチェーン上に記録されるため、透明性が非常に高いのが特徴です。また、銀行などの仲介者が存在しないことから、手数料を大幅に抑えることができ、取引にも時間がかかりません。ユーザー間の取引ということは、ウォレットさえ持っていれば、ニューヨークや日本、香港と、世界中の人々と直接取引ができることも意味します。

 DeFi市場の盛り上がりは2020年から本格化しました。2019年に年間の取引額が約1億ドル程度であったのに対し、2021年には、1兆ドルにまで拡大しています。

Uri Klarman
bloXroute Labs
Co-Founder & CEO
イスラエル出身。米イリノイ州Northwestern Universityで、Computer Scienceの博士号を取得。在学中は、主に仮想通貨のネットワーク・インフラストラクチャについて研究していた。その経験を活かし、2017年、現COOのEyal Markovich氏らとともにbloXroute Labsを創業。

 世界中の人たちと取引するためには、情報伝達の“速さ”が求められます。我々のインフラはイーサリアム、BNBチェーン、ポリゴンに対応していますが、こうした仮想通貨のトレーダーたちにとってネットワークの“速度”は非常に重要な要素です。

 なぜなら、DeFiでは、仮想通貨の価格やポジション、精算など、トレーダーにとって重要な情報がコンスタントに変化するからです。伝統的なトレードでは、取引に時間がかかるので、主要な市場を見ておけばよかったのですが、DeFiでは「0.16秒」という時間で価格が大きく変わってしまうのです。ですから、ネットワークの問題で情報の取得が遅くなってしまうと、大損することも珍しくないのです。

 bloXroute Labsが提供するネットワーク・インフラストラクチャを使用することで、平均150ミリ秒以下という速さで取引情報を送信できます。これは、「光速」とまでは表現できませんが、非常に速く、トレーダーの情報伝達の時間的ロスによる損失リスクを低減することが可能なのです。

 今日では、bloXrouteが提供するサービスを使わずして、競争力の高いトレーダーになることは事実上不可能だと言えます。当社のサービスを使っていないトレーダーを例えると、90年代のモデムで勝負しようとしているようなものです。“速さ”がモノを言うDeFiの世界で、bloXrouteを使わない手はありません。

――どんな企業が御社のサービスを使っているのでしょう。

 具体的な企業名を挙げることはできませんが、何十億ドルもの規模の取引実績がある伝統的な投資会社や、クリプト・ネイティブの有名投資会社、仮想通貨の取引情報をまとめたいリサーチ会社など、多くの金融のプロに使用されています。

 我々は、1日約15億ドル規模の取引を支えている実績を有しています。当社のメイン顧客は、個人トレーダーというより、有名な投資会社がほとんどです。創業から約4年間(2021年)で、ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)700万ドルを計上しました。顧客数は約300社と、ビジネスは順調です。

Image:bloXroute Labs

SVFから資金調達 長期的な視点で資金活用する

――御社は2022年4月にシリーズBラウンドで、7000万ドルを調達しました。資金の使い道を教えてください。

 2020年末の当社は、16人体制で、そのすべてが開発者でした。セールスやマーケティング、カスタマーサクセスを担当する人材がいなかったのです。それが、2021年12月時点で42人まで人員を拡大し、セールスやマーケティング、カスタマーサクセスのチームを立ち上げました。

 2022年4月のSoftBank Vision Fund2が主導した資金調達ラウンドは、当社にとって、とてもポジティブなものでした。なぜなら、彼らはDeFiの可能性を信じた上で、我々に投資しているからです。彼らとは、ともに未来を創造していくという点で目的が一致しています。調達した資金は、今後のさらなる人員拡大と、サービス向上のために使っていきます。

 また、現時点で7000万ドルという資金を調達できたことも大きいです。というのも、2020年初頭には、仮想通貨市場全体が落ち込み気味になり、当社も少なからずその影響を受けたからです。

 DeFiを含む、仮想通貨の世界は新興市場のため、今後もアップダウンが予想されますが、bloXroute Labsは資金調達により、長期的な経営が可能になりました。投資家も我々が挑んでいる市場の拡大を信じていますし、当社も短期的な視点ではなく、中・長期を見据えたサービスの運営を行えるようになったことが、シリーズBの資金調達の功績です。

Image:bloXroute Labs

考えられる日本企業との提携は2パターン

――日本市場への進出の可能性はありますか?

 私たちのサービスは主にアメリカ、ヨーロッパ諸国で使われていますが、アジア太平洋地域が重要な市場であることに変わりはありません。その中でも、日本市場進出の優先順位はとても高いです。

――日本市場に参入するとしたら、どのようなパートナーシップがベストだと考えていますか。

 大別すると、2つになるかと思います。1つ目は、トレーディングを行う事業者とのパートナーシップです。私たちは、投資家に対するサービス提供者なので、bloXroute Labsを使うと、取引情報を高速で通信できますよ、などとピッチをすることが可能になると思います。

 現に、私のテレグラムでは、5社の何十億ドル規模の取引をしている投資会社と現在、サービスについての話をしています。彼らと共に、サービスの精度を磨き上げることができるのも、私たちの強みです。日本においても、金融事業者と協働しながら、当社のサービスの性能の良さを感じてほしいですね。

 2つ目は、日本のクリプト・コミュニティを構築している、メディアやPR会社との協働です。というのも、私は日本のクリプト・コミュニティが何を大事にしているのか、彼らのペインポイントは何かなど、基本的な情報がまだつかめていないからです。

 日本のメディアやPR会社との協働により、まず私たちのサービスを、日本のユーザーたちに知ってもらうことが大切だと考えています。

 また、日本の読者の皆さま、特にトレーディング事業者にお伝えしたいのは、bloXroute Labsのサービスは、トレーダーとともに磨き上げられている、という事実です。例えば、イーサリアムの大手マイナーたちの約95%が私たちと取引をしています。彼らとサービスのフィードバックを繰り返しながら、トレーダー好みのサービスをつくっていくことが可能なのです。

 DeFiは、とても面白い金融市場です。伝統的な金融取引にように、週末や祝日に市場が閉じていませんし、どんなプレイヤーに対しても開かれている、新しい市場です。

 ですが、DeFi市場で「勝つ」ためには、速いネットワーク・インフラストラクチャを使うことが必須です。私たちは、そのインフラを提供しています。日本進出を果たすことで、同国のDeFi市場の拡大に貢献していきたいです。

――最後に、御社が掲げる長期的な目標について教えてください。

 抽象的な表現を用いると、「ブロックチェーンに関するサービスの、ユーザー体験を向上させること」です。ブロックチェーンに関するサービスには、当社のサービスの対象であるDeFiはもちろん、web3.0やメタバースなども含まれます。ブロックチェーンの現在の課題は、取引が完了するまでに、マイナーやバリデータの検証を受けるまでに時間がかかってしまうことにあります。

 bloXroute Labsのネットワーク・インフラストラクチャは、その時間を大幅に削減します。そのことで、DeFiトレーダーたちのユーザー体験を向上させているのです。当社のサービスを使用しないと、トレーダーは「負けてしまう」という単純明快な理由から、ユーザー体験は良くなったと言えるでしょう。

 ブロックチェーンの技術をどんな分野に応用するとしても、ユーザー間のコミュニケーションコストを削減するインフラストラクチャの構築は不可欠です。bloXroute Labsは、ブロックチェーンの仕組みを使ったサービスを、より良いものにするネットワーク・インフラストラクチャでありたいと思っています。



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