Y CombinatorでCOOも務めたシリアルアントレプレナーが起業
――まずはApplied Intuition設立に至った経緯を教えてもらえますか?
私は自動車業界でメカニカルエンジニアとしてキャリアをスタートしました。そして、ゼネラルモーターズとボッシュの両方でエンジニアとして働き、日本にも赴任したことがあるんですよ。
その後、ハーバード大学でMBAを取得し、複数社を起業しました。そのうちの1社がGoogleに買収され、Google Mapsを担当しました。この時に、マッピングに関する知識を学び、自動運転分野のエコシステムに触れました。当社の共同創業者Peter Ludwigと私は一緒に地図を作った、その頃からの仲です。
こうした中、2016年にPeterと私は考えました。自動運転の領域で面白いビジネスはないかと。その結果、自動運転の実証実験、つまり自動運転システムの開発に特化して起業しようと考え、Applied Intuitionを立ち上げたのです。
自動車だけでなく、自動運転システムの開発で使う定番ツールに
――具体的にどういった製品を提供しているのでしょうか?
当社は、自動運転製品を開発しているエンジニア向けのシミュレーションツールを提供しています。
自走や自動運転と聞くと、シリコンバレーで自動運転車を開発しているスタートアップをイメージする方が多いかもしれませんが、従来の自動車メーカーも自動運転システムの開発に取り組んでいます。自動車メーカーはレベル4だけでなく、レベル2の自動運転にも取り組んでおり、われられはその開発を幅広く支援しています。
Image: Applied Intuition 実際に道路を走らなくても、自動運転シミュレーションが可能
また、ここ数年で事業用トラックや貨物輸送、建設や鉱業、農業、物流倉庫内のロボットなどロボティクスなど様々な分野と、防衛分野にも進出しています。そして、例えば、エンジニアが使う図面作成ツールの定番AutoCADのように、自動運転システムを開発しているエンジニアが使うツールとを提供しているのです。
――特徴は何でしょうか。
当社の特徴は自動運転の開発のためだけに作られている点です。自動運転を開発するのに必要な多くの機能を備えています。シミュレーションを行う企業、開発ツールを提供する企業は他にもありますが、自動運転に特化し、ここまで多くの機能を実現した企業は他にないと自負しています。
当社のサービスは大手自動車メーカーに多く導入されています。トヨタ自動車のグループ会社で、同社の自動運転関連ソフトウェアの開発を行うウーブン・プラネット・グループ(Woven Planet Group)にも、自動運転ソフトウェアの検証用シミュレーション環境を提供しています。
創業3年でユニコーンに。東京オフィスも開設
――2020年夏には大型の資金調達をしましたね。
去年の秋に1億2500万ドルの資金調達を行いました。時価総額は12億5000万ドルとなりました。
――ユニコーン(時価総額10億ドル超)になったんですね。
そうですね。調達した資金を活用し、プロダクトへの投資とグローバル展開を加速させていきます。本社があるシリコンバレー以外に国内ではデトロイトとロサンゼルスに、グローバルでは東京、ソウル、ミュンヘンにオフィスを持っています。
――日本展開はどんな状況でしょうか。
日本市場への進出も非常に順調に進んでいます。2019年に東京にオフィスを開設しました。
日本には自動車メーカーを始め、トラック、建設重機や、倉庫からの輸送などロジスティクス、倉庫用ロボットなどのロボティクスなど、強みを持っている産業分野が多くありますし、自動化が進んでいます。
Image: Applied Intuition 倉庫用のロボティクスの自動運転シミュレーション
今後まずは、自動車産業のエコシステムでメインプレイヤーになりたいと考えています。そして、最終的な目標は自動運転システム開発を行う全ての産業分野で、当社のプラットフォームを提供することです。