目次
・コツコツ貯金はもう限界
・入口は「マイルの代わりにビットコイン」
・利用者は働き盛りの世代
・「投機」ではなく「貯蓄」を目的に
・米国での急成長、日本進出は2026年
コツコツ貯金はもう限界
―フォールドが解決しようとしている課題は何ですか。
現代社会では、長期的な貯蓄の手段が失われつつあります。多くの人は緊急時に備える余裕さえありません。アメリカでは40%以上の家庭が「400ドルの急な出費に対応できない」と言われています。かつての世代が利用できた金融ツール、つまり、高金利の定期預金や成長を続ける住宅市場といった類のものは、もはや機能していません。「コツコツ政府紙幣を貯金し、リタイアに備える」という資産運用に限界が来ています。
そこで私たちはビットコインを使って「いかにして長期的な資産を守り、築けるか」という問題に挑んでいます。ビットコインは過去10年間で最もパフォーマンスの高い資産であり、国家の介入を受けにくい中立的な性質を持っています。当社はこれを日常生活に組み込み、自然に資産を積み上げられる仕組みを作りました。
フォールドの特徴は、ただビットコインを購入するだけでなく、日常の消費活動から自動的にビットコインを得られることです。クレジットカードやデビットカードで買い物をする、公共料金を払う。そうした行動のたびにビットコインが貯まっていく。結果としてユーザーの貯蓄率は一般の人より高く、将来への安心感も増しています。
入口は「マイルの代わりにビットコイン」
―利用者はどのようにフォールドを使い始めるのですか。
多くの人が最初に使うのはカード決済によるビットコイン還元です。航空マイルやポイントの代わりにビットコインが貯まる。最初はそこから始まり、やがてパフォーマンスの良さを実感すると、給与の一部をビットコインで受け取ったり、サービスの対価をビットコインで受け取ったりするようになります。
プラットフォームにはドルとビットコインを同時に保有でき、自由に比率を調整できます。初心者はまず「報酬としてのビットコイン」から入り、経験を積むごとに資産の比率を変えていきます。ユーザーの中には給料全額をフォールドに預け、ビットコインへ変換している人もいるほどです。アカウント数そのものも、前年比で3倍以上増えるなど、注目度は年々高まっています。
また、小売店とも提携していて、当社が発行したビットコインのギフトカードが米国の主要な小売店で販売されています。

利用者は働き盛りの世代
―主な顧客層について教えてください。
中心となるのは35〜55歳の現役世代です。彼らはキャリアのピークにあり、可処分所得が高く、純資産の相当部分をビットコインで保有しています。銀行や証券口座を持ちながらも、従来の資産運用では十分に将来を見通せないと感じている。だからこそ、フォールドのような新しい選択肢に惹かれるのです。
面白いのは、彼らの行動が「家族単位」でフォールドを利用することにつながっている点です。子どもの教育資金や住宅ローンの返済を考える中で、ビットコインを資産防衛の手段として取り入れる。フォールドは銀行に比べ90%低いコストでサービスを提供しているため、効率的に資産形成ができるという点も支持されています。

image : Fold
「投機」ではなく「貯蓄」を目的に
―Coinbaseなどの大手取引所と比べたときの違いは?
多くの競合は高速取引や新しい仮想通貨の売買といった「投機」にフォーカスしています。フォールドは最初から一貫して「貯蓄のための金融ツール」を志向してきました。そのため、扱うのもビットコインに限定しています。未検証のアルトコインに依存せず、リスクを抑えて長期的な資産形成をサポートしているのです。
実際に当社の顧客は、給与の直接入金や請求、日常の決済までフォールドを通じて行い、生活の基盤にしています。これは「サイドビジネス的な投機」のためのプラットフォームとは明確に異なります。
さらに、フォールドは2023年にナスダックへ上場しました。これは「ビットコインを長期貯蓄に使う」というモデルを公開市場に示した象徴的な出来事です。暗号資産を単なる投機対象でなく、日常生活に役立つ金融インフラとして認めてもらいという思いがずっとありましたので。
―フォールドを立ち上げたきっかけを教えてください。
私は2011年の「Occupy Wall Street」運動に参加し、金融機関による決済の検閲を経験しました。その代替として使われたのがビットコインでした。さらに地元カリフォルニアのワイン産地では、中南米出身の労働者が高額な送金手数料を避けるためにビットコインで家族に仕送りをしていました。
アルゼンチン滞在中には、ハイパーインフレの中でビットコインに資産を避難させる友人たちを目の当たりにしました。私自身も2008年のリーマンショックの渦中で大学を卒業し、伝統的金融システムの脆さを痛感しました。
こうした体験から「ビットコインは自分や家族、友人を守る力になる」と確信し、Foldを立ち上げました。最初は「ビットコインでスターバックスのコーヒーを買う」仕組みを試しましたが、決済スピードや税制面の不便さで普及しませんでした。そこで気づいたのが「マイルやポイントの代わりにビットコインを配布する」という発想です。そこから現在のビジネスモデルが生まれ、利用者層が一気に拡大しました。

image : Fold
米国での急成長、日本進出は2026年
―現在の成長状況について教えてください。
フォールドはすでに60万以上のアカウントを持ち、前年比で300%以上の成長スピードを示しています。累計ビットコイン還元額は7,500万ドルを超え、利用者数も拡大し続けています。さらに最近では「ビットコイン・ギフトカード」を主要小売店で販売開始しました。アメリカではコストコが月に2億ドル相当の金を売っていますが、実はビットコイン保有者は金保有者を上回っています。ギフトカードは、そうした潜在的需要を一気に顕在化させる武器になるでしょう。
―日本市場についての展望は。
2026年に日本市場に参入したいと考えています。日本はフィンテックやポイントサービスが広く受け入れられており、ビットコインへの関心も高い。特に上場企業メタプラネットがビットコイン財務戦略を打ち出したことで、数万人規模の熱心な支持層が生まれています。これは大きな追い風です。
また、日本の金利政策は世界経済に大きな影響を与えます。不安定な局面では「政府に左右されない安全資産」としてビットコインが注目されるでしょう。日本進出にあたっては、銀行やカード発行を担う金融機関、大手小売業との協業が鍵となります。資本提携から合弁まで、最適な形を模索したいです。
多くの人はまだビットコインを「投機的で不安定」と見ています。しかし世界中で政治や経済の混乱が続く中、むしろビットコインは政府の干渉を受けない中立的な資産として評価されています。フォールドはその価値を、誰もが日常的に享受できる形にしたいのです。